今日は太宰府に縁のある有名歌人のひとりである「大伴旅人」についてご紹介したいと思います。

 

日本人にとって馴染み深い「令和」という元号は、万葉集の梅花の歌32首の序文から選ばれました。これらの歌は太宰府の帥である大伴旅人が主催した宴で詠まれたものです。

 

初春の月にして 清淑く風らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす  

 

彼の歌風は純粋さと言いますか、歯に衣着せぬストレートな表現が多いような感じがします。和歌の世界では珍しいタイプの方と言えるでしょう。現代の日本人もそうだと思いますが、空気を読み、直接的ではなく間接的に話す方が多いのではないでしょうか。特に京都の方では、そのような表現がよく使われているのではないかと思います。例えば、隣人のピアノの音がうるさい場合、「ピアノ上達されましたね」。といった表現です。これは否定的なことを肯定的に変え、言いたいことを暗に含む非常に抽象度の高い表現方法だと思います。

 

そのようなことを踏まえ、彼の歌を拝読すると、当時としてもなかなかはっきり物申す方だったのかな。なんて想像してしまいます。自分の気持ちをストレートに表現できるのは、ある種とても素晴らしいことだと思います。大人になるとなかなか人前で泣けないものですが、泣いてしまえばスッキリしますよね。何か言いたいことをためらったり、我慢したりせず素直に表現する。これは人生において大切なことではないでしょうか。故郷を離れた寂しい気持ちや、大切な方(奥様)を亡くされた悲しみ。このような気持ちは、現代の私たちにも通ずる部分があるのではないかと思います。

 

また、彼はお酒好きとしても有名ですね。お酒の歌を拝読していると、読んでいるこちらまでがお酒を飲んでいる気分になります。恐れ多くも偉大なる歌人のお一人でございますが、なんだか私の友達なのではないだろうか!?なんて思ってしまいます。人生という旅路の中で、彼のようにお酒を飲んで楽しく過ごすのも良い方法かもしれません。お酒を飲むことで、体の緊張が緩み、リラックスしている時に歌が降ってくることもあるかもしれませんね。

 

では最後に私の好きな大伴旅人の歌をご紹介したいと思います。

あな醜 賢(さか)しらをすと 酒飲まぬ 人をよく見ば 猿にかも似む

 

なんだかクスッと笑ってしまうような楽しい歌です。色々な苦しいことがあり、悲痛にくれながらも、このような面白い歌を残してくださったことに感謝申し上げます。

 

「万歌の会」会長 太三太