こうしてスタートした婚礼準備。

会場は天門のある奉恩寺で執り行うことになった。二人の状況を誰よりも知る住職が、ここならば非常時でも対応が出来るでしょうと快諾してくれたことによる。

披露宴は特に設定せず、研究所のホールを使っての宴席とすることにした。

衣装はハルが担当で、ウンスとカタログを見ながら楽しそうだ。

少しづつ、でも確実に形になっていくに従い、仲間たちも心が華やいだ。

簡素でありながらも仲間たちで作り上げる婚礼の日を、誰もが心待ちにしていた。

 

「もしもし、母さん?」

 

両親へと結婚の報告がされる。

受話器を持つ手が少し震えていた。心臓の音が耳まで聞こえそうなくらい緊張しながら

 

「今度、ヨンと結婚することになりました」

 

と、やっとのことで言葉にすると、受話器の向こう側で母の大きな歓喜の叫び声が聞こえ、隣で耳を澄ませていたヨンと思わず顔を見合わせて、そして笑った。

 

興奮する母に代わって電話口にたった父からは、淡々とした声で

 

「おめでとう。あの男なら大丈夫だ」

 

と少しだけムッとしたような声で言われ、少しだけウルっとしたけど気づかれない様に目を瞬き上を向いた。

 

「今ね、ヨンの仕事の都合でいつ変更が入るか分からない微妙な時期なの。だから通常よりかなり簡素に婚礼だけを挙げることになりました。立ち合いも両親と職場の仲間だけに。元々こんな状況の中だったので、婚礼衣装の写真が撮れればそれだけでもいいと思っていたんだけど、仲間たちが婚礼を挙げられるように手配をしてくれている。でも、その前にヨンのご両親にも会って欲しいから顔合わせは式の前夜でお食事会という形にさせてもらってもいいかしら・・・・母さん、父さんにも・・・・事後報告みたいになっちゃってごめんなさい。でも、絶対に母さんたちには来て欲しくて・・・・・」

 

という事を話すと、「いいお仲間に恵まれているのね。二人の気持ちが一番大切なんだから、こっちの事は気にしなくて大丈夫よ。・・・まあ、正直なことを言えば婚礼の準備、母さんもあなたと一緒にゆっくりと準備したかったわ。何もそんな忙しい時に慌てて結婚しなくても・・・・・」と少し残念そうにしながらも喜んでくれた。

 

「全く・・・ヨンさんは素敵な人だけど、あなたはどうしてもう少し普通のお仕事についている人を選ばなかったのかしら?って思うわよ。何ならヨンさん、うちの農家を継いでくれてもいいのよ?・・・ふふふ・・・わかってる。・・・でも、結婚式の日にも急に任務が入る事なんてあるの?少しは融通利かせてくれてもいいじゃないね?」

 

少しばかり心配そうな声でいう母に、こればかりは本当の事が言えないことに胸が詰まる。

それでも明るい声で

 

「私はいつもギリギリでもやりたいことは出来る子だったから。きっと今回も大丈夫よ。ね?母さん」

 

「うんうん、そうね。あなたはやりたいことは絶対に逃さない子だったわ。取りあえず、結婚のことは了承したわ。日程が決まったら早めに連絡を頂戴。なによりもウンスに会えるのが嬉しいわ。それにヨンさんのご両親にもきちんとご挨拶をしたいと思っていたから。ウンス・・・おめでとう。またね」

 

こうして足早に日々が過ぎ去り、とうとう明日、婚礼前日を迎えるという日までこぎつけた。

独身最後の二人きりの最後の夜。

少し恥ずかしくて、でも嬉しくて・・・・・

静かに薫風香る庭を手を繋いでゆっくりと歩く。

時々くちなしの甘い香りを含ませながら、ウンスの髪を靡かせ通り過ぎてゆく。

夜空には満天の星空。そして煌々と輝く月の光。

 

「いよいよ明後日は結婚式だね。なんかアッという間だったな・・・」

 

「そうですね。今からウンスの花嫁姿、楽しみだな」

 

ふふふ・・・と互いに笑いながら見つめ合った。

月の光の下で見ると、ヨンの瞳はきらきらとアイスブルーに光る。何度見ても美しいと思う。

ウンスの掌がヨンの頬を撫でるように触れると、その手を包み込む様にヨンの手が重なる。

 

「ウンス、これから先ずっと・・・・生きるも死ぬも共にと誓う。手を取り合って、共に老いるまで・・・・」

 

これから先、どんなことが待ち受けているか分からない。このままここに残ることになるならば、穏やかな日々を過ごしていけるかもしれない。でももし、天門が開いてあちらの世界に足を踏み入れたら・・・・・

 

不安に思うことも、寂しさを感じることもありましょう。

そんな時はずっと俺があなたの傍にいる。

この身が触れ合える場所になくても心の火を灯して道標となり、あなたにずっと寄り添います。

春の花の香りを、夏の青葉輝く空を、秋の虫の囁きを、冬の静かな雪の景色を。

雪月風花を共に愛でながら過ごしましょう。

 

ヨンがウンスを胸の中に抱きしめると、ウンスは耳をヨンの胸に押し当てた。

 

「ヨンの心臓の音好き・・・落ち着くの・・・・」

 

「そうか・・・・それは良かった」

 

穏やかに、そして静かに時は過ぎてゆく・・・・・

 

 

今年も行ってまいりました蓮祭り。

少し花の開花としては早かったかな。

まだ沢山の蕾が葉っぱの下に控えておりました。

それでもお天気にも恵まれ、咲いている花も美しい。

初夏ですね~~~。

花を見るなら早朝がいいと言いますので、8時前には公園に到着。早い時間なのに、沢山の人が訪れていました。

朝も早いというのに、既に太陽の日が暑く感じる日でしたので、蓮の花茶を頂きました。

柔らかい甘い香りと爽やかな味。とても美味しかったです。