今日の一冊


「人体ヒストリア」

~その「体」が歴史を変えた


著者 キャスリン・ペトラス

   ロス・ペトラス

訳者 向井和美

日経ナショナルジオグラフィック発行

2023年8月21日第1版第1刷



言葉をテーマにした

数多くのユーモアあふれる

本を共著で発表してきた

 ペトラス兄妹。


本書は、

「古代の洞窟に描かれた手形から、

ギリシャ神のペニス、

近代中国の纏足、

宇宙遊泳中の膀胱まで、

独特のウィットと

鋭い洞察力を駆使し、

歴史のなかで人体が

果たしてきた役割、

人体が歴史に与えた影響に

着目した。

まったく新しい視点で

歴史と人体を「解剖」する、

知られざる秘話、

トリビア、エピソード集。」

(表紙カバーより)


紀元前5万年~紀元前1万年の

洞窟に描かれた手形。

スペインで調査されたものは、

中空のチューブを使い

赤(黄土)か黒(酸化マンガン)の

顔料を壁に着いた手の上から

顔料を吹き付けたと思われる。

中が空洞の骨が見つかり、

内側に顔料が付着していたのだと。


脊柱港湾症だったと

伝えられてきた

 イングランド王リチャード3世。

500年後に見つかった骨は、

わずかに湾曲しているだけだった。

王位争いのネガティブ

キャンペーンに誇大表現

されたのか。


近代まで

遺骸とは別に

心臓だけ埋葬する

ことのあったヨーロッパ。


面長で顎の長い肖像画 の

スペイン・カルロス2世。

権力や地位を守るため

一族同士で政略結婚を

続けたための遺伝子異常

による一族独特の

「ハプスブルク家の顎」だった。


歴史の中の人体のもつ

意味がいろいろ書かれています。


そんな中のミニコラム

「ハプスブルク家の

 独特の黄色」


ハプスブルク家の建築物、

とりわけウィーンから

クラクフ、コルドバの

公共建築は、

ハプスブルク・イエロー と

呼ばれる金色がかった

黄色なのだそうです。


ハプスブルク家が

一族の色に選んだのが

神聖ローマ帝国の

国旗の色である黒と黄色。

(ハプスブルク家は

神聖ローマ皇帝の称号を持つ) 


中世の時代、

毒、嫉妬、詐欺などと

結びつく否定的な意味合いの

あった黄色も

富や権力を象徴する金色に

近いからと肯定的な意味合いを

持つようになったのですね。


我が一族の所有物を

判別する目印の黄色は、

そのうち、あこがれの色

として、時代とともに

宮廷の取り巻き、

高級住宅地や別荘、

民衆にと広がっていった

そうです。


そして、

ハプスブルク・イエローは、

新世界へも。

ハプスブルク家の娘

レオポルディナ大公女が

ポルトガル人の

ドン・ペドロと結婚。

ペドロがブラジル帝国の

初代皇帝となり、

ブラジルの国旗に

ハプスブルク・イエローが

少し入れられたと。


なかなかに

興味深いイエローのお話です。