【よ】自己紹介
【よりぬき日記・2】
自己紹介
2008/03/21
我が事務所プライムが月に一度「プライムニュース」という新聞もどきを発行しているという事実をご存じの方は少ないと思います。
無理もありません。3ヵ月ほど前から始まった新しい企画ですし、なによりテレビやお笑いの業界関係者に配っているものだからです。
で、そのプライムニュースの中に一組ずつ芸人が自己紹介文を載せるコーナーがありまして、今月は我々マイるどミルドの番でした。
せっかく頑張って書いたのに、セーターを肩から掛けてるような業界人にしか読んでもらえないかと思うと寂しいので、今日はその自己紹介文を載せたいと思います。
これを読んでマイるどミルドを知らない人も知ってる人もよりマイるどミルドを知っていただきたく思います。
【地下鉄の階段を上がると大通りに出る。鳴海宏介はポケットのメモを確認すると、指示通りに最初の信号を右に曲がり、二分程歩き待ち合わせの店を見つけた。
店に入るとすぐに一人コーヒーを啜る鎌田の姿を確認出来た。約束の時間より15分も早いのに相変わらずな奴だ、と鳴海は思わずニヤついてしまった。近付くと鎌田は少し驚いいた顔を浮かべコーヒーを置き、立ち上がりながら
「まだ15分前ですよ。相変わらずですね」
と笑った。
「あの事件、もう終わったと思ってました」
鎌田は鳴海がイスに座るのを確認したあと、自らも座り直し、そしてそう切り出した。
鳴海はウェイターに、メニューのコーヒーを指差し口を開いた。
「確かにもう犯人は捕まったからな。でもどうしても気になるんだ…あの言葉が」
3ヵ月前、新宿で一人の会社員が殺害された。
その一週間後に「自分が殺した」という男が出頭し、凶器のナイフがその男の自宅から発見、現場に残された血液、足跡等から、警察はその男を逮捕した。
一見なんの変哲もない事件だが、事件の第一発見者が聞いたという被害者の最後の言葉が未だに鳴海の頭から離れない。
《マイルドミルドにやられた》
「鳴海さんに言われた通り《マイルドミルド》、調べてみましたが、その様な犯罪組織は見つかりませんでした」
「そうか…」
発見者の聞きまちがいかもしれないし、そもそも犯人はもう捕まっているのだから気にすることは無いかもしれない。だが、鳴海の刑事としての勘がそれを許さないのだ。
しばらく沈黙が続いたあと、鎌田は白い紙とペンを取り出し、ゆっくりと口を開いた。
「全然関係ないかもしれません。ただ…」
鎌田の話し振りがあまりに緊張感に満ちていたので、鳴海も思わず身構えた。鎌田は白い紙に平仮名で「るど」と書いた。
「《るど》だけ平仮名にします。つまり…」
《マイるどミルド》
「プライムという事務所に、こんな名前のお笑いコンビがいるそうです」
「お笑いコンビっていうと漫才とかやるやつか?」
「えぇ、ただ彼らの場合はコントばかりやっていたらしいです。ヤセ竹田とデブの平岡のコンビで、ギャングコントや日常を少しずらしたコントが好きなようです。
ちなみに竹田の方はかなりのバスケ好き、夢はダンクシュートを決めることらしく、そのためにジム通いをしてるらしいです。また妖怪にもかなり詳しいとのこと。
平岡の方はデブのくせに散歩好きでいくらでも歩けると自負しています。趣味は閉店間際のスーパーで半額弁当を買うことのようです」
「事件とは関係なさそうだな」
鳴海は運ばれてきたコーヒーを一口だけ飲み、窓の外を見た。いつの間にか強い雨が降っていた。】
自己紹介でもなんでもねーだろ!的なことを言われるかもしれませんが、こういうことをしたがるのがマイるどミルドということでよろしくお願いします。
(この日記は2008年3月21日に書かれたものです)
元々は設定を未来にして、過去に「2000年代初頭にマイるどミルドというコンビがいた」という話にしようとしたんですが、未来を表現することに懲りすぎて何が書きたいのかわからない文になってしまい、結果この形に落ち着きました。
そんなマイるどミルドをよろしくお願いします。
自己紹介
2008/03/21
我が事務所プライムが月に一度「プライムニュース」という新聞もどきを発行しているという事実をご存じの方は少ないと思います。
無理もありません。3ヵ月ほど前から始まった新しい企画ですし、なによりテレビやお笑いの業界関係者に配っているものだからです。
で、そのプライムニュースの中に一組ずつ芸人が自己紹介文を載せるコーナーがありまして、今月は我々マイるどミルドの番でした。
せっかく頑張って書いたのに、セーターを肩から掛けてるような業界人にしか読んでもらえないかと思うと寂しいので、今日はその自己紹介文を載せたいと思います。
これを読んでマイるどミルドを知らない人も知ってる人もよりマイるどミルドを知っていただきたく思います。
【地下鉄の階段を上がると大通りに出る。鳴海宏介はポケットのメモを確認すると、指示通りに最初の信号を右に曲がり、二分程歩き待ち合わせの店を見つけた。
店に入るとすぐに一人コーヒーを啜る鎌田の姿を確認出来た。約束の時間より15分も早いのに相変わらずな奴だ、と鳴海は思わずニヤついてしまった。近付くと鎌田は少し驚いいた顔を浮かべコーヒーを置き、立ち上がりながら
「まだ15分前ですよ。相変わらずですね」
と笑った。
「あの事件、もう終わったと思ってました」
鎌田は鳴海がイスに座るのを確認したあと、自らも座り直し、そしてそう切り出した。
鳴海はウェイターに、メニューのコーヒーを指差し口を開いた。
「確かにもう犯人は捕まったからな。でもどうしても気になるんだ…あの言葉が」
3ヵ月前、新宿で一人の会社員が殺害された。
その一週間後に「自分が殺した」という男が出頭し、凶器のナイフがその男の自宅から発見、現場に残された血液、足跡等から、警察はその男を逮捕した。
一見なんの変哲もない事件だが、事件の第一発見者が聞いたという被害者の最後の言葉が未だに鳴海の頭から離れない。
《マイルドミルドにやられた》
「鳴海さんに言われた通り《マイルドミルド》、調べてみましたが、その様な犯罪組織は見つかりませんでした」
「そうか…」
発見者の聞きまちがいかもしれないし、そもそも犯人はもう捕まっているのだから気にすることは無いかもしれない。だが、鳴海の刑事としての勘がそれを許さないのだ。
しばらく沈黙が続いたあと、鎌田は白い紙とペンを取り出し、ゆっくりと口を開いた。
「全然関係ないかもしれません。ただ…」
鎌田の話し振りがあまりに緊張感に満ちていたので、鳴海も思わず身構えた。鎌田は白い紙に平仮名で「るど」と書いた。
「《るど》だけ平仮名にします。つまり…」
《マイるどミルド》
「プライムという事務所に、こんな名前のお笑いコンビがいるそうです」
「お笑いコンビっていうと漫才とかやるやつか?」
「えぇ、ただ彼らの場合はコントばかりやっていたらしいです。ヤセ竹田とデブの平岡のコンビで、ギャングコントや日常を少しずらしたコントが好きなようです。
ちなみに竹田の方はかなりのバスケ好き、夢はダンクシュートを決めることらしく、そのためにジム通いをしてるらしいです。また妖怪にもかなり詳しいとのこと。
平岡の方はデブのくせに散歩好きでいくらでも歩けると自負しています。趣味は閉店間際のスーパーで半額弁当を買うことのようです」
「事件とは関係なさそうだな」
鳴海は運ばれてきたコーヒーを一口だけ飲み、窓の外を見た。いつの間にか強い雨が降っていた。】
自己紹介でもなんでもねーだろ!的なことを言われるかもしれませんが、こういうことをしたがるのがマイるどミルドということでよろしくお願いします。
(この日記は2008年3月21日に書かれたものです)
元々は設定を未来にして、過去に「2000年代初頭にマイるどミルドというコンビがいた」という話にしようとしたんですが、未来を表現することに懲りすぎて何が書きたいのかわからない文になってしまい、結果この形に落ち着きました。
そんなマイるどミルドをよろしくお願いします。