金融政策と財政政策は景気動向に影響を及ぼす | 経済データ分析

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Ⅰ.はじめに

前回、日銀短観の業況判断指数を分析した。

その際、金融政策と財政政策が、企業の景況判断に強い影響を及ぼす、ということがわかった。

今回は、内閣府発表の景気動向指数を分析する。

それにより、金融政策と財政政策が、景況「判断」だけでなく、「実際の」景気動向にも強い影響を及ぼす、ということを確認する。


「実際の」景気動向をふまえて、景況「判断」をするので、両者は強い相関関係があって当然である。

そのため、金融政策と財政政策も、「実際」「判断」双方と強い相関関係があるはずである。

ということで、改めてその確認をする、ということである。




Ⅱ.分析

1.13年4月~14年3月

日銀は13年4月から、量的・質的金融緩和を開始し、この間マネタリーベースは平均43.7%で拡大した。

また、政府は公共工事(公共工事請負金額)を平均17.4%のペースで増加させた。

こうした金融緩和と財政出動で、景気は回復傾向となった


特に「一致指数」は、文字通り、実際の景気の動きとほぼ一致して動くものである。

グラフを見ると、マネタリーベースの前年同月比と一致指数は連動して動いているのがわかる。

またこの間の両者の相関係数は0.912であり、極めて強い相関関係にある。

つまり、特に金融緩和は景気動向に強い影響を及ぼす可能性がある、ということである。

(相関関係があるからといって、因果関係があるとは限らない。ただし、因果関係がある可能性は十分ある、ということである)


2.14年4月~14年10月

この間、日銀は若干ながら金融緩和のペースを落とした。

また政府も、4月から消費税率を5%から8%に引き上げ、8月以降は公共工事も減らした(供給制約があってそうせざるを得なかった部分もあるだろうが)。

このように、金融緩和縮小と緊縮財政(特に増税)で、景気は悪化傾向となった


グラフを見ると、やはりマネタリーベースの前年同月比の低下に伴い、一致指数も低下している。

両者の相関係数は0.634と若干落ちるが、それでも一定の相関関係にはある。

つまり、金融緩和を縮小しても、景気動向には影響を与える可能性がある、ということである。


ちなみに、こうした景気動向の悪化は、すでに14年1月から兆候が見えていた。

「先行指数」は、実際の景気の動きよりも、半年程度先行して動くものである。

これを見ると、14年1月をピークに、先行指数はそれ以降低下している

実際にも、この時期すでに4月からの消費増税が決まっていたので、多くの人々は「駆け込み需要の反動減や、増税自体による個人消費の減少で、4月以降景気は悪化するだろう」と予測していたはずである。



3.14年11月~

実際の景気の悪化もあり、日銀は10月末に追加の金融緩和を決めた。

また政府も、消費税率10%への引上げについて、17年4月までの延期の方針を打ち出した。

つまり、改めて金融緩和拡大と緊縮財政中断という、景気回復とデフレ脱却につながる方向へと、経済政策を転換した、と言える。


実際、10月時点ですでに若干マネタリーベースの前年同月比は増加ペースが拡大しており、一致指数も再び上向いている。

この傾向がおそらく続くだろうし、そうなれば再び景気は回復していくだろう。


Ⅲ.まとめ

このように、金融政策と財政政策、特に金融政策が、景況「判断」だけでなく、「実際の」景気動向にも強い影響を及ぼす可能性がある、ということがわかった。

そして今は、金融緩和の拡大により、景気回復とデフレ脱却を図るべき時期である。

相関関係の強い金融緩和の拡大を、しっかりと持続的に進めていく必要がある。