北朝鮮の国境警備隊員、脱北青年3人を殴り殺す

脱北を試みた北朝鮮の青年3人が、国境警備隊員にひどい暴行を受け死亡する事件が発生した。

デイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、事件が起きたのは今年7月のことだ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の下三峯里(ハサムボンリ)で、国境警備隊員が、中朝国境を流れる豆満江を渡り、脱北しようとしていた青年3人を発見した。

3人は川魚漁を装い、人気(ひとけ)の少ない時間帯に川に入り脱北しようとしていたものと思われる。




国境警備隊員は、3人を捕まえて、頭と体を銃床と石で激しく打ち据えた末に、川に投げ捨てた。そのうちの1人は意識があり、水面でもだえ苦しんでいたがやがて姿が見えなくなった。詳細はわからないが、3人とも死亡したものと思われる。

この一部始終を、川向うの中国から目撃していた人がいた。

吉林省延辺朝鮮族自治州の龍井市開山屯鎮に住む漁師Aさんは、川沿いを歩いていた時に暴行現場を目撃した。具体的な犯行地点は不明だが、川幅が狭いところでは2〜30メートルしかないため、かなりはっきり見えたようだ。

「あまりにも残酷だったので、夢にも出てくるほどだ」(Aさん)




Aさんは、不眠に陥るほど強いショックを受け、自分にまで害が及ぶことを恐れて誰にも打ち明けられずにいた。最近になって重い口を開けたが、噂はあっという間に広がり、怖がって川に近づこうとしない人が増えたという。同時に、北朝鮮当局の非道に対し強い非難の声が上がっている。

このような行為は、北朝鮮当局が昨年11月、国境警備隊に対して「逃走(脱北)しようとする者を発見したら、その場で射殺せよ」との指示を下したことが影響しているものと思われる。

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国境地帯で兵士として勤務した経験を持つ脱北者によると、以前は反抗した場合に限って発砲することになっていたが、今では警告もせずに射殺するケースが多いと聞いたという。




それが、「人民愛」を強調している金正恩党委員長の指示によるものと知った住民は、少なからぬショックを受けているという。

国境警備隊員は、脱北者を摘発した場合は上部に報告し、保衛局(秘密警察)に身柄を引き渡すことになっている。そのような手続きを踏んで「実績」として認められる。

それなのに何故、件の国境警備隊員らは脱北者に暴力をふるって死亡させたのか。この点について前出の脱北者は、何らかの事情から、定められた手続きから外れた形で暴行をふるったことを隠すために、川に死体を遺棄したのではないかと見ている。