「引きこもり支援称し暴力・軟禁」 女性が被害訴え
引きこもりや家庭内暴力など家庭内の問題解決をうたう業者と依頼者のトラブルが相次いでいる。
東京地裁では8日、関東在住の20代女性が、こうした業者に自宅から連れ出されて軟禁され、家族が高額な契約料を払わされたとして、慰謝料など約1700万円の支払いを業者に求めた訴訟の第1回口頭弁論が開かれた。業者側は争う姿勢を示した。
訴状などによると、一人暮らしだった女性は2015年9月、一時同居した母親(69)と口論になり、平手でたたいた。母親は翌日、家庭内暴力や引きこもりの解決をうたう東京都内の業者のサイトを見て相談。約570万円で「社会復帰支援」名目の契約を結んだ。
数日後、女性は業者のスタッフに自宅から無理やり連れ出され、首都圏のアパートを3カ月間転々としたうえ、所持品の没収や暴力を受け、自由に外出できない期間もあったと主張した。女性は「ほとんど放置され、自立支援などは無かった」と訴え、事情を聞いた母親も「不当に高額な契約料を支払わされた」としている。
業者側は答弁書で「原告側の主張は事実無根。著しく事実と異なる主張が多く、毅然(きぜん)として反論する」と述べた。
■トラブル相次ぐ
都内で先月22日、各地の引きこもり支援業者による被害を訴える記者会見があり、関東に住む20代男性は別の業者について「監禁や暴力は日常茶飯事。社会復帰どころかその逆だ」と訴えた。大学を中退した男性を心配した母親が業者に依頼。無理やり自宅から連れ出され、施設に1年半入れられたという。
国民生活センターによると、引きこもり支援業者に関するトラブルはここ2、3年増えている。50~60代の親が、20~30代の子どもの引きこもりを心配し、数百万円の契約金を支払って強制的に家から連れ出させる例が多い。その後、子どもと連絡がとれなくなり、業者から追加料金を求められるケースもあるという。
内閣府の昨年9月の調査では、15~39歳の引きこもりは全国に54万1千人と推計される。その5年前に比べ、7年以上引きこもる人の比率が倍増していた。
引きこもりの問題に詳しいジャーナリストの池上正樹さんは「自立支援をうたいながら、実際は何もしない手口も増えている。法整備やガイドラインもなく野放し状態だ」と話す。(後藤遼太)