<緊急女性インタビュー>エリート兵が寄生虫抱える北朝鮮軍の実態は? 「軍隊は栄養失調になりにいく所」(写真3枚)

鴨緑江辺で沐浴、洗濯する若い兵士たち。あばらが浮いている者も。2017年7月平安北道朔州郡を中国側から撮影石丸次郎




逃亡兵士から未消化のトウモロコシが



去る11月13日に板門店の共同警備区域(JSA)で発生した北朝鮮兵士の亡命事件。銃撃を受けて手術を受けた逃亡北朝鮮兵士の体内から多くの寄生虫と未消化のトウモロコシが出て来たことから、朝鮮人民軍の劣悪な待遇の一端がはからずも明らかになった。亡命を図った兵士は、韓国当局の発表によると選抜されたエリート兵が配属されるJSA所属だという。今、北朝鮮の軍隊はどうなっているのか? 国内の取材協力者に緊急インタビューした。(カン・ジウォン/石丸次郎)

11月17日にインタビューしたのは、咸鏡北道在住の女性。まず、JSAでの北朝鮮兵士の逃亡事件について、韓国メディアの記事を送って経過を説明した。この協力者は事件発生について知らず、「逃亡しようとした兵士は当然撃たれるでしょうね」と感想を述べた。

JSA所属の兵士たちは、思想が堅固で忠誠度の高い若者が配置されるとされる。特にJSA内で南に向かって立哨する軍人は、姿が露出することもあって体格が良い者が選抜される。食事やタバコの支給など、待遇も他の部隊よりはるかに良い。そのJSA所属の兵士の腸の内容物からトウモロコシの粒が出た。一般兵士の処遇はどうなのだろうか?

――あなたの周辺の軍隊の食料事情は?

一般社会でも(生活が)大変なんですよ。軍隊は配給がひどくて、大勢戻されて来ます。私の住んでいる所でも何人か戻されて来ました。栄養失調になったり結核にかかったりして。親たちは「それでも帰って来られてよかった」と言っていますが。

――「鑑定除隊」ですか?

私の近所には(戻って来た兵士が)4人いますが、一人は脱走して来て将校が連れ戻しに来ました。あとは「鑑定除隊」だそうです。
※「鑑定除隊」とは栄養失調や病気などで服務不能と判断されての除隊処分。
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(参考写真)「空腹の上、先輩兵士に殴打され軍服まで脱がされた」といって民家に逃げ込んで来た兵士。上着を着せてもらった。2013年7月北部地方で撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)



首細い兵士に銃が撃てますか?



――今、一般兵士の食事は?

食べ物はひどい有様で、(トウモロコシの)粉だけを食べていて、それもお碗に半分にもならないと言っていました。

――入隊した息子・娘に、親がお金や食べ物を定期的に送るそうですが?

石を食べても消化できるくらい食べ盛りの年齢なのに、どれくらい送金したら足りますか? それに余裕のある家しか送れません。普通の家庭では無理ですよ。

――戻されてきた兵士たちは、どの地域に配置されていたのでしょうか?

南方の地域からたくさん戻されて来ます。江原道、黄海道など。2軍団に配置されるのは、「軍隊に行くのではなく、栄養失調になりに行く」と言われほどです。
※2軍団は板門店を含む西部の軍事境界線付近を担当する。

――金正恩政権は戦争も辞さないと言い続けていますが?

戦争する軍隊は別にあるんでしょうね。兵士たちを見ると、首がひょろひょろに細くて、銃なんて撃てるんでしょうかね。

※アジアプレスは、中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取っている。

(参考写真)頬のこけた兵士が市場をうろうろしていた。2013年8月両江道の恵山市場にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)