ある飲食チェーン会社の欺瞞 | よろず「ゆんたく」広場

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ぎのわんシティFM「水曜ちゅらちゅら作戦」でパーソナリティーを務めるコギーのブログです。
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先日、ある投資家向けIRセミナーを公聴してきた。ある製造業者と飲食チェーン会社の社長が、それぞれ自社の業務内容、経営戦略、今後の業績見通しなどを説明した。その中で、ある飲食チェーン会社が欺瞞と矛盾に満ちた会社であることが判明した。武士の情けでその会社名は伏せるが、その内容について紹介したい。


まず、その飲食チェーン会社(以下、当社と記す)は今年に入って、全社員の3分の1以上にもわたる60名を「希望退職」の名目で退職させた。当社の社長にはK氏が昨年新たに就任している。K社長はIT業界から転身して、当社の経営に携わるようになった。K社長が就任したときには、当社は赤字続きであったのだが、K社長は「新たな社長が就任した時は、リストラで経費削減するケースが多いのだが、リストラをするのではなく売り上げ拡大を目指す」と宣言した


しかし、その1年後になっても、安売り攻勢が裏目に出て、赤字からは抜け出せず、宣言通りにはならなかった。そして、宣言通りにはならなかったのは、売り上げ拡大だけではなく、リストラをしないということも然りだった。売り上げ拡大による赤字脱出がなされなかったのを受けて、K社長は先述の「希望退職」を実施した。しかも、その規模は全社員の3分の1以上にもなるのだから、「大粛清」と言ってもよい。


その「大粛清」を行った後であっても、K社長は「企業は人だ」と言っていた。また、「希望退職した人には申し訳ないと思っている。残った社員のハートをつかんで、社員のやる気を出させることが大切」とも言っていた。全社員の3分の1以上も会社から追い出しておいて、社員のやる気を出させるというのは無理がある。こんなことをした以上、残った社員は自分もいつ退職させられるかわからないという不安を抱いている。その不安は、社長が「どんなことがあっても、今後は一切リストラをしない。今後も赤字が続いた際には、自分が責任を取る」とでも宣言しなければ払しょくされないだろう。


そして、K社長が「企業は人だ」と言っているのには、もうひとつ矛盾がはらんでいる。それは、当社は今後直営店よりもフランチャイズ店を増やしていく方針なのだ。フランチャイズ店の割合を高めるということは、当社の正社員よりもフランチャイズ店経営者の割合を高めることになるので、当社の人件費や正社員の割合は削減される。その人件費削減や正社員の割合の縮小こそがフランチャイズ店の割合を高めることの目的なのだ。つまり、従業員の報酬を充実させるよりも人件費削減や正社員の割合の縮小に注力してしまっているのだ。「企業は人だ」というのであれば、企業は従業員が立派な人になるために育成をしなければならない。そのことと人件費削減や正社員の割合の縮小に注力することとは両立するのだろうか。


また、当社は国内での黒字化がままならない中で海外展開を進めた。その海外第一号店は何と上海なのだ。今はPM2.5の問題が深刻であるのにもかかわらず、K社長はシナ進出にこだわり続け、それを来月実現させようとしている。シナ進出に対しては社内外から不安の声が上がっているが、K社長はそんな声に耳を傾けず「日本政府が両国の関係を改善してくれると期待している」とのん気に言い放った。


いかかであろう、当社の経営姿勢は。これでは、矛盾と欺瞞に満ちていると言われても仕方あるまい。ちなみに、当社と業務提携を結んでいた飲食業者が先日倒産したが、これが当社に与える影響についてK社長は「業務提携先には、食材を卸していただけだから、当社の業績に全く影響はない」と言っていた。これはあまりにも能天気すぎるし、危機感がないのみではなく、虚偽内容を流しているに等しい。当社の存続自体が危うくなる日は近いと懸念される。