三菱UFJ、9500人分の仕事自動化 国内従業員の3割
三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は19日、国内の事務作業の自動化やデジタル化で「9500人相当の労働量の削減を実現したい」と明らかにした。人数は三菱東京UFJ銀行の国内従業員の約30%に相当する規模だ。自動化を進める一方で、従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向けるとし「全行レベルで生産性を高めたい」と語った。
金融庁と日本経済新聞社などが東京都内で開いている「FIN/SUM(フィンサム)ウイーク2017」の講演で、明らかにした。
平野氏は労働量削減の前段として「長期的な世界経済の低成長や規制強化で、金融業界の経営者は危機感を深めている」と述べた。「一部の部署だけでなく、組織全体としてデジタル技術による経営改革に取り組み、既存業務を大幅に効率化する必要がある」と指摘。最先端の技術革新への対応と既存業務の効率化を同時に進めていく必要性を強調した。
三菱UFJは5月、CDTO(チーフ・デジタル・トランスフォーメーション・オフィサー)と呼ぶポストを新設している。
業務の大胆なデジタル化によって、今後7年間で2000億円の利益押し上げ効果を目指している。平野氏はこの2000億円のうち「3分の2は業務プロセスの効率化によるものだ」と述べた。
生産年齢人口が減少するなか、国内メガバンクは1000人を超える規模で新卒者の大量採用を毎年続けてきた。「少数精鋭」を前提にした戦略にカジを切る意味は大きい。
平野氏は社員の再教育などを通じて「これまで比較的単純な作業に従事してきた従業員をよりクリエーティブな仕事に振り向ける」と強調した。銀行業務においても、人がやる仕事と機械で置き換えられる作業を明確に分けて、生産性を高めていく余地は大いにあるとの考えだ。
三菱UFJ銀行の三毛兼承頭取も今月、「人工知能(AI)の導入などで徹底的に自動化を進めていく」という方針を打ち出している。例えば住宅ローンの受付業務を完全に自動化できれば、年間2500時間の労働量の削減につながる。
ただ、特定の業務の担い手として採用した従業員を再教育し、他の仕事で能力を発揮するよう求めるのは心理的な反発もあり、簡単ではない。デジタル化で「浮く人材」の活用法には繊細な配慮も必要になる。