<現地報告>若い北朝鮮女性の不法越境増える 中国でスマホ使い自力で職探し家族に送金
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延吉市内の掲示板に貼られた独居老人介助の募集案内。左は「家族は81歳のおじいさん一人。70歳以下のまじめで清潔な人求む」、右は「腰の悪いおばあさん一人。65歳以下のまじめな人求む」とある。2017年10月撮影石丸次郎
吉林省の延辺朝鮮族自治州で北朝鮮から不法越境してきた3人の女性に会った。25歳のジンと名乗った女性は黒ジーンズに白ブラウスの着こなしで、街中では中国人と見分けがつかないだろう。越境して来て1年、住み込みで家政婦をして1カ月3000元(5万円強)を稼ぐ。
北京や上海などに住む朝鮮族からも掲示板に募集があり、給与は延辺地区の2倍以上になるという。すでに相当数の不法越境の北朝鮮の人が中国でひっそりと働いているようだ。
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(参考写真)商売の不調で中国に越境する女性が増えた。写真は路上で商売をする女性。2012年8月に両江道恵山市にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)
60代後半の女性は延辺に来て7年。やはり住み込みで高齢者の介護をしている。月給は同じく3000元。「息子、娘たちに会いたいけれど帰って来るなと言うんですよ。私からの送金を当てにして暮らしていますからね。それに中国暮らしがこう長くなると、処罰が恐ろしくて北朝鮮には帰れません」
北朝鮮から越境してきた女性同士で、たまの休日に公園に食べ物を持ち寄って歌や踊りを楽しむのが慰めだと言う。仲間の中には逮捕されて北朝鮮に強制送還されたり、韓国に行った人がいると言う。
国境警備が厳重になり、この5~6年、越境・脱北して来る人は激減している。よく無事にここまで辿りつけたものですねと、同様に家政婦をしていた30代の女性に訊くと、「お金を出せば道は開けるもんです」と事もなげに言う。北朝鮮から延辺まで連れて来てくれるブローカーがいるそうだ。料金は前金で、親戚からかき集めて支払ったという。
彼女たちを不法越境者だと知りながら雇っているのは朝鮮族(中国籍の朝鮮人)だ。延辺地区では朝鮮族の若者が韓国や日本、中国内の大都市に大量に流出してしまい、朝鮮語話者の労働力不足が深刻だ。老人世帯や赤ちゃんがいる家で、言葉が通じ習慣が近い北朝鮮の女性が重宝されるようになった。飢餓難民でも政治亡命でもない、新しいタイプの越境者が出現しているのだ。
彼女たちに、核やミサイル、金正恩氏についてどう思うか尋ねてみたが、初対面の外国人を警戒してか答えは曖昧だ。60代の女性は「戦争を早くやったらいい。決着が付くのが人民の利益だ」と過激なことを口にしたが、後に彼女を私に紹介してくれた人に、「つい本音を言ってしまったが、北朝鮮当局に漏れることはないだろうか」と不安を伝えて来た。