帰田賦 張衡

→三国志動乱が始まる前、宦官による政治腐敗に耐えられず帰郷した話。張衡は不正も厳しく取り締まるような剛直な人だった。

 

遊都邑以永久,無明略以佐時。徒臨川以羨魚,俟河清乎未期。

→長い間都に住んでおり、世を良くするための十分な戦略を持っていません。川沿いの魚を羨ましがり、黄河がいつ清らかになるのか分かりません。

 

感蔡子之慷慨,從唐生以決疑。諒天道之微昧,追漁父以同嬉。超埃塵以遐逝,與世事乎長辭。

→野望を実現できないと思った蔡沢は、唐挙の占いによって、迷うことはなくなりましたが、人の運命は実に予測不可能なものです。漁夫を探し求めて、山と川で楽しみを共に分かち合いたいものです。この世の中から抜け出して、遥か彼方に行くことで、俗事との縁を永遠に断ちます。

 

於是仲春令月,時和氣清;原隰鬱茂,百草滋榮。

→今は春も半ばの月です。時は和やかで、空気は清らかで、丘や湿地にたくさんの百草が繁り咲いています。

 

王雎鼓翼,倉庚哀鳴;交頸頡頏,關關嚶嚶。於焉逍遙,聊以娛情。

→鳥は羽ばたき、ひばりは悲しげに鳴いていて、くちばしを近づけ、飛び上がっては、仲良く友を求め、呼び合っています。この地を歩きながら、しばらく楽しみましょう。

 

爾乃龍吟方澤,虎嘯山丘。仰飛纖繳,俯釣長流。觸矢而斃,貪餌吞鉤。落雲間之逸禽,懸淵沉之鯊鰡。

→そうして私は龍のように歌を詠み、山や丘で虎のように平然と大きなことを言い、空を仰いでは、弓矢を放ち、見下ろして川の長い流れに、釣り糸を垂らしてみました。鳥は矢にあたって倒れ、魚は欲ゆえに身を滅ぼします。雲の間を飛ぶ雁も矢にあたり落ちて行き、深い淵にいるイササやボラも釣り上げられてしまいました。

 

於時曜靈俄景,繼以望舒。極般遊之至樂,雖日夕而忘劬。感老氏之遺誡,將回駕乎蓬廬。

→そうすると、だんだん日は西に傾いており、心ゆくまで遊び、楽しんだので、夕方になっても疲れていません。しかし、狩を諌めた老子の遺訓を思い出し、天子が乗る車を元の場所に帰します。

 

彈五絃之妙指,詠周、孔之圖書。揮翰墨以奮藻,陳三皇之軌模。苟縱心於物外,安知榮辱之所如。

→素晴らしい五弦の調べを奏でて、周公や孔子の書を唱えて、筆を持っては詩を綴らせ、三皇の功業を書き連ねます。とらわれない境地に心を解き放てば、この世の誉れも恥も重要なことではありません。

 

⭐︎ポイント

川沿いの魚→宦官

黄河が清らかでない→政治腐敗

漁夫→不正を排除する人

狩りをする場面→宦官など汚職した人物を成敗する。

張衡は清廉潔白な人だったことが分かる。