「道を教えてください」

夕方の路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女だった。
足が異様に細くバランスが取れないのかぷるぷると震えている。
同じように手も木の枝のように細く、真っ赤なハンドバッグをぶら下げている。
はあはぁと何度もため息なのか呼吸なのか分からない息を吐き、 僕に聞いているはずなのに視線はまったく違う方向を向いている。

「あ…あの。どちらへ…?」
やばい人っぽい。
僕は早く答えて立ち去ろうと思った。

「春日谷町1-19-4-201」
「・・・・・・」

そこは僕のアパートの住所だった。
部屋番号までぴったりと合っていた。
「し、知りません」
僕は関わり合いたくないと本気で思い、そう答えた。
すると女はゴキッと腰が折れ曲がるほどにおじぎをして、 またふらふらと路地の奥へと消えていった。
「超こぇえ…」
僕はわざわざ遠回りをしてアパートに戻ってきた。
部屋のカギが掛かっているのを確認し、さっさと開ける。


「道を教えてください」
真っ暗な部屋の中から声がした。

「相談」

うちの職場の事務の女の子がストーカーっぽい同僚に困ってるらしいです。
人づてに聞いただけなんでハッキリとはわからないんですが
ストーカーは営業課の26歳の社員らしく、
昼食時に勝手に隣に座ったり、帰りに駅の改札で偶然を装って待ち伏せされたりするそうです。
それに教えてもいないのに携帯の番号やメルアドまで知られてしまったようです。

僕も心配なので相談に乗ろうとお昼ご飯を一緒に食べようとしたり、
一緒に帰るために駅の改札で待ってみたりしてるのですが、
彼女も遠慮してるのか、中々本心を語ってくれません。

直接は言いにくいのかと、人づてに電話番号やメルアドも聞いたんですが、
そっけない返事しかこないです。

本当に心配です。

何とか力になりたいんですが、どうすればいいでしょう?

(営業職 社員のAさん)





「ひどい男の女」

前の勤務先の同僚が俺の職場に立ち寄った。
お互いに既婚者だが俺らはよく飲みに行ったり遊んだ仲だった。
久しぶりに合ったので近所の茶店に行った。

「最近どーよ、悪いことしてる?」

すると彼は笑いながら始めた話はこうだ。

一年程前から10歳下の愛人がいてクリスマスは22・23・24・25日と彼女のマンション
で一緒に過ごした。

当然自宅に帰らず家庭はメチャクチャ。
しかし、小学生の娘がいるので可愛そうに思い25日の19時頃家に帰ることにした。
それを止めようと泣き叫び懇願する女。

最後は喧嘩となり、ようやく女を振り切り11階からエレベーターに乗った。

そして笑いながら更に話を続けた。


「マンションのエントランス出て、外に行ったらそいつ居たよ」




ではこの辺で!