(279)韓国の国定教科書 | 江戸老人のブログ

江戸老人のブログ

この国がいかに素晴らしいか、江戸から語ります。





(279)韓国の国定教科書

 


 韓国の国定教科書は嘘ばかり書いてあるという。言葉として強すぎるならば内容を故意に不正確に記している。およそ近代文明の恩恵に浴したことがある人々ならば、すぐに気付くはずの、事実と違ったことが堂々と書いてある。いや、書き手も気づいてはいるのだろうが、この程度で大丈夫と考えたのかもしれない。最近読んだもののうち、韓国の鉄道について書いた歴史教科書の部分を取り上げてみたい。



さて、教科書には
「日帝の植民地政策は韓国の自主的近代化と発展に莫大な支障をきたした。あらゆる政策が日帝の植民地統治のための手段として計画され執行され、施設の設備投資もやはり同じ目的で行われたために、わが民族には何も役にも立たなかった」
 

 これは韓国のすべての高校で1996年(平成八)から2001年(平成十三)まで使用された国家歴史教科書『国史』の一節である。日本統治下の朝鮮半島における「施設の設備投資」すなわちインフラ整備を、「わが民族には何の役にも立たなかった」と全否定するこの見解は、日本側でしばしば言及される「日本は良いこともした」という「も」を意識した反論という(黒田勝弘著『韓国人の歴史観』平成十一年・文春新書)。

 現在の『国史』は2002年(平成十四)に改訂されたものだが、日本時代の朝鮮工業化政策への評価などに同様の施行が受け継がれている。
 
 そのインフラ整備の代表例としてしばしば挙げられるのが鉄道である。航空機が発達しておらず、自動車社会でもなかった当時、鉄道の持つ社会的意義は今日に比べてはるかに大きかった。その鉄道の持つ社会的意義は今日に比べて遥かに大きかった。その鉄道の果たした役割を分析することは、日本統治下の朝鮮半島におけるインフラ整備全体を考察する上で大きな意味があるだろう。
 

 では、日本統治下の朝鮮半島における鉄道は、本当に韓国・朝鮮人にとって「なにも役に立たなかった」のだろうか。



鉄道が持つ多面性
 鉄道の最初の頃であれば、日本の軍事的意図のもとに建設されることもあっただろう。京城(現ソウル)と新義州をむすぶ京義線などは、日露戦争当時、中国大陸へ直通する軍用鉄道として速成で整備された事実がある。

 その一方で、日本による幹線ルート決定においては、各地方の経済や競合路線の防止といった点が重視された。必ずしも全面的に軍事用との考え方はとられていない。(朝鮮鉄道史第一巻)若干の遠回りをしても人口が多い地域を結ぼうとするのは、内地から大陸への直通機能を持たせつつ、朝鮮内部の経済的利益をも念頭に置いた考え方である。競合線の防止は、初期の幹線鉄道建設期には朝鮮での権益を独占しようとする意図が日本側にはなくて、朝鮮の鉄道が「徹頭徹尾日帝の植民統治の手段として計画され」ていたわけではないことを示している。
 

 戦前の朝鮮には軍事的色彩の薄い地方鉄道や観光鉄道も多数存在した。大塔戦争末期、資材を転用すべくそれらの鉄道が多数運行休止になったことは、「不要不急」とみなされる路線が多かったことを明快にさせる。

 そんなことより、鉄道というものは本質的に多目的な施設である。まして欧米列強による帝国主義全盛の当時であれば、鉄道が軍事的色彩を帯びるのは当然のことで、わざわざことあげするのは滑稽である。現在の南・北朝鮮であっても鉄道は軍事機能を持っている。南北の軍事的対立があるのだからごく当たり前の話である。
 

 日本による朝鮮の鉄道建設が軍事的色彩を帯びていたことがあった、ことだけを取り上げて、直ちに存在価値を全否定するかのような考え方は、あまりに幼児的である。鉄道の本質と時代背景、実際の建設経緯、および韓国・北朝鮮が今も自国の鉄道に軍事的機能を持たせている事実を無視するものではないか。


典型的[収奪]鉄道との違い
 植民地の鉄道を批判する場合、 軍事用と決めつけるのと並んで強調されるのが、「経済的収奪手段として機能していた」との説が使われる。高成鳳著『植民地鉄道と民衆生活―朝鮮・台湾・中国東北』(平成十一年・法政大学出版局)は、日本が造った鉄道の機能は「軍隊移動や『産業開発』に名を借りた資源収奪の円滑化」をあげている。
 

 帝国主義全盛期に列強が植民地に建設した鉄道は、生産地での収穫を港から本国や輸出先へ運び出すことのみを目的としていた。たとえば、南アフリカ諸国(大半が旧フランス領)の鉄道は、多くが内陸部とギニア湾沿岸を結ぶだけであり、並行する各線を結ぶ路線は皆無に等しい。路線の幅は(軌間)もバラバラであり、インドなどでは現在も直通運行の弊害となっている。大半の路線を標準軌で統一し朝鮮内の相互輸送を可能にした当時の植民地の鉄道としては世界的に見て異例である。
 

 仮に当時の朝鮮人にとって「何も役に立たなかった」のであれば日本統治終了時に、直ちに放棄、廃止されてもおかしくない。実際には終戦後も大半が運行を続け、韓国・北朝鮮の双方にあるおよそ八千キロの鉄道のうち、日本時代の開通路線は全体の七割を超え、今も国内交通の重要なネットワークとして機能している。
 

 その他いろいろあるが、少しでも丁寧に読めば、複数の事実から虚偽とわかるもので、このような内容で教科書として役割を果たしているとすれば、近代合理性に触れたことがないためと思われる。次世代の子供たちに事実に基ずく情報を与え、合理性を身に着けることがなければ国家としての未来が無くなるだろう
                                  以上


『韓国・北朝鮮の嘘を見破る』 鄭大均 古田博司 著 文春文庫