<北朝鮮内部>中国元の使用を強力取り締まり 市場に監視カメラ設置し没収まで 制裁対策か(写真2枚)

(参考写真)監視カメラが設置された恵山市場の様子。腕章をしているのは商人を監督する市場管理員。 2013年8月に恵山市場にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)




北朝鮮当局が市場での中国元使用の取り締まりを強化し始めたと、北部両江道に住む複数の取材協力者が伝えてきた。市場に監視カメラまで設置し、中国元を使用が発覚した場合は没収までしているという。(カン・ジウォン/石丸次郎)

「中国元の使用取り締まりが非常に厳しくなった。以前は、使用するなと注意するぐらいで見て見ぬふりをしていたが、今では中国元を使っているのが見つかると無条件で没収される」
北部両江道の恵山(ヘサン)市に住む取材協力者が11月7日、電話でこのように伝えてきた。

公設市場での外貨使用は元来禁じられており、取締りは以前からあったのだが、この数年は厳格に行われていなかった。商人や買い物客は市場管理員の目を避けながら中国元を使い、お釣りも中国元で支払うのが普通になっていた。

背景には、北朝鮮ウォンの価値下落が続いて信用を失い、誰もが安全通貨の外貨を求めるようになったことにある。ただ、この2年間ほどは北朝鮮ウォンの下落は止まっていた。

市場ではどのように取締りをしているのだろうか。取材協力者は次のように説明する。

「『糾察隊』が買物客を装って市場を回り、中国元の使用を見つけ次第、買い手売り手を問わず全部没収している。今では中国元を持って市場に入るのは、『糾察隊』に金を渡すようなものだ」
※糾察隊:社会風紀の乱れを取り締まる組織。青年同盟と女性同盟、学校などから人員が選抜される。
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(参考写真)堂々と中国元で取引する露天商の女性。手に持っているのは1元の釣銭。 2013年10月両江道にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)



◆監視カメラが15台



中国元は大切な個人の財産だ。没収された人はどう対応するのか? との質問に対し、この協力者は

「コネを使って取り戻すのだが、その場合も、中国元ではなく朝鮮ウォンに換算して返却される。コネがなければほとんど取り戻せない」と答えた。返却する際の交換レートは、実勢レートより悪いのだという。

公設市場には中国元の使用を監視するためのカメラも大量に設置された模様だ。この取材協力者によると
「恵山市場に15個も監視カメラが設置された。実際に稼動しているのは4~6個程度だそうだ。市場管理所の中からカメラで監視していて、(中国元使用を発見すると)出てきて取り締まる」という。

両江道の別の取材協力者に確認したところ、「市場での外貨使用の取締りが厳しくなり始めたのは8月末頃からだが、市場内に監視カメラを設置して没収まで始めたのはごく最近のこと」とのことだった。

北朝鮮当局が最近になって厳しい中国元の使用統制に乗り出した理由ははっきりしないが、中国による経済制裁の強化に備えた措置なのか注目される。

制裁によって外貨収入が大幅に減少するのは避けられず、国民から外貨を吸い上げることが目的なのかもしれない。なお、11月9日時点では、他地域の公設市場でも外貨使用に統制が強まっているのかは確認できていない。
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。