
秋刀魚の秋
千葉県銚子港
で見た秋刀魚の水揚げ、昼ごろと記憶しているが、喫水(きっすい)が低い漁船が港に入ってくる。カモメが騒ぎ出す。その後大騒動となり、6トンほどの、ダンプトラック
で、次々と運び出されていく。トラックの荷台は裸状態、ドサドサと秋刀魚が落下する。心配することもなくカモメと思われる海鳥がサット空中へ持ち去る。
港の裏に鮮魚店が軒を並べ、みやげ物として販売、店によって食べさせている。入りたての秋刀魚、バケツ一杯が千円ほどと記憶している。「刺身を食っていかないか?」と店の方にいわれたが、時間がなく残念だった。秋刀魚の刺身は一時間、二時間の話で、それ以上は怖いから駄目といわれた。
バタバタと団扇で扇ぎ、余分な脂を落とすのが旨いのだが、東京のマンション暮らしだと、七輪炭火で焼くのは難しい。
嘘のようなホントのはなしだが、今から20年ほど前、東京の大団地、高島平で出火報があり、確かあの団地は20階近くあるから、「第○○出動」とかで消防車が多数駆けつけた。くだんの団地のベランダから紫煙がモウモウと立ち昇るのが確認された。消防士が内部階段を駆け登り、内側からベランダに顔を出すと、この家のお婆さんらしき婦人が、秋刀魚をバタバタと焼いており、振り返って消防士に「何か用か?」といった。消防士は「いえ、別に・・・」と、そのまま引き上げたという。その後叱られることもなかった。遠くからは火事と見え、通報は当然だろうし、「ベランダで秋刀魚を焼くな」ともいえまい。季節感あふれるいい話で、話題となり記憶している。
消防庁
の担当係に電話して尋ねたところ、消防庁
としては禁止はしていない。マンション管理規約で禁止されていれば駄目だが、もし可能な場合は、あらかじめ管轄消防署へ「これから秋刀魚を焼く」と情報提供していただければ、通報があっても確認で済むからありがたい、との話だった。
それよりも、ご老人が直火を使うときに袖口などから衣服に着火し、酷いときには死亡したケースもあり、筆者は名を伏すが、ある有名な老け役の女優がこの事故で亡くなっており、そっちが心配とのこと。
また家庭で使うグリルは、よく掃除していないと脂がたまり着火原因となるそうだ。結論として「秋刀魚を焼くな」という規則、法令、法律はないが、常識的にお願いしたい」とのお話。まさか環状七号線ではやらないだろうが、道路で秋刀魚を焼くときは、警察の「道路使用許可」が必要になる。「うーん、現実としては規模にもよるし・・・」とのお話。「なるほどなぁ」と思い今度は東京都建築課で教えてもらったら、「そういう法律はありませんけど、常識の問題で、都庁としては法律以前の問題、としかお答えのしようがない、クサヤを焼く人が居ると迷惑なんですよね・・・」と笑っておられた。
なお、東京都内だと、一戸建てでもお隣から苦情が来たりする。狭いところに大勢が住み暮らす都内の生活は、江戸裏長屋のごときか?と感じた。裏長屋だと、自分のところだけ秋刀魚を食う訳にはいかず、あちこちに配り、翌日、他のおすそ分けが来たはずだ。
秋刀魚に関する面白そうな話を探していたら、末広恭雄先生が書かれた『魚の博物誌』から、次の話が出てきたがどうだろう。
落語『目黒のサンマ』は事実かも?
落語に目黒のサンマというのがある。鷹狩に出かけた将軍、腹が減ってしょうがない。すると茶屋があり、そこで食事を所望した。急な事で何もない。自分が食べるはずのサンマを焼き、炊き立てご飯と一緒にだしたら「うまい!」と。で、お城へ帰ってからサンマを希望するのだが、違った調理しか出ず「サンマは目黒に限る」という落ちで終わる。
この話は事実じゃないか?という話がある。昭和29年1月25日の毎日新聞に紹介された記事、目黒区中目黒に島村金一さんというサラリーマン
、祖先が茶屋を営んでおり「彦四郎爺さん茶屋」といわれたとか。この茶店に鷹狩の三代将軍徳川家光が訪れ、実際にサンマを食べて感激、あたりの土地をあげるといわれたが、さすがに遠慮した。で、家宝として「将軍休息の図」と「将軍御成之節記録覚(しょうぐんおなりのせつ・きろくおぼえ)」が現在も受け継がれている。新聞記事の終わりに三遊亭円歌師匠が、「ありそうな話だ」とコメント。また江戸歴史研究家の富岡兵蔵氏が「面白い記録だ」と折り紙をつけているところから、目黒のサンマは本当の話らしい。・・・というのでありますが。