『MOTHER マザー』
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣、港岳彦
企画:河村光庸
製作:河村光庸
エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
プロデューサー:佐藤順子
共同プロデューサー:金井隆治、鈴木俊輔、岡本圭三、飯田雅裕
撮影:辻智彦
照明:大久保礼司
録音:高田伸也
美術:大原清孝
衣装:纐纈春樹
ヘアメイク:豊川京子
音楽:岩代太郎
題字:赤松陽構造
出演:長澤まさみ、奥平大兼、阿部サダヲ、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、土村芳、荒巻全紀、大西信満、木野花、郡司翔、浅田芭路
2020年製作/126分/日本
配給:スターサンズ、KADOKAWA
公開を楽しみに待っていた1本!公開初日のイオンシネマ新百合ヶ丘レイトショーにて観てまいりました。2014年に起きた少年による祖父母殺害事件に着想を得て描かれた作品で、この映画の情報公開がされてすぐ、原案となった『誰もボクを見ていない』を読み、かなりの衝撃を受けました…。少年がどのような世界で生きてきて、この事件に至ってしまったのか。本当に自分が知らないところでこんな信じられないようなことが実際に起こっているという現実から目をそらしてはいけないなとものすごく考えさせられました。この壮絶な事件をどのように映画化するのか、大森立嗣監督とのことでとっても期待しておりました。が、正直、残念な感じでした…
◆あらすじと予告編
男たちと行きずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。そんな母からの歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものがない周平は、秋子の要求になんとか応えようともがく。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。(映画.comより引用)
実際の事件に着想を得て描いたヒューマンドラマなので、原案となった本の内容と全く同じな訳はないし、別物として考えようと思ってはいたのですが、どうにも別物とは考えるのが難しく…。この結末の描き方を考えると、どうにも納得ができないというか、こうじゃないだろう!!というか、個人的にはそういう気持ちになってしまいました…。本を読んだ時の衝撃が強すぎてフラットに観れていないという問題だと思うのですが…
※ネタバレもしていますのでご注意ください!!また、本作を好きだった方は読まなくても大丈夫な内容だと思います。。セリフ含め完全に本編ままとかじゃないのでご了承ください。。
ランドセルを背負って1人歩いている男の子・周平。そこに自転車に乗った母親・秋子が現れる。周平の膝から血が出ているのを見て、傷跡を舐める幸子。「お母さんも仕事バックれちゃった。おいで〜」と自転車で走っていく秋子を追いかける周平。
実家にお金を借りたいとお願いをしにきた幸子と周平。そこには両親と妹の楓も一緒にいた。「もうお金は貸しちゃダメよ。私だってまだ20万円返してもらってないんだから」と母親に強く言い聞かせようとする楓。お金を貸そうとしない母親と楓の様子を見て「あんたらは私のことをバカにしてんだよずっと。楓のことばっかり可愛がってたもんね。私は大学だって行けてないんだから!」とコップを壁に投げつけ大声で怒鳴り散らす秋子。おじいちゃんが周平を部屋の外へ連れ出す。その後も大声で揉めあっていると、手にお札を握った周平が戻ってきて、秋子に寄り添う。秋子はチラとそのお金を確認し、今度は落ち着いた態度で「本当に最後だから、お金を貸して欲しい」と頼むが、「今後一切お金は貸しません」とキッパリ断られてしまう。
おじいちゃんが優しいというか気弱というかそいういう立場なので尚更際立って見えたけど、女性陣がみんな激しいというかとにかく叫んでいるというか、なんかそういう印象だった。何より秋子の態度が悪すぎてびっくりしちゃうよね〜〜
そしていつも来ているのであろうゲームセンターに周平と一緒に行き、そこでホストだという遼と出会う。意気投合した遼をアパートに迎い入れ、「お腹空いた。周平お湯沸かして。ねぇ、お湯沸かせって言ってんの。早く」と強く言う幸子。「お湯沸かない。カップ麺もない」と答える周平。「えー。じゃあ買ってこい。遼くんも食べる?ちゃんとお湯入れてこいよ」と幸子に言われるがままカップ麺を2つ買って帰る周平。玄関の扉を開けると居間の襖が閉じられていて、幸子と遼のイチャつく声が聞こえてくる。玄関に立ち尽くす周平。
子どもに対してのこの口の利き方よ。本当に。こんな親がいるんだと思うと吐き気しかしてこないですよね。本当に嫌だ。。
幸子は名古屋に帰るという遼について行くため、以前から秋子に気があった市役所職員の宇治川に周平を預け、何週間も帰ってこなくなる。宇治川は自宅で周平を預かろうとはせず、アパートに周平を1人にし、食料や必要品を買って届けていた。「お湯沸かない。ガス止まってる」と周平が伝えると、宇治川は「まだお母さんから連絡ないの?学校行った方がいいよ。」と声をかけつつ、「一人で大丈夫だよね?」と周平をその部屋に一人置いていく。ある日、カップ麺をそのままバリバリと食べているとき、「帰るお金がないからすぐ振り込んで」と秋子から電話がくる。ATMに向かう周平。それからも秋子はしばらく帰って来ず、部屋の電気もつかなくなってしまう。
救えなかった人物その1・宇治川。「学校に行った方がいいよ」と優しい言葉をかけながらも、お湯も沸かせない部屋に小さな子供を一人、カップ麺と一緒に置いていくなんて…。
郡司くん。めんこいなぁ。←
突然遼と一緒にアパートに戻ってきた秋子。「お金振り込んだのになんですぐ帰って来なかったの」と周平が問いかけると「あんな金で帰れるわけないじゃん」と悪びれることもなく答える秋子。宇治川によその子を自宅には入れられないと言われたから、食費として手元にあるお金は使い切ったと周平が秋子に伝える。
ファミレスに宇治川を呼び出し、「息子に悪戯したんだろ」と脅す秋子・遼。宇治川の自宅に行き、「慰謝料として10万払え」と言い、お金を取りに2階へ上がる宇治川。その間、「秋子と結婚するから、今日からお前のお父さんな」と周平に言う遼。それに対し「お父さんと認めるかどうかは僕が決める」と周平。遼はさらに続けて「お前を子どもとして連れていくか行かないかを決めるのは俺たちだから!!」と言い放つ。その様子を見ながら何も言わない秋子。宇治川が遅いと遼が様子を見に行くと、揉み合いになったのか倒れるような音が聞こえてくる。遼が誤って宇治川を刺してしまい、3人の逃亡生活が始まる。
遠い町へきたのか、遼はその町の銭湯で働いていた。「給料いつ入るの」と何度も聞く秋子にイライラしている遼。そんな逃亡生活の中、海辺で遼が持ってきた刺身を3人で食べる姿は、少しだけ平和に見えてしまった。平和のかけらもそこにはきっとないのに。公衆電話から実家へ電話すると、「宇治川って市役所の人があんたに会いたいってうちにまで来た」と言われ、宇治川が死んでおらず訴える気もないと確信した秋子と遼は心底安心し、「こんな所にもういる必要はない」と、働き先の銭湯の金を盗んで別の町へ向かい、今度はラブホテルでの生活が始まる。
銭湯の雇い主さん?が「SLUM-POLIS」にも出てた宇野正剛さんで、一瞬だったけどテンション上がりましたね!!もっと見たかった〜!!
宇野さん貼っておこうっと^^
毎日ラブホテルで生活をする3人。朝になると荷物をフロントに預け、「また夜戻ってきます」と伝える秋子。従業員だった赤川がそのホテルの経営者の息子だと知り、「私たちの部屋はいつでも覗きにきていいのに」と挑発する秋子。
元夫で周平の実父にお金をもらおうと、周平を会わせることにした秋子。周平は「修学旅行のお金が必要で」とお父さんに伝える。「またお金の話か。養育費毎月送ってるぞ。お母さん働いてないのか」と聞く父親。頷く周平。周平の肩を掴み、「周平、俺のところくるか?」と聞くが、「お母さんの方がいい」と答える周平。周平を抱きしめ「お前大丈夫か?」と強く問いただすように聞く父親。何も言わない周平に、これしかないといくらかお金を渡し、そのまま帰ってしまう父親。周平が近くで待機していた秋子の元へ向かうと「あんた何してんのよ!」と怒っている秋子。
救えなかった人物その2・実父。秋子の浪費癖を知っているにも関わらず、周平をその生活から救うことはできなかった。周平が「お母さんの方がいい」と言葉にして言っていたとしても、全身からのSOSをどうにか察知してほしかった一人でした。手を差し伸べてはいるのに、引っ張ることはできなかった。大丈夫かと言う問いかけも、抱きしめる姿も、嘘には見えなかったからなお悲しかった。。
その後続けて妹の楓宅へ周平を一人向かわせる秋子。楓は周平の話を真に受けず、帰りなさいと玄関から締め出す。マンションの入り口前で待機していた母親にお金が借りられなかったことを伝えようとした時、楓が財布を持って周平を追いかけてきたので鉢合わせてしまう。楓は秋子の頬を叩き、「子供を使うなんて頭おかしいんじゃないの。もうお姉ちゃんとは縁切るから。もううちにも来ないで」とお金を秋子に投げつけ、家に戻っていく。秋子は吐き気を催したような感じになり、「子どもできたっぽい」と周平に言った。
救えなかった人物その3・楓。実父と同じような感じだけど、秋子という人物を知っていて、お金をずっと無心され続け、周平にもそんなことをさせていて、周平を含めて秋子を突き放すことしかできなかった。血は繋がっているけれど、もう関わりたくないと思ってしまう気持ちも分からなくもないから、なんとも難しいけど…。
ホテルに戻り、周平は赤川に電子レンジを借りてお弁当を温めさせてもらう。赤川は周平に「学校行けてないんでしょ」と学習ドリルを2冊ほど周平にプレゼントする。遼がホテルに戻り、妊娠したことを秋子が告げると「他の男との子だろ!」と父親が自分だと認めようとしない。「絶対に堕ろさない」と言って聞かない秋子に殴る・蹴るの暴行を加える遼。秋子を守ろうと間に入った周平も同様に殴られる。「絶対ムリ!」と荷物を持って出て行ってしまう遼。「大丈夫ですか?」とそこに赤川が入ってくる。「周平。ビール買ってきて。ビールダッシュ」といつものように周平を外に出し、赤川と関係を持つ秋子。お金がなく部屋に泊まれなくなったので、翌日から赤川が敷地内に敷いたテントに寝泊まりすることになる。秋子はかなり不満そう。「ばばあのところ行くしかないかもね」と秋子が言うと「え〜おばあちゃんこわい」と言いながらドリルを解く周平。そのドリルをぶん投げ「こうなったら行くしかねぇだろ!!」と怒鳴る秋子。
救えなかった人物その4・赤川。ホテルに滞在している間、遼の暴力もそうだけど、もう少し周平に対して気にかけることができたんじゃないかと思ってしまう。ドリルを渡してくれたり、優しさももちろんあったけど。他人の問題に踏み込むって難しいなといろんな人の立場で毎回思うね。。
そして赤川が秋子と関係を持つ必要性をあまり感じなかった。まぁお金払わずとも部屋に泊めてもらおうって魂胆だったというだけだと思うけど、なんか、結局性欲に負ける男どもしかこの一家の周りにはいないんだっていう感じ。
私はばばあの顔見ただけでも吐き気がするから一人で行ってきてと周平をまた一人で行かせる秋子。玄関口でお金の話をし、「お母さん妊娠した。お金必要だって」と周平が言うと、「それも嘘なんでしょ!もう嫌!そんな子に育てたつもりはないわ!!」と大声を出して発狂寸前の祖母。祖父が財布からお札を出そうとしているのを見て「何しているの」と止めさせ、「もう二度と顔も見たくない!あんたもだよ!出てけ!」と周平を追い出す。秋子のところに戻り、「妊娠って言ったけどダメだった」と伝えると「なんでよ?」と強く問いただされる周平。「もう一回行ってこようか」とまた祖父母宅へ向かおうとした周平を引き止め、抱き寄せる秋子。
一連の流れで本当に秋子が最低な母親で周平がどんだけ可哀想な子どもなのかと思わされる。けど、最後の抱きしめる行為の感情が全然分からなかった。分からなくていいのかもしれないけど、その表情から愛は感じなかったし、どうなんだろうなぁ…。
5年後。(唐突ぅ!!←)
成長した周平と妹・冬華の姿。路上をふらふらと歩き、「お腹すいた」と泣く妹を慰め、おぶってあげる周平。路上生活をしている3人に児童相談所の人たちが声をかけ、簡易宿泊所での新しい生活が始まった。児童相談所の人たちに最初から敵意むき出しの秋子。それでも職員の亜矢は子どもたち2人にもとても親身なってに接し、周平にフリースクールを進める。「あんた、学校なんか行ったら絶対悪口言われるからね」と秋子は言ったが、通うことを決めた周平。やっと学びの場を得て、さらに学習に意欲が湧いていく。
周りにすぐ打ち解けられはしなくとも、居場所を見つけられたような周平の姿には希望をとても感じた。学びというものを子どもから奪い続ける時間がどれだけ罪深いことなのか、と思わされる。特に意欲のある子どもから奪うことが、ね。
そこに突然、遼が帰ってくる。最初こそ出て行けと言った秋子だったが、結局4人での生活が始まってしまう。闇金らしきところで借金をした遼は、子どもたちに豪華な食事を食べさせたり、温泉に行こうかなどと話をする。そして理解できない行動をする秋子に対して暴力を振るうこともあった。そこにたまたま居合わせた亜矢は恐怖から遼を止めることはできず、とりあえず子ども2人を連れてファミレスへ。「お母さんと離れて暮らすこともできるんだよ」と言われ、無言の2人。夢とかはあるのかと聞くと「わかりません」と答える周平。「亜矢ってそう書くんですね」と、漢字を覚えようとテーブルに指で書いたりしている。
ハローワークに職探ししているフリをしに出かける秋子。「冬華の面倒見てて。あんたもう、学校行かなくていいでしょ」と部屋に置いていかれる周平。そこに亜矢が差し入れとしてたくさんの本を持ち訪ねてくる。喜ぶ冬華。本を手にして「難しそう…勉強しないと」と言う周平。「周平くんなら大丈夫だよ」と声をかける亜矢。秋子が帰ってきて、亜矢に物凄い敵意を向ける。「本を差し入れに。周平くん本が好きなので。冬ちゃんも」本を全て元のカバンに詰め込み玄関の外へ投げ捨てる。「何様なんだよ!!」と亜矢を怒鳴りつける秋子。「すみませんでした…」と謝って部屋から出て行ってしまう亜矢。周平は亜矢を追いかけようとするが「周平!!」と秋子に呼び止められ、そこから動けず追いかけることもできなかった。
救えなかった人物その5・亜矢。自分も施設で育ったという過去を持ち、子供たちのことをとても心配して親身になってくれた、一番大きな希望の1人だった。子どもの一時保護をする際の強制力というのも関わってくる問題なのかもしれないけれど、夫から妻への家庭内暴力が繰り返されているというのを目の当たりにしていたり、秋子の日常的な態度を見ていたりする限り、そのままにしておくのは問題だと、早めにどうにか対応してくれてれば…と思ってしまいますね。。
後日、周平が帰ってくると冬華は1人廊下で遊んでいる。部屋の中を覗くと秋子と遼が必死に部屋を片付けている。「借金取りが来るから荷物まとめて早く逃げるぞ」周平は「行かなくていい?」と聞く。「2人で行けばいいじゃん。学校行きたいんだけど」と続ける。すると秋子が「あの女になに言われたか知らないけど、あんた嫌われてるかんね。気持ち悪いし、クサイって」と周平に言う。「うわ、クサイ!」と笑う遼。反論もできず俯く周平。亜矢が部屋を訪れた時にはもう一家はおらず、壁に『亜矢さんごめんなさい』と書いた紙が貼られているだけだった。
いやぁ本当にここで2人を置いて行ってくれたらどんなに良かったか!強く押し切ることが周平にできればどれだけ良かったか。でもココもこんな幼稚な秋子の言い分で選択肢が削られてしまうという説得力があまりないというか、なんというか。周平が秋子を、秋子以外の大人たちをどう見ているのかというのが分からないんですよね、これまでの描写だと。映画の結末的にはもうどうであれ秋子についていく、ということだったのかもしれないけどそうなると「2人で行けばいいじゃん」という言葉に引っかかったりもする。んー。本の内容が完全に邪魔してる感じなんだろうなきっと…
借金取りからの電話が鳴り止まず、「俺、行くわ。一緒にいるとお前らも危ないから。最後くらいカッコつけさせてくれよ」と言って3人の元を去る遼。「あいつ(冬華)のことよろしくな。お前の母さん、やっぱめっちゃいい女だわ」と言われる周平。「よろしくなって(言われた)」と秋子に声をかけると強めにビンタされる周平。「すぐ戻ってくるから。私たちいつもそんな感じだから」と一度は言うも、今度は泣きながら周平にすがりつき「もう周平しかいないんだからね…」と言う秋子。
このシーンすごく苦手だったなぁ〜。特に遼の芝居が。「カッコつけさせてくれよ」って言うのもなんか、え?って感じだったし、去り際に振り返って“ごめん”のジェスチャーをしたのもすごく気持ち悪かった。不自然で。遼はとにかくずっと不自然なキャラクターだった感じがする。周平役の奥平くんはとてもいいお芝居してるなぁと思うシーンでもありました。ビンタされた後の感じとか。
収入源がなくなってしまった一家を周平が働き支えることになる。勤め先の寮に住み込みで働くことになった周平。社長さんはとても優しく、昼休憩もご飯を食べず1人過ごす周平に「仕事中倒れられても困るんだよ」とおにぎりを3つ分けてくれたりする。そんな社長に給料の前借りを頼む周平。「前借りはもう無理だよ。手取り分なくなるぞ。先月も前借りしてたけど、何に使ってんだ?」と聞かれ、「お母さんの携帯代とか…」と答える周平。「何にしても、もう前借りはダメだ。給料日まで待て」と言われてしまう。
家に帰るとベッドに横になりながらテレビを見ている秋子。「前借りできた?」と聞く。「ダメだった」と周平が言うと「なにやってんだよ!!!もう一回行ってこい」と言う秋子。「もうパチンコとか行くのやめてよ…」と言われた秋子は「ふーん。偉くなったんだね。次あんたが帰ってきたら私と冬華はもういないかもね」と周平を追い詰める。
ここもなぁ〜。さっきと同じようなことになっちゃうけど、周平が「お母さんがまた出て行ったら今度こそ帰ってこないかもしれない」という幼少期のトラウマ描写の印象があまり強くないから、追い詰められているという感じが伝わってこないんだよなぁ。。
夜、暗い事務所に1人入ってくる周平。事務所内を物色し、iPadを見つけ手に取ったところで部屋の電気がつき、社長が現れる。「(盗んでたのは)やっぱりお前だったのか!!!」と周平の胸ぐらを掴む社長。
周平を連れて帰り、働きもせず周平に頼りきりな秋子を怒鳴りつける。「足が痛くて…」と言う秋子に「こいつが盗んだもの質屋に売りに行ったりできんだろ歩けんだろ。子供達が20歳になるまではちゃんと面倒見てやれよ。それが親じゃねぇのかよ!!」黙り込む秋子。
後日、社長の自宅にお邪魔している秋子・周平・冬華。ご飯を作ってくれている社長を手伝う秋子。ご飯を食べながら「先日の件は本当にすみませんでした」と謝る秋子。「もういいんだよ。明後日からちゃんと働いてくれよ」と社長。「奥さんは?」と秋子が尋ねると、「死なれちゃってね…」と。社長にビールを注ぎながら「それは、寂しいね」と言う秋子。
事務所で働かせてもらうことになった秋子。事務所内を物色しつつ(社長室の金庫を見つめる)、外で一服していると遼から「助けてくれ秋子」とメッセージが。そこに社長が戻ってくる。社長に無言で近づき、目線を交わす2人。そこで関係を持ってしまう。
救えなかった人物その5・社長。この人もめちゃくちゃいい人だと思って信頼できそうな1人だったのに結局は性欲の塊っていう感じ。がっかりすぎる。「俺がみんなの面倒を見るから」とかそんなやりとりがあるわけでもなく、ただ無言の空間の中、ただやることやって、ただ出て行くって感じ。もうそれは欲としか言いようがない。見てる側としては。なんだかなぁ。。
遼からのメッセージを開くと「明日までに50万、なんとかならないか。まじで死ぬ。助けてくれ秋子」と書かれている。周平を事務所まで呼び出し、金庫の鍵を渡す。「もうやめようよ…」と周平が言うも、「死んじゃうんだよ!!?」と聞かない秋子。しぶしぶお金を取りに行き、札束を手に戻ってくる周平。50万円も無さそうな札束。「それだけ…全然足りないじゃん…」
荷物をまとめて寮の外へでる3人。「どこ行くの…」と秋子に問いかける周平。そのまま歩き出す秋子。
ほんと、遼さん、なんなんですかね…って言う人物すぎて…。結局お金足りないねつって自分たちのお金にしちゃうし、秋子もよくわかんないよね(遼に関わる描写なんてその後ないですよね?あたしがもし見落としてたならすみません…)。周平が仕事や社長に対してどう感じていたかも全然わからないし、うん。。
歩きながら話をする秋子と周平。
「あ〜腹減った〜。ばばあ殺せばお金手に入るよね」
「うん」
「さっきの話、本当にできんの?」
「え?」
「ばばあの話」
「…」
「お金ないよ〜」
秋子の実家側にある神社。「どうやってやるの」「わかんない」「ここまできてできないとかありえないからね」「わかってるよ」冬華が周平に「あそぼー!」と声をかけるが、「今無理。1人で遊んでて」と冬華を遊ばせる周平。「どのくらいかかんの」「さぁ…1時間くらいじゃない?」「遅すぎ」「おじいちゃんとおばあちゃん、僕のこと分かるかな」そんな会話を交わして、1人秋子の実家に向かう周平。
台所で料理をしている祖母。インターホンが鳴り玄関を開けると、そこには周平が。最初は誰か気づかないが、「周平…?」と気づき、家の中に招き入れる。「夕食食べて行きなさいよ」と声をかけてくれるおばあちゃん。おじいちゃんが「あの時の赤ん坊は、どうした。生まれたのか」と聞く。「うん。生まれた」「そうか。男の子か、女の子か」「女の子」「そうか。女の子か。会ってみたいなぁ。なぁ、母さん」「可愛いよ。今度会ってよ」微笑みながら台所に行くおばあちゃん。ずっと落ち着かない様子の周平。その様子を不審そうに見るおじいちゃん。
するといきなり周平が立ち上がり、台所へ向かう。突然聞こえてくるおばあちゃんの悲鳴。おじいちゃんが台所へ向かい「お前、何やってるんだ!」と言った直後苦しそうな声をあげる。
祖父母を刺すシーンは全く映りません。音声のみという感じ。
返り血を浴びた状態で秋子と冬華の待つ神社へ戻る周平。その様子を見た秋子が言ったのは「ほんとにやったんだ」…。
その夜、ホテルのベッドで3人並んで寝ている。
亜矢が車の中でテレビを見ていると、周平の起こした殺人事件のニュースが流れ込んでくる。周平の弁護士が秋子との面会で「あなたが殺害指示をしたんでしょう」と、周平の育て方を批判する。「私の子ですよ。舐めるようにしてずっと育ててきたの。私があいつをどう育ても、親の勝手じゃないですか」と、育て方に対する反省はもちろん、あいつ(周平)は時々嘘をつくと、殺害指示もしていないと完全否定。
周平と弁護士の面会で、状況を弁護士が説明すると「もう少し分かりやすく言ってもらってもいいですか。僕小学校すら出てないので」と言う周平。「お母さんが殺害指示を出したかどうかが、裁判の争点になってくる。それによっては君の量刑が軽くなることもあるんだ」と言われ、「全部僕がやりました。指示はされていません」と答える周平。
周平は強盗殺人罪で懲役12年、秋子は強盗罪で懲役4年の判決が下る。(罪状と年数違ったらすみません汗)
服役中の周平に会いにくる亜矢。冬華は里親が見つかり、今すぐは難しいけど文通等できるように対応してるから待ってねと伝える。「どうして全部背負ったの?12年って、長すぎるでしょう」と周平に問うと、「ご飯も寝るところもあるし、図書室で本も読めるし、もう外に出たくないんだ」と答える周平。立ち上がり部屋から出て行こうとする周平に「それだけ!?それだけじゃないでしょ…!?」と亜矢が聞くと「お母さんのこと好きだから。一人じゃ生きていけないですよお母さん。どうしたらよかったんですかね。お母さんのことが好きじゃダメなんですかね」と言って部屋から出て行く周平。(大事なセリフだけどこんな言い方だったか自信ない…ちゃんと記憶していなくてすみません汗)
(おそらく)懲役を終え亜矢が用意してくれた部屋にやってきた秋子。ぼーっと窓の外を眺めている。亜矢が「周平くん、お母さんのことが好きだって、言ってました」と伝えると、「私の子だよ…」と呟く秋子。秋子の手を取り、自分の頬に当てる亜矢。ぼーっと外を眺め続ける秋子。(ラストシーンも自信ないけどすみません滝汗)
…と言うような感じでした。色々飛ばしてたり順序変になってたりセリフも言い回しとか違ったりすると思うので申し訳ないですがそこはご了承ください(一度しか鑑賞してないのでという言い訳)。。
いやぁ。予想していたのとだいぶ違ったんですよね。大事なところを描いていないじゃん!!と言う気持ちでいっぱいで。事件どうこうよりも、母親と息子の関係性に着目して、他の人には理解できない愛がそこには存在するっていうことを描いているのかな?とは観る前から思っていたんだけど、全然二人の愛を感じることができなかった。特に母親から息子に対する愛なんて1ミリたりとも感じられない。「理解ができない」とかじゃなく、感じることすらもさせてくれなかった。それぞれの心理描写が全然伝わってこないから、いろんな出来事に対する感情の動きがわからない。ただただ周平はお母さんが好きだという気持ちのためだけにずっと人生を犠牲にしてきて、自分でちゃんと良いも悪いも理解して選択をして生きてきた。という感じ。
BANGER!!!!の監督インタビューで、監督はこう述べています。
「当事者が社会とは別に感じてしまう、どんなに厳しい法律があろうが人を好きになって愛してしまうこととか、死ぬときに何を思うかは自由であるということって、この時代に人間でいるためにギリギリ許されていることなんじゃないかなって思ったときに、彼はすごくロマンティックに生きられていたんだと、ある種の可能性を感じるんですよね。これが、単に社会のせいにしている少年だったらダメだと思うんです。彼が自分で人のことをちゃんと好きになれているということに、人間としての可能性が見えてくる感じがあって、そこがものすごく好きな部分ではあるんですよね。」
この文章を読んで、もう自分と監督とがこの事件や少年に対して考えていることがそもそも違いすぎるというのが明確になったので、そりゃこの映画を好きになれないわけだなと思いました。
実際の事件と今回の映画は別物として考えるべきなのかもしれないのですけど、正直実際に少年に起きた出来事の目立つエピソードを切り集めて脚色を加えてロマンティックな映画にしました!という感じにしか受け取れない。ロマンティックとも感じなかったけど。「タロウのバカ」みたいに、ある事件をモチーフに完全オリジナルなストーリーに仕上げてくれてたならまた話は違ったかもしれないけど、ほぼほぼ実際に起きていたことそのままだから比較せざるを得ないというか。人物設定とか関係性はもちろん違う部分もあるし、そこは別物と捉えるにしても。それぞれのエピソードに深みも感じることができなければ、何が秋子を、周平をそうさせるのか、というのが想像もできない。ただただ可哀想なことが起きている感じ。妊娠して赤ちゃんが生まれるところ、一番大変な時期だろう部分がバサッと割愛されていたのもなんか。撮影的に色々問題があったのか理由はわからないけれど、そこを描いていたらもっと周平の人となりや秋子との関係性にも近づけたんじゃないかなとか思ってしまう。
【居所不明児童】という子供たちが実は存在していることや、救えたかもしれない立場の人が実はちゃんといて、その人たちは決して無関心ではなく子供たちを心配していたこと、そして少年がどれだだけ母親に支配され続け、事件を起こしたことで物理的に初めて母親と距離を置いた時に、何に気づいたのか。それがめちゃくちゃこの事件で大事な部分だと思うんです。ロマンティックだとか、そういう綺麗な言葉で終わらせるべき事件ではないと思うんです。もちろん実際の少年もこの事件が起きてしまったのは社会のせいだとは言っていないし、自分の責任をしっかりと感じている。そして、母親についても述べている。少年の手記内容を読んで、その言葉とこの作品を観て感じることは個人的にはかなり違いがあるように思う。母親に支配されていた時はそう思っていたかのかもしれないけれど、(映画で)捕まった後にそう言わせて終わらせているのはとても納得がいかなかった。。
だからこそ別物であり、実際の事件とは関係ないんだと思うべきなのでしょうけどね。。でもあたしには完全に別物だとしてこの映画に納得することは難しいです。実際の少年の言葉や出来事からも汲み取ることのできない、映画だからこそ描ける究極の愛というものをもっと描いてくれていたらと思っていたけど、うん。映画本編を見て子供たちが可哀想で涙はしましたけど、結局この映画が何を伝えたかったのかというのは全くわからなかったです。
と、本当に文句しか書いていなくてすみません。。でも、この実際の事件の真相が「息子の母親に対する愛」だとか、「母と息子の歪な愛の結果」だとか、そんな風に思われて終わってしまうのはとても嫌だなと思ってしまいます。事件に興味を持った方がいたらぜひ「誰もボクを見ていない」を読んでいただきたいです。もっともっと複雑で、もっともっと考えさせられる、自分ももっと考えなきゃいけないなと思う内容がたくさん詰まっていると思います。
長澤さんのお芝居よかったんですけど、とにかく汚い言葉遣いで怒鳴る、という印象が強いだけというか、汚い言葉を使うのがあまり合っていない感じがしてしまった。やっぱり容姿の美しさというのは変えられないし、別に汚い言葉じゃなくても、あの声が出せるのであれば迫力は変わらなかった気がする。
遼役の阿部サダヲさんは、んー…キャスティングがあまり合っていないかなぁと思ってしまいました。
もし舞台版があるとしたら(謎)、この二人のこの感じで観てみたいなとも感じたり、自分でもその辺りうまく説明できないのですけど、映像で見る限りスンナリ見るのが難しかったです。
周平役の郡司くんと奥平くんはとても良かった!今後も出演作は気にしたいなぁと思いました。自分しか気にしてない部分かもしれないけど、郡司くんは口元に黒子が合って、奥平くんは目元に黒子があって、それが繋がっていなかったのは気になってしまいました。そんなとこ気にしなくていいんだよって部分かなぁすみません。。
衝撃的な事件を大好きな大森立嗣監督が映画化でとても楽しみにしていたんですけどね…。PG12指定ということもあり暴力・性描写もそこまでじゃないです。R指定でもいいからそこガツッとやった方が映画としては良かったんじゃないかなぁとは思ってしまいますね。。
「MATHER マザー」よりも、同じく大森監督作品「タロウのバカ」をぜひぜひ観ていただきたいです!!!「タロウのバカ」は本当にとても大好きだったので。激推しをいつまでもすると思いますが。役者さんはもちろん脚本もとても良くて、しっかりと問題提起されている感じがします。未見の方がいましたらぜひとも。楽しいお話ではないですが。
誰も読まないだろう文句たらたらブログ。長すぎんだろ!って自分でも思ってます。HAHAHA←
もし「お前がおかしいんじゃボケ!この映画はこういうことを伝えてくれてるんやアホんだら!!」とあたしの考えを指摘してくださる心優しい方がもしいましたら、コメントでもDMでもなんでもしていただけるととても嬉しいです。自分がこの映画の大事な部分を汲み取れていないのならばとても知りたいのです。よろしくお願いいたします。黙
事件が気になった人はぜひこちらを読んでほしい!
こっちの方が断然好きです。ラストのYOSHIの叫びを聞いてほしい。