●結婚についての和歌のやりとり
→藤原久須麻呂は自分の息子と大伴家持の娘を結婚させようとした。
786 大伴家持
春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも
→娘を梅の花に喩えている。
788 大伴家持
うら若み 花は咲きかたき 梅を植ゑて 人の言繁み 思ひぞ我がする
792 藤原久須麻呂
春雨を 待つとにしあらし 我がやどの 若木の梅を いまだふふめり
→私の家の梅の木も、同じくまだ蕾です。つまり、家持に対して「分かりました。待ちましょう」。と言っていると思われる。
●その他梅について詠まれた歌。
398 藤原朝臣八束(ふじはらのあそんやつか)
妹が家に 咲きたる梅の いつもいつも なりなむ時に 事は定めむ
→梅の実を結ぶ時に結婚を決めましょう。
→花が咲く梅は実を結ばないことから、叶わぬ結婚なのかも知れない。
→女性と見せかけて、そうではなく政治の話をしているかも知れない。つまり、表面上は進んでいるように見えていることも、実際は進みようがないと暗示している可能性がある。
399 藤原朝臣八束(ふじはらのあそんやつか)
妹が家に 咲きたる花の 梅の花 実にしなりなば かもかくもせむ
→実を結ぶのなら、事を進めましょう。
→花が咲く梅は実を結ばない。つまり、事を進める気がないのかも知れない。
400 大伴駿河麻呂
梅の花 咲きて散りぬと 人は言へど 我が標結(しめゆ)ひし 枝にあらめやも
→意中の女性を梅の花に喩えている?
→誰がなんと言おうとも、私のものだと言っている。
453 大伴旅人
我妹子(わぎもこ)が 植ゑし梅の木 見るごとに 心咽せつつ 涙し流る
→亡くなった奥さんのことを思い出している。