歌詠み会にて、会員様から頂いたお題が「浦島太郎」でしたので、浦島太郎のお話をネットで調べてみました。

 

私の知っていた浦島太郎のお話は、おそらく明治時代以降に現代版として広まったものでした。簡単にご説明しますと、「浦島太郎」という若い青年が、海でいじめられている亀を助けました。助けてもらったお礼として、竜宮城に連れて行き、みんなで楽しく過ごしました。浦島太郎は帰るときに、玉手箱を渡されました。絶対に開けてはいけない!と言われたにも関わらず、開けてしまうとむくむくと白い煙が立ち、おじいさんになってしまったというお話です。

 

しかし、よくよく調べてみると室町時代に書かれた御伽草子が原典である可能性があり(諸説あります)、お話の内容が全くの別物であることが分かりました。

 

浦島太郎は、父母を魚釣りをすることで養っていました。ある日亀を釣ってしまいましたが、亀は万年生きる縁起の良い生き物なので海に返してあげました。そうすると翌日1人で船に乗っている女性を見かけ、なんだかおかしいなと思い近づくと、その女性は迷ってしまったのだと泣いていたのです。かわいそうに思った浦島太郎はお家まで送ってあげようと思い、10日かけて彼女をお家まで送り届けました。するとその女性が、「これも縁ですから、夫婦になりましょう」。と告げ、結婚することになりました。そこの場所は自然豊かで季節の花々が美しい、とても素敵な場所でした。そこで3年ほど過ごした後、両親のことが気にかかり、実家に帰らせてほしいと言いました。その女性は涙を流しながら、「出会いがあれば別れがあるのは当然のことですね。夫婦の縁が深ければ、二世の縁がありますから、またいつかお会い出来るでしょう。実はあの時救ってもらった亀です」。と自分の正体を明かします。そして玉手箱を渡し、「決して開けてはいけません」と言います。そうしてお互いに名残惜しくも別れ、実家に戻ります。島に戻るとそこは荒れ野になっており、大変驚き、近くにいたおじいさんに「浦島と言う人を知りませんか」。と尋ねます。そうするとその人は700年前に亡くなっており、お墓になら連れて行ってあげるよと言い、連れて行ってくれました。悲しんだ浦島太郎は、もう玉手箱を開けてしまおうと思い、開けてしまうのです。そうすると白い煙がむくむくと立ち、おじいさんになりました。実は亀が浦島太郎の年月をその玉手箱に閉じ込めておいてくれたのです。そうして浦島太郎は鶴になり、亀とともに明神になり、人々を守る存在になったと言うお話です。

 

明治時代以降のお話は、約束を破ってはいけない。みたいな教訓のようなものでした。しかし室町時代のお話は全くそうではありません。

 

このお話はすごい!!と思いました。これは人間の悟りの境地までをメタファーを用いて表現している作品だと思います。心理学や脳科学の用語をお借りするならば、「亀」は無意識や潜在意識で、「浦島太郎」は意識、顕在意識のことだなと思いました。「玉手箱」が、意識と無意識を結ぶ接点の役割で、人間の生活における「呼吸」的な存在だと思いました。

 

このお話を原文で、しっかりと読んでみると聖書のような抽象度の高さを感じました。ストーリー自体もかなり高度ですが、言葉(音)の響きもかなり工夫されている作品だと思います。簡単に理解できるようなものではないので、何度も何度も読んで理解を深めていきたいと思います。

 

この作品を読んで、宝船のことを思い出しました。その船には七福神や八仙、多くの宝物が乗っており、その絵の裏にはある短歌が書いてあります。

 

長き夜の 遠の睡りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな (読み人知らず)

なかきよの とおのねむりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな

*上から読んでも下から読んでも同じ、回文になっています。

 

この歌は、浦島太郎のお話とも通ずるものがあると思いました。

 

今日も読んでくださりありがとうございました。

 

「万歌の会」 会長 太三太