仕事が終わりジヒョクさんとの待ち合わせ場所に向かった。10分前だったけれどジヒョクさんは既に来ていた。
「何か落ち着かなくて…早く来すぎたと思ってたけど…早く会えて嬉しい」
と私の手を握り大喜びしてくれた。
相変わらず可愛い人だなぁと思った。
「お店、どこ行きますか?」
と聞くと
「実はカジュアルなフレンチレストランを予約してて…」
とジヒョクさんは照れくさそうに頭を、かきながら言った。
「えっ?!ありがとうございます。じゃ行きましょうよ」
私はジヒョクさんの、その気持ちが嬉しくて自然と笑顔になった。
店に入ると落ち着いた雰囲気で店員さんも感じが良かった。
キレイな花が、たくさん咲いていて手入れの行き届いた庭がある。それを窓から二人で眺めながら食事が出来るようになっていた。
メニューを見るものの料理のイメージが出来ないなぁと思っていたら
「実は予約の時にコース料理も頼んでおいたから飲み物だけ決めてくれる?」
と言ってくれた。ジヒョクさんの段取りの良さに感謝した。
とは言え飲み物も、たくさんあって決めるのに時間が、かかるな…なんて思っていたら
「ねぇ、ワインで乾杯しようよー」
とジヒョクさんが笑顔で私の方を見る。
すぐに決められない私に対するジヒョクさんなりの優しさかも?
横並びなのでキョリが近くてドキドキした。
グラスに、そそがれたワインを持ちかながら
「何に乾杯しますか?」
って聞くと
「2人で会ったの3回目記念日!」
大真面目に答えるジヒョクさんに私は思わず笑ってしまった。
「ヒドイよ~!笑うなんて。嬉しいから記念日って言ったのに~」
ジヒョクさんは拗ねて牛肉のポワレを食べた。
「あ、これ美味し~!」
無邪気に食べるジヒョクさんを見ていると心が癒される。
今日は、たくさん笑ったし、たくさん食べた。
駅までの帰り道
「えっと、女の人は、こっち…」
そう言って自分でも確認するかのようにジヒョクさんは私を歩道側に歩かせ自分は車道側を歩いた。
駅までは15分ほど歩くけどジヒョクさんとなら時間が経つのも早く感じるだろうな。
少しの沈黙の後ジヒョクさんが
「今日は、ありがとうね。本当は今日、誘うのに勇気が、いったんだ。でもグァンスに相談したら『2回目会った時に、また会いたいって言われたなら嫌われてないんじゃないか?』って言われて、そうかも?と思って…」
そして、周りの歩行者が点滅しかけた青信号を走って渡って行く中で私の手を引き止めるように握り
「もし良かったら僕と付き合って」
ジヒョクさんは真剣な顔で私を見つめた。
でも私は突然お兄ちゃんの名前を出されたことの方に動揺した。
「もしかして、お兄ちゃんに私のこと、ずっと前から相談してたんですか?」
昨日から今朝にかけての、お兄ちゃんと過ごした時間を思い返すとパニックに、なってしまった。
ジヒョクさんは申し訳なさそうに
「グァンスには昨日初めて、ちゃんと話したんだよ。でも、それまでは名前を出さずに気になる人が、いるから…と相談に乗ってもらってたけどね」
私の顔色を伺いながら話すジヒョクさん。
私は、どうしたら良いのか、わからなくなってしまった。
「必ず返事しますから…考えさせて欲しいんですけど」
と伝えるのが精一杯だった。
「もしも良くない返事でも受け入れるから本当の気持ち聞かせてね」
ジヒョクさんは優しい…
「ありがとうございます」
私は泣きそうなのを、こらえながら笑った。
「大丈夫~?」
そういってジヒョクさんは私の頭を、ふんわりなでた。
「大丈夫です~」
私は、そう言って駅の改札口に向かった。
ふと視線を感じて振り返るとジヒョクさんがニコッと笑ってブンブンと両手を振った。
私は恥ずかしくて一度通った改札口をギリギリの場所まで戻り
「ちょっと…恥ずかしいですよ」
と私は小声で言った。
するとジヒョクさんは
「だって泣きそうな顔のまま別れたくなかったから…」
ジヒョクさんは、スゴく子供だけど、こういう時は、スゴく大人で…いつのまにか気になっていた。
今朝、ジヒョクさんに会うのを先延ばしにしたかった自分の気持ちが嘘のようだ。
家までの帰り道、穏やかな気持ちで帰れたのはジヒョクさんの、おかげだった。
つづく
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