死者によって生者は守られ救われるが、同時に正者が死者を救うのである。最近ぼくは、ぼくのなかでこちらとあちらの世界の区別が曖昧になりつつある。ときどきぼくはあちらの世界からこちらを見ているような気がすることがあるのだ。まるで自分が死者であるかのようにである。
(p.169)


横尾忠則著「死の向こうへ」


ただひたすらに生と死を見つめるエッセイ集。
中でも今は亡き三島由紀夫先生のエピソードが胸に残りました。


死の恐怖を乗り越えようともがく横尾先生。死の向こうを常に思い描く横尾先生。


私は彼の作品も大好きで、画集も持っているのですが、本を読んだ後に絵を見るとまた違った角度から感じるものがあり、芸術とはなんて贅沢で切なくて美しいものなんだろうと思いました。


私が生きながら常に考えていることは、人間はみな不完全だからこそ、完璧を目指しながら精進していきたい、いくべきだということです。


解脱は遠い…