あなたは餓死から逃れ、必死に生きようとする。
残飯をあさり、ダンボールで寒さをしのぐ生活。
客観的にみれば、死んだ方がマシとも思える状況の中で、
必死にもがき、喘ぐあなた。

もう何ヶ月も、1円のお金も手にしていない。
この先、ただの1円でさえ、手にできる可能性はない。
もちろん、お金を貸してくれる人など皆無だ。
生活保護をはじめ、弱者救済のシステムなど何もない。

年老いた身体に寒さはこたえる。
身体のあちらこちらが痛い。
しかし、当然のことながら医者にいくこともできない。

離ればなれになった妻は、どうしているだろう。
順調だった。
決して裕福というわけではなかったが、まずまずの生活をしていた。
同期の中では、一番に課長になった。
マンションも買った。35年ローンだった。妻は、専業主婦だった。

いつから生活の歯車が狂いだしたのか、良く覚えていない。
非正社員になり、給料が大幅に下がったときだろうか。
残業手当が、全額カットされたときだろうか。
それでも、慎ましく最低限度の生活にしがみついていた...。
〔続く〕
確かに、インフレはこたえた。
生活に必要不可欠なものがどんどん値上がりした。
公共料金の値上がりも半端じゃなかった。
税金なんか払える状況じゃなかったが、莫大な金額を持っていかれた。

ある日、電気が止まった。その日、妻は出て行った。
2度と部屋の電気がつくことはなかった。
数ヶ月後、マンションから追い出された。
今はもう、寝ているのか起きているのか分からないような毎日だ。
感覚があるのは、寒いということと空腹、そして身体の痛みだけだ。
痛みをこらえ、残飯をあさりにいく。

「何のために、生きているのだろう」

公園のゴミ箱に、新聞が捨ててあった。
自分と同じような境遇の人が、急激に増えているようだ。
「俺だけじゃないんだ」
何の慰めにもなりはしない。
残飯が、胃袋を多少慰めてくれた。

そしてまた、眠りにつく...。
〔続く〕


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