【よ】「僕」と「俺」の映画戦争
【よりぬき日記18】
「僕」と「俺」の映画戦争
日曜で映画千円デー、さらに人気映画の公開2日目。
平岡と竹田にとって、映画館に行かない理由がなかった。しいて言うならば、平岡はバイト明けで夜もバイトがある。が、それも朝一で観てその後寝れば大した問題じゃない。
朝8時半頃、二人は家を出た。映画館はデパートの中にある。9時オープンなのだが、チケット売り場が混む可能性も考え、少し早め8時40分頃デパートについた。
が、そこで二人は目を疑った。すでに100人以上の大行列が出来ていたのだ。
二人は焦った。映画開始は9時20分だ。それまでにチケットを購入し、トイレをすませ、座席に着くことが出来るだろうか?
竹田は意を決した。
「他の入口から行こう」
今並んでるのは映画館に一番近い入口だ。ここから入りすぐ横のエレベーターで映画館まで上がるのだが、この人数、エレベーター3台と言えどとてもじゃないが乗り切れない。二往復目にすら乗れる保証はない。だったら、遠回りになるが他の入口から入り、他のエレベーターなりエスカレーターで行った方が早いんじゃないか?という判断だ。
しかし平岡は他の可能性を感じていた。
「この入口だけ10分くらい早く開けてくれるんじゃないか?」
という期待だ。
そこで、平岡と竹田は二手に分かれて早く並んだ方が買う作戦に出た。
《ここからは2つの視点でお楽しみ下さい。》
~平岡視点~
僕は期待していた。
この入口にだけこんなに並ぶのは、きっとみんな知っているのだ。
「この入口は映画館のために早めに開けてくれることを!」
が、真冬の空の下、行列は進まない、扉は開かない。
そして僕の期待は、9時きっかりに開く扉とともに閉ざされたのだった。
行儀よく一歩一歩進む列の中、僕もおとなしく歩く。エレベーター前につくと2台のエレベーターはもう上の階に、もう一台は満員状態。無理に乗り込めば乗れたかもしれないが、自分の体重も考慮に入れ、次を待つことにした。
こうなったら、なるようになれ、だ。
ふとエスカレーターを見るとそちらも混雑していた。エレベーターを諦めた人や他の入口から攻めた人達が殺到しているのだろう。相方もあの中にいるのだろうか。
エレベーターが降りてきたので、先頭で入る。が奥まで入らず、あくまでも《「開ける」ボタンを押すためですよヅラ》でドア付近をキープした。ここの方が扉が開いたとき早く出られる。細やかな抵抗だ。
しかし、実際エレベーターの扉が開いたとき、僕は急ぐ気力を奪われた。
下の行列の倍近い大行列…。室内だから多く見えるだけなのかもしれないが、僕の戦意を喪失させるのに充分な人込みだった。
それでも一応は並ぶ。
ここで並ばなければもっと酷い事になる。
「相方はもう並んでるだろうか?」「次の回にした方がいいのだろうか?」「平愛梨の演技は大丈夫だろうか?」
そんなことを考えていると、係員が僕付近の人間に声を掛けた。
「すみません、ここから横にお並び下さい!」
僕は素直に移動し列と直角にならんだ。
が、誰もついてこない!!しかも縦の列は順調に伸びて行く。
これはヒドい。僕が横入りしようとしてる人みたいだ。
そんなとき僕の携帯電話が鳴った。
~竹田視点~
俺は後悔していた。
こんなことになるなら、昨日のうちにチケットを買っておくべきだった。まさかこんなにも並ぶとは…。
しかし、他の入口から攻めるというのは我ながらいい発想だ。
相方のデブは動くのがつらいのか、列から動こうとしなかったが、ある意味好都合だ。急いでるとき、あいつは足手まといになる。
が、しかし、正面入口にまわったとき俺はさらに強く「昨日チケットを買わなかったこと」を後悔することになった。
まさか、こっちにもこんな行列が…
どうする?ここに並ぶか?
いや!もう一つの入口だ!!
第3の入口に急いだ。ほぼ裏口に近い入口だ。ここまで行列が出来ているようならもうお手上げだ。
俺は祈る気持ちで最後の角を曲がった…。
いない!!
そこには数人待っているだけだった。
しかし喜ぶのはまだ早い。戦いは9時をまわってからだ。
9時に扉が開いたら、とりあえず近くのエレベーターに乗り込む。そこからチケット売り場は遠い。
エレベーターを降りた瞬間からが本当の勝負なのだ。
おそらくどう足掻いても、デブのいる方の先頭グループには勝てない。しかし2往復目のエレベーターには勝たなくてはならない。
そこに勝てれば、20人乗りのエレベーター3台だから60番目近くになる。チケット窓口が5つ開くとして、一人1分なら約12分でチケットが買える計算だ。
そうなるためにも、急がねばならない。
9時ピッタリ、扉が開いた。速足でエレベーターに乗り込み、エレベーターから降りて再び速足。
売り場につくともう行列が出来ていたが、なんとかなりそうな人数だった。
デブはもういるのだろうか?見渡してみたが見つからない。
しばらくするとエレベーターが大量の人間を吐き出した。注意深く見てみるがデブは出てこない。あいつはどこに行ったのか…?
かなりの大行列になったあと、ふと後ろを見ると列からはみ出し一人変なとこに突っ立っている黄色いパーカー男が目に入った。デブだ!!相方のデブだ!!
どんだけ遅いんだよ。しかも何故列からはみ出ている!!
俺は携帯電話を取り出し、デブの番号をコールした。
と、まあね。そんなこんなで『20世紀少年・第二章』観てきた訳ですけど、映画の感想書くつもりだったんですが、映画観る前のことで調子に乗りすぎちゃってそれどころじゃなくなっちゃいました。
~おわり~
この日記は2月1日に書いたものです。
「20世紀少年」は、原作といかに似てるかという楽しみ方が全てな気がします。で、小泉響子役の木南晴夏さんが素晴らしすぎます。
「僕」と「俺」の映画戦争
日曜で映画千円デー、さらに人気映画の公開2日目。
平岡と竹田にとって、映画館に行かない理由がなかった。しいて言うならば、平岡はバイト明けで夜もバイトがある。が、それも朝一で観てその後寝れば大した問題じゃない。
朝8時半頃、二人は家を出た。映画館はデパートの中にある。9時オープンなのだが、チケット売り場が混む可能性も考え、少し早め8時40分頃デパートについた。
が、そこで二人は目を疑った。すでに100人以上の大行列が出来ていたのだ。
二人は焦った。映画開始は9時20分だ。それまでにチケットを購入し、トイレをすませ、座席に着くことが出来るだろうか?
竹田は意を決した。
「他の入口から行こう」
今並んでるのは映画館に一番近い入口だ。ここから入りすぐ横のエレベーターで映画館まで上がるのだが、この人数、エレベーター3台と言えどとてもじゃないが乗り切れない。二往復目にすら乗れる保証はない。だったら、遠回りになるが他の入口から入り、他のエレベーターなりエスカレーターで行った方が早いんじゃないか?という判断だ。
しかし平岡は他の可能性を感じていた。
「この入口だけ10分くらい早く開けてくれるんじゃないか?」
という期待だ。
そこで、平岡と竹田は二手に分かれて早く並んだ方が買う作戦に出た。
《ここからは2つの視点でお楽しみ下さい。》
~平岡視点~
僕は期待していた。
この入口にだけこんなに並ぶのは、きっとみんな知っているのだ。
「この入口は映画館のために早めに開けてくれることを!」
が、真冬の空の下、行列は進まない、扉は開かない。
そして僕の期待は、9時きっかりに開く扉とともに閉ざされたのだった。
行儀よく一歩一歩進む列の中、僕もおとなしく歩く。エレベーター前につくと2台のエレベーターはもう上の階に、もう一台は満員状態。無理に乗り込めば乗れたかもしれないが、自分の体重も考慮に入れ、次を待つことにした。
こうなったら、なるようになれ、だ。
ふとエスカレーターを見るとそちらも混雑していた。エレベーターを諦めた人や他の入口から攻めた人達が殺到しているのだろう。相方もあの中にいるのだろうか。
エレベーターが降りてきたので、先頭で入る。が奥まで入らず、あくまでも《「開ける」ボタンを押すためですよヅラ》でドア付近をキープした。ここの方が扉が開いたとき早く出られる。細やかな抵抗だ。
しかし、実際エレベーターの扉が開いたとき、僕は急ぐ気力を奪われた。
下の行列の倍近い大行列…。室内だから多く見えるだけなのかもしれないが、僕の戦意を喪失させるのに充分な人込みだった。
それでも一応は並ぶ。
ここで並ばなければもっと酷い事になる。
「相方はもう並んでるだろうか?」「次の回にした方がいいのだろうか?」「平愛梨の演技は大丈夫だろうか?」
そんなことを考えていると、係員が僕付近の人間に声を掛けた。
「すみません、ここから横にお並び下さい!」
僕は素直に移動し列と直角にならんだ。
が、誰もついてこない!!しかも縦の列は順調に伸びて行く。
これはヒドい。僕が横入りしようとしてる人みたいだ。
そんなとき僕の携帯電話が鳴った。
~竹田視点~
俺は後悔していた。
こんなことになるなら、昨日のうちにチケットを買っておくべきだった。まさかこんなにも並ぶとは…。
しかし、他の入口から攻めるというのは我ながらいい発想だ。
相方のデブは動くのがつらいのか、列から動こうとしなかったが、ある意味好都合だ。急いでるとき、あいつは足手まといになる。
が、しかし、正面入口にまわったとき俺はさらに強く「昨日チケットを買わなかったこと」を後悔することになった。
まさか、こっちにもこんな行列が…
どうする?ここに並ぶか?
いや!もう一つの入口だ!!
第3の入口に急いだ。ほぼ裏口に近い入口だ。ここまで行列が出来ているようならもうお手上げだ。
俺は祈る気持ちで最後の角を曲がった…。
いない!!
そこには数人待っているだけだった。
しかし喜ぶのはまだ早い。戦いは9時をまわってからだ。
9時に扉が開いたら、とりあえず近くのエレベーターに乗り込む。そこからチケット売り場は遠い。
エレベーターを降りた瞬間からが本当の勝負なのだ。
おそらくどう足掻いても、デブのいる方の先頭グループには勝てない。しかし2往復目のエレベーターには勝たなくてはならない。
そこに勝てれば、20人乗りのエレベーター3台だから60番目近くになる。チケット窓口が5つ開くとして、一人1分なら約12分でチケットが買える計算だ。
そうなるためにも、急がねばならない。
9時ピッタリ、扉が開いた。速足でエレベーターに乗り込み、エレベーターから降りて再び速足。
売り場につくともう行列が出来ていたが、なんとかなりそうな人数だった。
デブはもういるのだろうか?見渡してみたが見つからない。
しばらくするとエレベーターが大量の人間を吐き出した。注意深く見てみるがデブは出てこない。あいつはどこに行ったのか…?
かなりの大行列になったあと、ふと後ろを見ると列からはみ出し一人変なとこに突っ立っている黄色いパーカー男が目に入った。デブだ!!相方のデブだ!!
どんだけ遅いんだよ。しかも何故列からはみ出ている!!
俺は携帯電話を取り出し、デブの番号をコールした。
と、まあね。そんなこんなで『20世紀少年・第二章』観てきた訳ですけど、映画の感想書くつもりだったんですが、映画観る前のことで調子に乗りすぎちゃってそれどころじゃなくなっちゃいました。
~おわり~
この日記は2月1日に書いたものです。
「20世紀少年」は、原作といかに似てるかという楽しみ方が全てな気がします。で、小泉響子役の木南晴夏さんが素晴らしすぎます。