経済制裁が北朝鮮の国民生活を直撃…「核開発は不愉快」庶民感情が悪化
国際社会の制裁が、北朝鮮庶民の生活を直撃している。それに伴い、核兵器開発に対する庶民の見方も厳しくなっているようだ。
今月初めから、平壌を中心に北朝鮮国内のガソリン価格が急騰している。
国連安全保障理事会が対北朝鮮制裁決議2371号を採択したのは先月5日。それから3週間ほどは物価がむしろ下がるなど大きな動揺はなかったが、6回目の核実験を強行した今月3日から一部地域でこのような動きが現れている。
複数のデイリーNK内部情報筋によると、平壌におけるガソリン1キロ(1.34リットル)の価格の推移は次のとおりだ。
◇8月初旬=1万5100北朝鮮ウォン(約196円)
ガソリン価格は、当局が販売制限を始めた4月19日まで、1キロ8350北朝鮮ウォン(約109円)だった。この5ヶ月で3倍近くも高騰した計算になる。
ちなみに、中国のガソリン価格(1リットル)は地域差があるが、概ね6元(約100円)代前半、北朝鮮同様にガソリンを海外からの輸入に頼っている韓国では1500ウォン(約143円)前後だ。(9月11日現在)
オートバイもタクシーも、人や物を運んで利益を得ているが、運行できなくなることは収入が途絶えることを意味する。また、洗車場や中古車販売業などの関連業種もダメージを避けられないだろう。
(参考記事:「美女洗車サービス」も登場した北朝鮮ニュービジネス)
ガソリン価格の高騰は、中朝国境沿いの都市でも起きている。
ガソリン価格の高騰の原因としては、当局のガソリン販売の制限が考えられる。米国が提出した追加制裁の草案に、北朝鮮への原油輸出の全面禁止が含まれているのを知った当局が、備蓄のために販売を制限しているというものだ。
当局は今までも国家的な建設事業や、記念日の行事、軍事パレードの準備のために、非公式にガソリン供給量を減らしたことがある。このような場合、当局は各地の国営ガソリンスタンドに民間人への供給量を減らすことを指示すると同時に、保安署(警察署)にガソリン商人の統制を指示する。
一方、海外からのラジオ放送などを通じて北朝鮮に伝えられた原油禁輸の情報が、口コミで広がり、売り惜しみをするガソリン商人が増えたことで価格の高騰につながったとの見方もある。
両江道の内部情報筋によれば、原油の供給が止まるかもしれないとの噂が流れ、ガソリン商人がさらなる値上がりを見込んで売り惜しみしているという。
(参考記事:中国の取り締まり強化で北朝鮮密輸ルートが壊滅状態)
北朝鮮庶民を苦しめているのはガソリン価格の高騰だけではない。