―ここは日本の首都東京―

これはある青年の恋の物語である。その様子を温かい目で見守っていただきたい。それでは物語スタート!

 

 

「なーんかいいことねぇかなぁ。」

 

大学2回生を間近に控えた僕は毎日退屈な生活を送っている。しかしそう言っていても仕方ないので、とりあえずテレビをつけることにした。ボタンを押した2秒後、画面の中にはキャスターが満面の笑みで映っている。それを見て、

 

―なんでこんなに朝から笑えるんだよ。― 

 

と僕は思う。今の自分の気持ちとは程遠いその表情に少しイラつきを覚える。浮かない表情をうかべながら朝食を食べようと立ち上がった時、テレビの中のキャスターが

「本日は月曜日です。皆様お仕事がんばってくださいね!」

と言った。その言葉を聞き今日が月曜日であることを初めて認識する。

 

―やば、今日ゴミの日じゃん―

 

時計を確認する。時計の針は8:55を指している。

 

―よかった。あと5分もある。―

 

マンションの下のゴミ捨て場までは十分間に合う。僕はサンダルを履きドアノブを回した。するとその時、打ち合わせでもしたかのようにドンピシャのタイミングで隣の405号室のドアが開いた。それを見てとてもびっくりした。隣の405号室はついこの間まで空き部屋だったはずだからだ。

 

―僕が実家に帰ってる間にだれか引っ越してきたのか。―

 

そう思っていると、隣の人が部屋から出てきた。

 

―あ、女の人だ。―

 

隣の部屋から出てきた人を見て心の中でそうつぶやいた。

 

内心すこし嬉しかった。

 

とそんな話は置いといて、その女性はゴミがパンパンに入ったゴミ袋を4つも持って歩き出そうとしている。引越しで出たごみのようだ。あまりにも重そうだったので、

 

―下心じゃないこれは優しさなんだ―

 

と自分に言い聞かせて、

 

「おはようございます。そのゴミ重そうなんで持ちましょうか?」

 

と彼女に声をかけた。

 

―断られたらどうしよう。―

 

とドキドキしながら返事を待っていると、彼女はこちらを振り向き、一瞬驚いた表情を見せたが、大きく、くりっとした目でこちらを見て、

 

「あ、、、ありがとうございます、、。」

 

と微笑みながら言った。

 

そのはにかんだ表情を見た瞬間、自分の体に衝撃が走るのが分かった。

 

―むちゃくちゃかわいいやんけ!!―

 

肩までのばしたセミロングのサラサラの黒髪は朝日を受けてキラキラ輝いている。

それに、顔も今まで見た人の中で断トツで整っている。

控えめな話し方と申し訳なさそうな表情もドストライクだ。

まさに「清楚」という概念そのものを体現しているようだった。

 

そう、僕は一目惚れをしてしまったのだ。

 

今まで、一目惚れなんて漫画や妄想の世界の出来事だと信じていた。

しかしそれは実際に起こってしまった。

 

―そんなはずはナイナイナイ、、、。いやぜっっったいない!!俺が一目惚れをするはずがない!―

 

そう頭では思いながらも、心臓の鼓動はどんどん早くなっていく。彼女のゴミ袋を受け取って、エレベーターで1階のゴミ捨て場まで行くのだが、その間ずっとドキドキしっぱなしで会話なんてできるはずがない。

 

―どないしよ。頭真っ白や。―

 

などと思っているうちに一つの会話もなくゴミ捨て場に到着してしまった。

 

「あの、、、ありがとうございました。それじゃ、私このまま出かけるので、、、失礼します。」

 

といい彼女は去ってしまった。

 

僕はゴミ捨て場からの帰り405号室の表札を確認し先ほどの女性が「西野」という名前であることを知った。そして、自分の部屋である406号室に帰り、頭を整理した。

 

―おれは恋をしてしまったのか?これが一目惚れなのか?いや単なる錯覚なのか?―

 

色々と考えてみるが心に残ったモヤモヤ感とむずむず感は消えない。結局その日はその子の事が頭から離れず、気が付いたら一日が終わってしまっていた。

 

 

 

 

 

つづく・・・