昨日の進撃の巨人見た?


・・・なんだよ、リヴァイ兵長め・・・



いちいちカッコよすぎるんじゃッ!!!!!!!!


ほんっと・・・いちいちいちいちいちいちいちいちいちいちいちいち・・・・・・・・・・・・



神様かッ!!!!!!(/ω\)


ここのところ、ジャンの見せ場が少ないので、兵長にどんどん進撃されてるよ!!


ジャン!ぼさっとしてると、あなたのはむこはどこかへ行っちゃうぞ!!(執行対象です。セーフティを解除します)


ということで、ジャン好きを公言しておきながら身体はリヴァイ兵長を求めております。


はむこでした。





夏休みから作文しておりまして、ようやく最終話です。

なんやかんや、お話を完結させた達成感というのは、いいもんですね。



























勝ち割るのは、堅実なゲームセンス


運命は奪い取るものだ。






『プロバビリティ・デスゲーム』Final attack







「おい。いつまで転がってるつもりだ。いい加減、起きろ」


ぺちぺち、と頬を叩かれ、あたしはゆっくりと瞼を持ち上げた。


「・・・うぅ」


まだぼんやりする視界に映ったのは、呆れた表情のリヴァイ兵長だ。
椅子ごと横向きに倒れたおかげで、体の右半身が痛い。その痛みとともに意識を飛ばす前の記憶が甦って来る。


あたしが飲んだのは、酒だ。本物のトリカブトの毒だったら死んでいた。
と、言っても、あたしは体質的に酒を一滴たりとも受け付けない体なので、グラス一杯の酒を一気に呷るなど、死んでもおかしくない行為なのだが。
のそのそと立ち上がり、椅子になんとか腰掛けると、リヴァイ兵長が口直しに水を差し出してくれる。
それを飲みながら、あたしは疑似体験したデスゲームの感想を述べる。
一言で言うと、嫌なものだった。


「リヴァイ兵長も酷い目にあったもんですねぇ。調査兵団の兵士長のくせに、丸腰で犯人の口車に乗るからですよ!あたしの『リヴァイ兵長探知機』が反応したから、あの場所が特定できたものの・・・」


そう。
リヴァイ兵長が出て行った後、あたしはしばし考えた。いくらリヴァイ兵長でも、丸腰はマズいのでは、と。そして、慌てて立体起動装置を身に着け、憲兵団の何人かに協力を得て、その後を追ったのだ。


「お前が立体起動装置を使って、窓ガラスをぶち破って入ってきた時には全て終わった後だ。何の役にも立ってねェ。何が『探知機』だ。ただ後ろからつけて来ただけだろうが。気持ち悪ィ」


頬杖をついたリヴァイ兵長が吐き捨てるように言う。
女の子に向かって、『気持ち悪ィ』とは失礼な。


「それにしても、よく生還できましたよねぇ。シヴァの持っていたトリカブトの毒も拳銃も本物だったんですから・・・」


「シヴァはどうしても俺と勝負がしたかった。それが仇となったわけだ。だから、グラスを選ぶときに見るなと言う要求を拒めなかった。そこでミスを犯した」


危機に瀕して、リヴァイ兵長が考えたこと。

それは、どうすれば自分もシヴァも死なずに済むかということだった。
この難解な問題の答えを、彼は短時間で見つけ出したのだ。
頭の回転の速さと冷静さは感服するしかない。さすが、数々の危機を乗り切ってきているだけある。
あたしだったら、自分が助かる方法だけを考えて、パニックに陥ってるだろう。


「あいつが振り向くまでにうまくやる自信は無かった。間一髪で悟られずに済んだ時は、冷や汗モンだったぜ」


シヴァが振り向いている間に、リヴァイ兵長がしたこと。
それは、三つのグラスの中身を全て混ぜてしまうことだった。
それぞれのグラスに三分の一ほどしか、中身が注がれていないことが幸いした。これが、目一杯グラスに注がれていたら出来なかった細工だ。


「音を立ててもいけないし、時間は十秒しかなかった。どのグラスにも毒が三等分されるようにするのはなかなかスリリングだったぜ。注ぎ終わった後、人差し指でかき回すところまでは何とかなったな」


巨人と対峙した時のリヴァイ兵長の動きの速さは、人間の域を越えているのではないかと思う。もちろん、立体起動装置という人外の力を借りてのことでもあるが、それを抜いても十秒間にこれだけの事をやりきるには、普通の人間では無理だ。


なにはともあれ三つのグラスをひとつにまとめ、それをまた三等分にすれば、いかなる場合も致死量の三分の一を飲まなければならないが、命だけは助かる公算が高くなるとともに、シヴァが致死量を口にする可能性も消えるのだ。捨て身の作戦ではあるが、見事な機転と言っていい。


毒の三等分が成功したら、あとは作戦が立て易かった。
まず、シヴァが三分の一の毒を飲み、リヴァイ兵長に選び直しのチャンスが回って来る。残りのどちらを選んでも結果は変わらない。
最終的に投じられたトリカブトの内、三分の二をシヴァが、三分の一をリヴァイ兵長が飲んで終了する。
毒の分量が多ければ二人とも死んでしまうが、シヴァは「一人分の致死量」と言った。
それを信じるしかなかったのだ。


「俺は、じっとシヴァの様子を観察していた。症状が出るまでに三十分はかかったぜ。奴は驚いてたな。『当たり』を引いたのは俺なのに、自分の身体に異変が起き始めたんだからな。そこに僅かな隙が出来た。予測通りだ」


「・・・丸腰で拳銃持った相手に飛びかかろうって考えが恐ろしいですよ。ましてや、相手はリヴァイ兵長よりも体格が大・・・・何でもないです」


目の前の兵長の殺気が一気に上がったのを感じて、慌てて口を噤んだ。
しばらく鋭い目で睨まれていたが、兵長はそのまま視線を動かして、話を続ける。


「時間が無かった。極力早く拳銃を取り上げ、救助を呼ぶ必要があった。俺自身とあの野郎の為にな」


「『どのグラスにも毒が混ざるようにグラスの中身を全部混ぜてやった。お前の方が多く毒を飲むことになるぞ!』って脅してやれば良かったじゃないですか?」


「俺はそっちの方が危険度は増すと踏んだ。神聖なゲームを冒涜されたと発狂して、撃つ可能性があったからな」


リヴァイ兵長が際どい賭けに勝利し、シヴァの腕を力一杯捻り上げて拳銃を奪いシヴァを制圧した所へ、通りがかりの人の目撃を頼りにリヴァイ兵長を探していたあたしが、立体起動装置を使って二階の窓を破り、憲兵団とともにデスゲームの舞台へ乱入したのだった。


「でも、あの時のリヴァイ兵長の事は忘れられませんよ。よっぽど、あたしに会えたのが嬉しかったんですねぇ。あたしの顔見るなり抱きついてきちゃって・・・」


あたしは、熱くなる両頬を手のひらで包みながら、あの場面を頭の中で再生する。
現場へ駆けつけるなり、リヴァイ兵長のもとへ駆け寄ったあたしを見た彼は、突然切なげな表情をしながら、あたしの肩にその顔を埋めた。
あの場面を思い出すと、顔の熱と緩みが止まらない。
すると、リヴァイ兵長がテーブルの下のあたしの脛を強く蹴った。


「ッッッたぁぁぁぁぁッ!!!」


あたしは、椅子から反射的に飛び上がって、蹴られた右脛を抱えながら、その場で小さく跳ねた。


「テメェのその天晴な頭はどうにかならねェのか?トリカブトの毒を致死量の三分の一とは言え飲んでるんだぞ。まともに立ってられる訳がねェだろうが。馬鹿みたいに呆けやがって」


「・・・ちょっとくらい、夢見させてくれたっていいじゃないですか」


「お前のグラスには、本当にトリカブトを入れておくべきだったな。頭に湧いたウジぐらいは駆除できたかもしれねェ」


あたしが飲み干したグラスを見つめながら、真顔でリヴァイ兵長は言った。彼なら本当にやりかねないので、あたしは「でも抱き付いたのは事実です」という言葉は飲み込んだ。
あたしが大抵リヴァイ兵長に怒られるのは、一言多いというところにある。


「シヴァは、青のグラスに毒を入れていたんですね?」


あたしは、話を戻す。


「そうだ」


「と、いうことは・・・自分はゲームに勝ったと確信していたわけですね。『もうすぐ、リヴァイ兵長の身体に異変が起きるぞ!・・・もう、そろそろだ!』と思いながら待っていたら、自分の身体に異変が起きた。愕然としたでしょうね」


「それも計算の内だ。相手がショックを受ける様に、俺はなるべくアイツが作った『当たり』を引く確率が高くなるようにグラスを選んだ」


それが分からない。


「わざと『当たり』を選んだってことですか?最後にグラスを赤から青に変えた事で、何故『当たり』を引く確率が高くなるんです?そういえば・・・あたしが倒れる前に『正しい判断をした』って言いましたよね?あたしは、最初に酒のグラスを掴み、選び直す機会を放棄して負けたんですから・・・正しい判断とは言えないんじゃ・・・」


「お前の唯一、褒めるべき所は選び直さなかった事だ。クジ引きみたいなガキ臭ェこのゲームも、ちょっとばかり論理的なんだ。シヴァに勝負を挑まれた側は、勝つ確率を上げる事ができる。実は、シヴァがハンデを負ったゲームなんだよ」


何故そうなるのか。ゲームが始まる時に置かれたグラスは三つ。そのうち、一つが『外れ』として除かれ、二つが残る。そのうちのどちらかが『当たり』。どう考えても、『当たり』を引く確率は二分の一。それより高くもならなければ、低くもならないはずだ。


「シヴァの会話の中に何かヒントらしきものがあったんですか?」


「そんな曖昧な話じゃねェ。その少ねェ脳味噌で考えてみろよ」


リヴァイ兵長は自分の米神をとんとん、と叩いて言う。
さっきから、人の頭を『ウジが湧いてる』だの『少ない脳味噌』だの酷い言い様だ。リヴァイ兵長じゃなかったら殴ってる。


「・・・そんなこと言ったって・・・二分の一は二分の一。他に考えようがありませんよ」


どんなに考えても、これ以外の答えなど導き出せるはずもない。
お手上げです、と目尻を下げたあたしに、リヴァイ兵長は溜息を一つ零した。


「しょうがねェな・・・ガキにでも分かるように説明してやるから、よく聞けよ?最初に俺がグラスを選ぶ時、『当たり』を引く確率は?」


「三分の一です」


「二度目に選んだ時は?」


「二分の一です」


「そういうことだ」


「・・・・・」


二人の間に沈黙が落ちた。
夕暮れでオレンジに染まる部屋。鴉が一声鳴いて飛び去っていく。


「そんな説明で分かるわけないじゃないですか!!」


机に両手を勢いよく付いて立ち上がり突っ込むあたしを、リヴァイ兵長は口の端を少し釣り上げて、喉の奥だけで笑った。


完全にあたしの反応を見て楽しんでいるようだが、解毒の治療から復活して元気になったようで何よりだ。


「分かった、言い直そう。最初は三択問題だった。俺が引いた赤のグラスが『当たり』である確率は三分の一。青もしくは緑が『当たり』である確率は、三分の二になる。ところが、シヴァが緑のグラスを飲んだ事により、緑が決闘の場から外れ、三分の二の確率を青が一手に引き受ける事になる。だから、青は赤よりも危険だ。それが当たる確率は二分の一じゃない。シヴァが干渉することで、確率に変化が起きたんだ」


あたしは、口をへの字に曲げて再び抗議せずにはいられない。


「・・・どうも、新手の詐欺に引っ掛かってる気分です。兵長、わざと理解できないように喋ってませんか?」


心外そうにされた。その顔は、本当に呆れてる顔だ。


「じゃあ、こう考えろ。シヴァが用意したグラスが三つじゃなく、十・・・いや、百個だったとしよう。そのうち、一つが毒杯だ。どれかを選んで飲むように言われたって、そんなに恐ろしくはないはずだ。『当たり』を引く確率は百分の一なんだからな」


あたしは頷く。


「お前は勘だけを頼りにグラスを一つ選ぶ。その後、シヴァが九十八個のグラスを空にして、テーブルに二つのグラスを残す。お前が手にしているグラスともう一つだけ。そこで『選び直してもいい』と言われて、お前は変えるか?」


「・・・いいえ」


あたしは首を横に振る。
最初に選んだグラスは九割以上の確率で『外れ』である。セーフだ。
一方、わざわざ残されたグラスは限りなく『当たり』に近いのだから。


「極端な例をあげりゃ分かるだろ。そういう事なんだ。これは、グラスの数が減ろうが増えようが原理は同じ。当たりがどれなのか知っている人間が干渉することで、確率は変わる。グラスが減ってから選び直すのは、『当たり』に近付くってことだ。だから、俺は一旦シヴァを油断させるためにあえて青を取ってやったんだよ」


あたしは、ぽかんと口を開けたまま兵長を見つめた。
脱帽するしかない。あの極限の緊張感の中で、この人は一体、いくつの事に頭を回したのか。
兵長はよく『考えるのは、エルヴィンの仕事だ』とかなんとか言っているが、リヴァイ兵長も充分、普通の人の一つ、二つ先の事を考えている。


「リヴァイ兵長・・・やっぱりスゴイ・・・好きです」


「まぁ、これもあくまで確率の話だけどな。赤と青、どっちに毒が入っていても不思議は無かった。わざと『当たり』を掴んで、シヴァの思惑通りになったのは偶然だ」


あたしの告白を華麗に無視して、リヴァイ兵長は椅子から立ち上がった。


彼の姿を見上げ、あたしは改めてリヴァイ兵長の勝利と生還を心の中で祝福した。


シヴァは憲兵団に身柄を引き渡され、現在は審議所の地下に拘留されている。

機会が得られ次第、リヴァイ兵長は面会を希望している。


『長い話を聞く』その約束を果たすために。


拳銃を奪われ、リヴァイ兵長に取り押さえられながら、シヴァは消え入るような声で言ったのだそうだ。








『生きたい』













【終】




お付き合い頂きありがとうございました。


初めてオリジナルのキャラを取り入れてみました。


『ユニコ・ニケ』のキャラの名前の由来は、伝説の馬ユニコーンの『ユニコ』ですwww

そしてニケというのは、神話に出てくる戦争の女神の名前です。強いんです、ユニコ。

伝説の馬と戦争の女神。いかにも強そうでしょ?www


ユニコとリヴァイ兵長のお話は、これからも時々書いて行こうとか思っています。


最近は、進撃熱が上昇中なので、いろいろネタが浮かんできます。

それもしょうもないものばっかなんですがwww


また、お付き合いいただければ幸いです。よろしく。


ちなみに『シヴァ』も神話に出てくる、破壊神の名前。



すっかり夏休みも終わっちまったなァ・・・


「夏休みは始まる前が一番楽しい」


マジでそうだね・・・



こんばんわ、はむこです。


夏休みは、政宗様のお膝元、仙台なんぞに行ってきました。

素敵でした。政宗像!!


牛タンもおいしかったよ~!!


ただ・・・・・



クッソ暑い!!!!!!!!!!!



東北・・・北って付くから、ちょっとは涼しいかなァ~と思ってたら、猛暑だよ、猛暑!!



そんな夏でしたが、夏休みは普段出来なかった作文がよいペースで書けておりましたが、更新してなかったっていうね。


初・進撃作文です。続きをどぞ!


前回までのお話は『プロバビリティ・デスゲーム』attack.1『プロバビリティ・デスゲーム』attack.2プロバビリティ・デスゲームattack.3 からどうぞ。














味わうのは、勝利の美酒か


敗北の苦渋か。






『プロバビリティ・デスゲーム』attack.4






果たして、シヴァの言うことはどこまで信じていいものか。
トリカブトの粉末は本物なのか、拳銃には弾が込められているのか、様々な疑問がリヴァイの頭を交錯する。


何もかも嘘で塗り固められた芝居に付き合わされている可能性も否定できないが、その逆も十分に考えられる。最悪の事態は想定しておかなければならない。常に死と隣り合わせである調査兵団の兵士は、常に最悪の事態を想定して動く癖が付いていた。
何とか拳銃を取り上げられないものかと思ったが、シヴァには全く隙が無い。
よく訓練された兵士のようだ。
もしかしたら、訓練生の時点で落ちぶれた組かもしれない。


抵抗のそぶりを見せたり、ゲームに支障をきたすような真似をすれば即撃つ、とシヴァの視線は警告していた。


「イカサマが無いことを証明するためにいつも新品のグラスを使うんですよ。手に取って調べていただいても構いません」


机には三つのグラスが空の状態で並べられていた。同じ形だが、グラスの縁に入ったラインの色が、赤・青・緑と異なる。


「水差しから飲み物を入れるのはリヴァイ兵長にお願いしましょう。三等分して、量がぴったりになるようにしてください」


ゲームが始まってしまった。
リヴァイは、小さく舌打ちして指示通りに動く。
そしてグラスに飲み物を注ぎながら、この状況をどう打開すべきか頭を回した。


「では『当たり』を作ります。僕がいいと言うまで、背中を向けていてくれますか。そして、ゆっくりと振り向いてください。急な動きは厳禁です。ゲームがうまく進行しないようなら、僕は絶望して躊躇いなく撃ちます」


成す術なく、仕方なく従うように見せながらリヴァイは考えていた。
このゲームのルールは二つの点でおかしい。


グラスとマドラーが触れ合う涼しげな音がする。毒を溶かしているのだ。執拗に撹拌している。


「もういいですよ。ゆっくりと振り向いてください」


さっきと同じように三つのグラスが並んでいる。
どれも、マドラーでかき回した跡がある。見た目では、どのグラスも変哲がない。


「・・・周到だな」


「さぁ、グラスを選んでください。勘だけを頼りに」


シヴァの目には歓喜の色があった。思い通りにゲームが進行して興奮しているのだろう。
リヴァイは、右側の赤い縁のグラスに手を伸ばしかけた手を止め、虚空でふらふらと彷徨わせた。
迷ったのではなく、シヴァの反応を見たかったのだ。


シヴァは嬉しそうに、口元をほころばせる。
リヴァイの一つ目の疑問が解けた気がした。


「なるほどな。それで、グラスの縁の色が違うのか」


「・・・どういうことです?」


「飲み物を均等に三等分しながら、何故グラスの色は違うのか、と疑問だったが・・・どれが『当たり』か判別しやすいようにしたかったんだな。そうしておいて、相手が『当たり』を掴んだり、気が変わって別のグラスを取ったり、また『当たり』を掴んだりするのを見て楽しむわけだ」


「その通り。トランプの『ババ抜き』で味わえるスリルの感覚ですよ」


「『馬鹿め。散々迷った挙句に『当たり』を引きやがった』とサディスティックな快感にひたったりするのか。しかし、相手があっさり『外れ』を引いたらどうする?そこでゲームは終了だ。実に呆気ねェ幕引きになるぜ?」


するとシヴァは、ふっと小さく笑う。


「そのためにもう一工夫あるんですよ。グラスを選ぶ機会は二回あるんです」


彼は、自分から向かって右側の緑のラインの入ったグラスを指さし、


「例えば、リヴァイ兵長がそのグラスを選んだとしましょう。すると、僕は赤か青のグラスから飲み物を飲む。その後で、リヴァイ兵長はもう一度グラスを選びなおすことが出来ます」


「何だって?」


リヴァイは顔を顰める。スリルを二度味わうためなのか、それにしても回りくどいやり方だ。
リヴァイの心の中を読んだのか、シヴァは再び説明を始めた。


「無駄な手順ではありませんよ。僕は、このゲームの最中、二杯の飲み物を飲むことになる。一杯目は『外れ』が確定しているものをノーリスクで選べるわけですが、こうすることによって『毒の入っていない飲み物は存在した。あなたは、それを選ぶ権利を間違いなく与えられていた』という証明になるんです」


疑問の二つ目が解決すると同時に、なんて理屈っぽい男だろうとリヴァイは思った。


「ただ命懸けのギャンブルがしたいなら、外見が全く同じのグラスを二つ用意して『当たり』と『外れ』を作れば事足ります。それこそが純粋なギャンブルでしょうけど、それでは面白くない。僕は、人生の最後に運だけで勝負が決まるゲームはしたくなかった。だから、このゲームを考え出したんです」


「とは言え、俺が『外れ』のグラスを最初から最後まで掴んで離さなかったら、お前には打つ手がねェだろう?愉快なゲームが出来るとは限らない」


「僕は悪戯好きです。『当たり』を引いたリヴァイ兵長に向かって『それでいいんですか?変えてもいいんですよ?』と揺さぶりをかけるかもしれない」


シヴァは上機嫌だった。
既に生きることを捨て、心が軽くなっているようだ。


「フン。いざとなったら、そんな演技は出来ねェはずだ。俺が『当たり』引いたら、お前はそそくさとゲームを終わらせにかかるだろうぜ」


吐き捨てるように言ったリヴァイに、シヴァはやれやれと首を振った。


「そうお考えなら口にするべきではなかった。ぺらぺら推論をしゃべったのは、リヴァイ兵長が足場を失いかけている証拠ですよ。・・・どうぞ、最後の選択を」


捨て身になるしかねェか、覚悟したリヴァイは椅子の背にもたれたまま突き放すように言った。


「そんな脂っこい目で見られたら、落ち着いて選べねェだろうが。駆け引き抜きで運試しをさせろ」


「・・・というと?」


「俺がグラスを選んでいる間、向こうを向いてろ。勝った時の報酬も無ェんだから、それくらいの要求は通せ。何もかも一方的に進められてたまるか」


拳銃を構えている男は、意外な顔をする。


「驚きましたね。リヴァイ兵長は、こんなものを突き付けられているんですよ?どんな要求も通りません」


「そうか、なら撃て。ゲームセットだ。楽しめなくて残念だったな」


リヴァイは露骨に開き直り、ジャケットの前を開いて胸を張った。せっかくお膳立てしたゲームがここで終わってしまうことにシヴァが耐えられるはずがない。撃たないという確信はあった。


「そういう反抗の仕方がありましたか・・・。でも、僕が顔を伏せたり、背を向けたら、リヴァイ兵長は飛びかかって拳銃を奪うつもりでしょう?魂胆が見え透いていますよ」


しかし、交渉の余地が無いと察すると、仕方なく折れてきた。


「じゃあ、こうしましょう。僕は立ってドアの方を向いています。テーブルから二、三歩離れて。それなら、リヴァイ兵長に不穏な動きがあれば気配で分かるし、振り向いて撃つ余裕もある。ただし、制限時間は十秒です。・・・始めますよ」


「クソッ!勝手に始めるんじゃねェよ」


シヴァは有無を言わせない。いきなり席を立ってテーブルから離れると、リヴァイを慌てさせた。

テンカウントが始まり、たちまち終わる。矢のように早い十秒間だった。
シヴァが振り向いた時、リヴァイは叩きつけるように言った。


「赤だ」


「危険を示す色をお選びですか。リヴァイ兵長はひねくれ者だな。その性格が吉と出るか凶と出るか楽しみですね。素直に安全を示すこの色を選べば良かったものを」


そう言って、シヴァは緑のグラスを手に取った。そして、ぐいっと一気に呷る。その間も銃口はリヴァイに向いたままだ。
何かの拍子にうっかり引き金を引きやしないか心配だった。


「もう、僕は背中を見せませんよ。そうそう、優しくは出来ない」


シヴァは、口元を拭う。


「リヴァイ兵長は、もう一度グラスを選び直す権利があります。その権利を行使するかは自由。愚図るようなら、最終回答は『赤』とみなします。さぁ、どうしますか?今回は特に制限時間を設けませんので、しばらく迷っていいですよ」


残されたのは、赤と青。
リヴァイは、また椅子の背にもたれ腕を組んだ。


「・・・このくだらねェゲームに名前はあるのか?」


「名前?いいえ、考えてませんでした。うーん・・・名前ね。『プロバビリティ・デスゲーム』なんてどうですか?『確率』のゲームという意味の」


「ガキっぽいネーミングだな。大体、この運と駆け引きだけのゲームのどこが『確率』だって言うんだ」


「『心理的』って言った方がいいかな?・・・僕にはネーミングのセンスがなさそうです」


シヴァは、空になった緑のグラスをテーブルの端にやる。


「青に変えますか?」


リヴァイは答えない。


「せっかくの権利なんですから行使した方がいいと思いますよ?あ、でもリヴァイ兵長の理論だと、僕が『青に変えますか?』というのは、そっちが『当たり』ということでしたね。ならば、いくつもの死闘をくぐり抜けてきた兵士の直感を信じますか?僕はどちらでもいい」


「うるせェな。静かにしてろ」


睨んでも、シヴァはその口元を綻ばせるだけだった。完全に自分の発案したゲームに酔っている。


「死ぬことに躊躇いはねェんだな?」


「僕には生きる意味がない。苦しみながら生きるのはうんざりです。いいことは束の間で、苦痛な時間は延々と続いていく。人生は・・・残酷なんですよ」


「・・・こんな世界でも・・・俺には世界がただ残酷だとは思えない」


巨人の脅威に怯え、壁の中に閉じ込められた人類。
更なる自由を求め、人類はその脅威に立ち向かい、命を散らす。
それでも、花は育ち、見上げる空は青い。人は恋をし、家族を作る。
リヴァイはこの世界が、ただ残酷とは思えなかった。


「巨人に仲間が食われていく世界の醜さを知っている兵長がそんなことをいいますか。意外ですね。この世界に幸せなんてものは存在しないのに」


「お前は自分のことを不幸だと思ってるんだろうが、人はいずれ死ぬ。幸福なんてものは死に際に『死にたくない』と叫ばせるための神の皮肉だ」


「クールな人だと思ってたのに、意外と熱いんですね」


「俺はこんなところで死にたくねェし、お前を死なすわけにもいかない。お前を憲兵団に引き渡す役目がある」


「さっきは、ひとりで死ねと毒づいた癖に。僕は死にますよ」


「どうしても死にてェか」


「問答無用です」


「なら見届けてやる。・・・青に変える」


リヴァイは青いグラスを自分の方に引き寄せた。


「・・・もう変えられませんよ、リヴァイ兵長」


「構わねェさ。これが『当たり』なら俺が先に逝ってやる。乾杯して、飲もう」


二人は軽くグラスを当てると、同時に勢いよく呷り、しばらく沈黙した。外はもうとっぷりと暮れている頃だろう。やがて、シヴァが口を開く。


「・・・どっちが『当たり』だったか、聞かないんですか?」


「聞いても仕方ねェだろ。いずれ分かる事だ。・・・自覚症状が出るまでどのくらいだ?」


「個人差があると思いますが、僕の経験からすると二、三十分で変化が現れます。舌が痺れて、吐き気を催すようです」


「汚ェ最後だな・・・。四連勝出来た秘訣は何だ?」


「誓ってイカサマはしていません。幸運だっただけです。壁外調査に出たって、四回くらい生きて帰って来れる事くらいあるでしょう?」


息を呑んで言うので、おかしくなった。思わず、フッと笑ったリヴァイをシヴァはしげしげと見つめた。


「怖くは無いんですか?こうしている今も、トリカブトの毒が体を蝕んでいるかもしれないのに。あなたは・・・おかしい」


「調査兵団なんていうのは、頭のおかしい人間の集まりだ。巨人は、死に際に猶予なんざ与えてくれェが・・・今は、残り少ねェ命を噛みしめる時間はあるだけマシだ。ろくでもないことになったもんだ」


「こんなことに付き合ってもらって・・・謝ってすむことじゃありませんが・・・」


「なら謝るな。それで気が済まないのなら、死のうとした訳を話せ」


「長い話だと言ったじゃないですか・・・。もう時間がありません。あの世で再会できたら・・・ということにしてください」


乾杯から、十分経ち二十分経ち、そして三十分が過ぎた。リヴァイは、同じ態勢のまま椅子にもたれかかっている。


シヴァは不審そうな表情を浮かべて、唾を呑み下した。
戸惑いのせいで、ずっとリヴァイに標準を合わせていた銃口がふらつく。
その瞬間をリヴァイは待っていた。

リヴァイは、両足のつま先で踏ん張り、渾身の力を込めてテーブルを前に押し出した。
テーブルに腹を押されたシヴァは、「うッ!」と呻きながら、椅子ごと後ろに倒れる。リヴァイは、跳躍してテーブルを越え、シヴァの右手を掴んだが、拳銃をもぎ取ることは出来なかった。かなり強く捻り上げているつもりだが、どうしても離さないのだ。


「長い話ならゆっくり聞いてやろうじゃねェか。牢獄の中でな」


はだけたシャツの間で、フェニックスが羽撃たく。


「時間が無くなりました。あの世で再会出来たらと・・」


「そんな遠い約束ができるか。この世で全て吐かせてやる」


上と下になったまま、ふたりの男は睨み合う。
刺青の男はリヴァイを見上げ、荒い息の中で告げた。


「遅すぎますよ、リヴァイ兵長。どのグラスに毒を入れたか、教えてあげましょう。・・・青です」





【続】



attack1,2.3を見返して、間違いを発見。リヴァイ兵長は『士兵長』ではなく『兵士長』でした。

『士兵長』って何だ!?www


リヴァイ:「全然なってない。全てやりなおせ」


はむこ「キター Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!」













すごいぞ!すごいぞ!!

記事投稿、連続3日だ!!夏休みってすんばらすぃ―――――ッ!!!


こんばんわ。はむこです☆


完全自己満足のお話がとても順調です!!自分的にもちょっと嬉しい!!

さて、今宵もリヴァイ兵長がピンチですよ!!!


前回までのお話はプロバビリティ・デスゲームattack.1プロバビリティ・デスゲームattack2 からどうぞ☆




















いつだったか、ユニコの馬鹿が言っていた。

――・・・巨人なんか別に怖くないです。人間の方が怖いですよ。知性や感情がある分、その深層心理は計り知れない。表面ではニコニコしてても、腹の中では何考えてるか分からないですからね。人類の敵は巨人ではなく・・・人類な気がするんですよ、結局。


お前の言う通りかもしれねェ。






『プロバビリティ・デスゲーム』attack.3





カーテンが降りている為、外は見えないが、もうとっくに黄昏が訪れている頃だろう。
シヴァの申し出に応じていなければ、今頃ユニコを怒鳴りつけて、掃除のやり直しを命じていたはずだ。


「爺さんは・・・いねェんだな?」


「はい」


「『壁』の秘密ってのも・・・」


「出鱈目です。私はウォール教の信者ではありませんし」


厄介なことになったと思ったが、何故そんな嘘を吐いてまで自分を呼び出したのかの理由を聞かずにはいられない。


「ことと次第によってはタダじゃおかねェぞ」


リヴァイは、言われた通り椅子に腰かける。テーブルには、水差しに入った茶と揃いのグラスが三つ用意されていた。そして、ガラス製のマドラーが一本。おかしな組み合わせだ。


「客がもう一人いるのか?それにしては飲み物の量が足らねェ」


「その説明は後程」


そう言って、シヴァも椅子に着席する。相変わらず、その右手は法衣の中に入ったままだ。


向き合って座った相手をリヴァイは観察した。内心の興奮をからくも鎮めているように窺える。全身から放たれる雰囲気が先程とは大きく違っていた。


「きっとリヴァイ兵長を怒らせてしまう。でも仕方がないんです。僕は自分を抑えることができなかった。もう戻れません」


「何わけわかんねェこと言ってやがる。さっさと俺の質問に答えろ、クズ野郎。お前がしたいことは何だ」


シヴァは掌を下にしてリヴァイを制する。その不遜な態度がリヴァイの癇に障った。


「来る途中にトリカブトを使った自殺未遂の現場がありましたね。あれはたまたまです。リヴァイ兵長に図ってお見せしたわけじゃありません。でも、いいタイミングでした。話が早くなる」


「その件に関して何か知っているのか?」


「何かどころか、全てを承知していますよ」


シヴァの目が完全に据わっている。それだけで、彼が何を話そうとしているのかは察しが付いた。


「ウォール・マリアが陥落してから、恐怖と不安に飲み込まれる人が多くて・・・遊び相手を探すのには苦労しませんでしたよ。ただ、こちらが具体的な提案をすると、腰が引けてしまう人も多い。これだ、という人に巡り会えることは少なかったですね・・・」


法衣の中の右手は、シヴァが話している間も動かない。


「遊びっていうのは、例のあれか?何かで勝ち負けを争って負けた方が自殺するってゲーム」


「はい。乱暴な遊びですが、常に合意の元で行いました。謝礼金も用意して。もっとも負ければ金は手にできませんけどね」


「何回やった?」


「街で男達が噂をしていた通り四回ですよ。三人死んで、昨日の一人はからくも生き延びた。絶命するところを確認しなかったので、あとになって嫌な予感がしたんです。しかし、まさか助けを呼べるまで体力が残ってるとは思いませんでしたよ」


リヴァイは彼の話を聞きながら、冷静に頭を回していた。
シヴァの言っていることは、本当なのか。自分の頭に浮かんだ妄想を口にしているだけの可能性も否定できない。とりあえず、黙って話をさせることにする。


「憲兵団が回復を待っているのは、ウィーク・ジェムスターという男です。シガンシナ区の出身で、巨人の恐怖を目の当たりにした一人です。外見はおっとりした優男でしたが、素晴らしい勇者ですよ。僕のゲームに参加してくれたんだから」


人懐っこい雰囲気は消え、興奮しているのか目の色が血走りだしている。正気のまま腐っているらしい。


「何が勇者だ。胸クソ悪ィな。上手くいけば金が手に入るという餌に食いついたんだろ。そんな奴らの為に俺の部下達は死んでいったのかと思うと吐き気がする。テメェらみたいなクズ人間は、全員巨人の臭ェ口の中で人生最悪な気分を味わいながら、その生涯を終えるべきだ。全員仲良くな」


「リヴァイ兵長のお言葉に逆らうつもりはありませんが、罪深いだけじゃないと思いますよ?勝てば、彼は金を手に入れられたんです。金があれば、内地の富豪に取り入ってその安全を保障されるかもしれない。本人がそう言っていました。僕の提案は、彼にとって希望の糸だったんですよ」


シヴァは、決してリヴァイから目を逸らさない。瞬きの回数も極端に少ないような気がする。
一人称も『私』から『僕』に変わって来ている。彼の高揚具合が見て取れた。


「四回目のゲームに勝利した僕は、そのまま廃墟を出た。ウィークにも遺書を書いてもらっていたし、状況からして、自殺に見えることは確実でした。ゲームが終わったのは昨夜。いつもなら、絶命したのを見届けた後、さらに慎重を期して、脈が無くなったのを確認してからエスケープします。なのに、なんだか面倒になってしくじった。慣れてきて油断したんですね。ウィークの生命力恐るべし。あれだけ死にたいと言っていたのに土壇場であそこまで生に執着するとは」


「そんなに人が死ぬところが見てェのか。呆れた野郎だな」


心外だったのか、シヴァは眉根を寄せた。


「自殺するところが見れるとは限りませんよ。ゲームは至ってフェアだ。僕が死ぬか相手が死ぬか、その確率は半々なんですから」


「どうだか」


ぼそっと呟いた言葉に、シヴァは過敏に反応した。名誉感情を著しく傷つけられたらしい。


「根拠もなく疑わないでください。僕の人格に関わる。ゲームは至ってフェアなものであり、イカサマは一切していません。リヴァイ兵長にもじきに分かっていただけますよ」


語気を荒げる男に、リヴァイは冷たい視線を返す。


「べらべらとよく喋っているが、俺はお前の話は一切信じてねェ。調査兵団に架空の告白をして遊んでやがるな、くらいしか思ってない。そろそろ飽きてきた」


リヴァイは、椅子に深く腰掛けて背もたれに腕をかける。

昂ぶりを見せかけたシヴァだったが、すぐに落ち着きを取り戻した。感情のコントロールはまだできるらしい。


「なるほど。簡単には信じていただけないようですね。なら、さらなる秘密を暴露しましょう。その他の三件のトリカブト事件の概要をご説明しましょう。どうせ、聞いていただくつもりでした」


シヴァは、死んだ三人のプロフィールとどのように接触したかについて、事細かに語った。


リヴァイにとっては、聞いたところでどうすることも出来ない事柄だが、話の内容からして信憑性は高そうだ。

「より詳しいことは、記述として残してあります。そこの机の抽斗に入っているので覚えておいてください」


「覚えておけとはどういうことだ?そんなもの俺に託してどうする。それ持って、さっさと出頭しろ」


「出頭はしません。もうひと勝負したら、勝っても負けても僕は死にますから」


彼の言葉にリヴァイは顔を顰めた。
ゲームは一人ではできない。リヴァイは自分が巻き込まれたことを知る。


「そんなものに付き合うなんざ願い下げだ。そんなに死にてェなら一人で死ね」


シヴァは物憂げに首筋を掻く。


「酷いなァ・・・リヴァイ兵長は厳しい方と伺っていたけど・・・僕の事情を理解して、協力してくれると思ったのに」


「死を弄んでおいて、甘い言葉を期待するな。そもそも、俺は自殺志願者じゃねェ。何をするのか知らねェが、ゲームに参加する資格はないはずだ」


「特例ですよ、特例。リヴァイ兵長はゲスト・プレイヤーとして、僕が独断でご招待しました。謝礼金支払いの意思はありませんが、生き残ればリヴァイ兵長も貴重な体験が出来るはずですよ。それで、ご容赦ください」


承諾するわけがないのに、なぜこの男はここまで強い態度に出られるのか。シヴァは、筋肉質といっていい体系で、敏捷さはありそうだが、当然リヴァイに敵うとは思えない。万が一、リヴァイに力で勝ったとしても、力づくでゲームに参加させることは困難だろう。
彼の余裕は何か理由がありそうだ。


「何故、俺にゲームを挑む?もう、自殺志願者を探すのはやめたのか?」


「そんな時間は無くなりました。昨日しくじったからです。僕の所に憲兵団が来るのは時間の問題です」


「ウィークとやらの意識が戻ったら終わりということか。ざまぁねェな。・・・しかし、素性を明かしたわけでもねェんだろ?まだ時間はある」


「その間に逃げろとでもアドバイスしていただけるんですか?逃げるなんて真っ平御免ですよ。かといって、これだけのことをやっておいて、ウォール・マリアの壁から身投げして巨人の餌になるなんて美しくないでしょ?最後にもう一度だけ、頭が痺れるような勝負がしたい。それもスペシャルな相手と」


彼は、法衣のボタンを外し、左側の胸を肌蹴て見せた。その胸には掌ほどの大きさの不死鳥のタトゥーが彫られている。


「素顔を晒しただけでなく、これもウィークに見られてるんです。イカサマじゃないかと疑われたので、上半身裸でゲームに臨んだ。それが非常にマズい。粋がって、周囲に見せびらかしていた時期もあるので『不死鳥のタトゥーがある』というだけで、すぐ足はつく」


「死にたがってる癖に、彫り物は不死鳥か。人間ってのは面白ェ・・・」


「最初から死にたいと思っている人間はいませんよ。誰も彼も死ぬために生まれてきたようなものなのに」


リヴァイは、まだ身の危険は感じていなかった。シヴァの話が本当だとしても、最後の死のゲームをやりたがっているとは限らない。愚図りながらも、ある程度はお縄につく覚悟は出来ていて、説得されることを望んでいるのかもしれない。そう思っていた。


「何者だ・・・お前は」


刺青の男の答えは短い。


「自殺志願者ですよ」


「それじゃ答えになってねェ。・・・質問を変える。何故、死にたい?そんなに死にたいなら、調査兵団にでも志願して、頭数だけでも増やしてくれりゃ良かったのによ。せいぜい、巨人の餌くらいにしかならないだろうが、いねェよりはマシだ」


調査兵団は、その過酷な任務から常に人不足だ。
死にたい人間の使い道はいくらでも思い付く。


「死にたい理由を話そうとは思いませんが・・・つまりは、巨人のいるこの世界に嫌気がさしたんですよ。・・・巨人なんかいなくたって同じかな?僕の大切な人はみんな逝ってしまった。残っているのは、どうでもいい人間ばかり。僕を包んでいるのはどうでもいい世界。そこに目的もないまま、あくせく生きるのに疲れてしまった・・・」


『大切な人はみんな逝ってしまった』そのあたりを語りたがっているのかもしれないが、リヴァイはあえて尋ねないことにする。その理由を話さない限り、彼は死ねないから。


「世の中に嫌気がさして、自殺したくなった。そして、同志を探すうち、他の自殺者に興味が出始めた・・・そんなところか?」


「そんなところです。彼らの話に耳を傾けていたら、どうにも退屈で。どうせ死ぬならもっとエンジョイすればいいのに、と考えるようになりました。進んで死に挑む者だけが味わえる境地というものもあるはずです。それは、苦しいものとは限らない。工夫すれば楽しめるものではないか。そこで、僕が考え出したのが、このゲームです。巨人に立ち向かっていく調査兵団のみなさんだって、この感覚は分かっていただけるのでは?」


「ナメた口をきくんじゃねェ、クズ野郎。俺たち兵士は、進んで死に行くやつなんざ一人もいねェよ」


丸腰じゃなかったら、お望み通り殺してやるのにな。リヴァイは、舌打ちしてなんとかその衝動を抑える。


「すみません。言葉が過ぎましたね。決して、僕は調査兵団の皆さんを愚弄しているわけじゃない。その勇気は賛辞に値する。だからこそ、リヴァイ兵長をこのゲームにお招きした。僕はリヴァイ兵長に親愛の情を感じているんです。もちろん、それが一方的なものと言うことは承知しています。リヴァイ兵長は、スペシャルな存在だ」


ユニコといい、シヴァといい、自分を慕ってくる人間にろくな奴はいないな。リヴァイは頭が痛くなって来た。


「ルールだけなら聞いてやる。勝負するのは拒否するがな」


シヴァの瞳に、不思議な光が宿った。隠し様のない興奮が見て取れる。
リヴァイはさすがに不気味に思った。


「死を賭した最後のゲームの相手は、リヴァイ兵長しかいません。幾度も巨人との死闘を繰り広げ、壁外調査から凱旋するあなたを見ているうちに熱烈なファンになってしまったからです。だから、その背中に白羽の矢を立てさせていただきました。もう逃げられません」


馬鹿らしい、と言いかけて思い留まった。余計な刺激を与えてしまいそうで。


「リヴァイ兵長とのおしゃべりも楽しいんですが、話していたらキリがない。そろそろ、リヴァイ兵長も興味がおありになるルールの説明に入りましょう。とてもシンプルなゲームです。テーブルに置いてある道具を使います。それから、こいつ」


シヴァが小さな包み紙をテーブルに置いた。


「トリカブトの毒です。ちょうど一人分の致死量です」


「それをどうする」


シヴァはルールを説明し出した。

用意された三つのグラスに茶を注ぎ、その一つにシヴァが毒を投じる。どのグラスに毒が入ったかを見ずに、リヴァイはグラスを選ばなければならない。
選ばれなかったグラスのうちの一つをシヴァが飲んだ後、残る二つをリヴァイとシヴァが同時に呷る。


「そして敗者が死ぬ。くじ引きみたいなゲームですから、ポーカーなどに比べたら拍子抜けする程、簡単なゲームでしょ?さぁリヴァイ兵長、グラスを選んでください」


「断る」


「がっかりさせないでください、リヴァイ兵長。逃げられないと言ったでしょう?断れば、兵長は死にます」


隠れていた法衣から出てきた右手には、自動式の拳銃が握られていた。


「・・・こんなこったろうと思ったぜ」


とんだ休日だ。


【続】





あたしの中で『憲兵団』の位置付けは警察、『駐屯兵団』は自衛隊みたいな感じです。

『調査兵団』は・・・実行部隊(テキトー)

銀魂の中で言う『真選組』みたいな感じかな・・・と(テキトー)


要するに、今の日本には無い組織ですよね・・・たぶん。