長老の一声から一気に婚礼へ向けての流れとなり、そこのメンバー全員がそれに関わりたいと願い出た。

誰が何を担当するのか・・・・手を上げ身を乗り出し立候補する者は後を絶たず。収集が付かないところに最後はいつものチュンソクが仕切りを付けた。

 

「みんなの気持ちは分かった。勿論、俺もその一人であることは認めるが、このままではラチがあかん。そこで一旦大まかに仕切らせてもらうぞ。細かいことはその後ちの会議で決めよう。そこから不都合があれば追々変更するという事にさせてもらう」

 

そこで話し合われて決まったことは、まず天門の監視は外せないものと位置づけ、そのサイクルは通常通りとすること。体の鍛錬及び資料研究は一旦保留とし、その時間を準備に充てる事。表の仕事である歴史研究所の方は、長老会外の社員が大半の為に変更なしとし通常運営とする。但し、現在企画中の展示会については進めるが、新たなものに関しては営業諸々一旦保留とする。第一回作戦会議は明朝第一会議室でという事とする。

 

とまあ、こんなことで一旦話は終わり、その晩は遅くまで盛り上がった。解散した後二人はといえば・・・・・

 

「今日はもう遅くなっちゃったし、お酒も入っているでしょ?」

 

「だが、折角の記念日。それに俺は嬉しくて、幸せ過ぎて堪らない」

 

「私もよ・・・・だけど、明日も早いし・・・・・」

 

「一回だけ・・・・・な?・・・・・・・」

 

「もう・・・・あっ・・・まだいいっていってな・・・・」

 

と、あとのことはご想像にお任せして・・・・・・

 

翌日から順調に婚礼へ向けての準備は始まった。

兎に角今回は、不測の事態に備えることが前提となる為に、最短で式を執り行うことが大前提となった。

長年の研究により、天門が開く兆候として太陽活動周期が何かしらの影響をもたらすであろうという仮説が立てられている。

中でも大規模爆発は11年周期ともいわれ、まさにそれが今年にかかっていた。ヨンが互いに入れ違ったその年は、中規模爆発であったが天門は開いた。となると、今度来るであろう時を厳重注意する必要があるという事からしても、あまり悠長なことを言っていられる状況ではない。また言い換えれば婚礼を行うとしたら、今年がラストチャンスともなるのだ。

だからこそ、みんなの気持ちは大きくその日に向かって力が入る。

 

会議の途中で、ヨンとウンスは呼び出され退席すると、そこには長老から報告を受けたミンス夫妻が立っていた。

 

「父さん、母さん・・・」

 

今ではすっかりその呼び名が板についたヨンが二人を見て驚いた顔をしている。プロポーズの結果は既に二人に報告をしてあったが、今日の突然の訪問は長老からの物で二人は知らなかったのだ。

 

「二人ともおめでとう。わかってはいたが、やはり正式に決まると嬉しいもので、いてもたってもいられなかったよ」

 

「そうなのよ。それにしてもウンス、結婚式を諦めていたんですって?ダメよ?ちゃんと素敵なお式にしましょうね。私も張り切っちゃうんだから」

 

「奥様・・・・・」

 

長老が二人に声を掛けたのは、勿論式に向けての話し合いなのだが、その中でも一番に伝えたい事案があったから。

 

「ウンス、実は君に折り入って話しておきたいことがあって今日は来たんだ。式の日、君のご両親をお呼びしたいと思う。これは長老とも話し合って決めたことなんだが、どうだね?賛成してもらえるかな?」

 

「え・・・・?本当に両親を呼んでもいいのですか?勿論私に異論なんてありません。でも、実際には難しいんだろうなって思っていたので・・・・・・」

 

うんうん、と無言のまま頷くミンスが穏やかな顔で話し出した。

 

「君たちの事を聞いて直ぐ、妻とも相談したんだよ。節目の日、是非ウンスのご両親も参列してもらった方が良いとね。長老にも相談したら、快諾してもらえた。

勿論、色々クリアしなければならないことは多い。特殊な状態だからね。だが、「だからこそ」なんだよ。

ウンスの晴れの日を見て頂きたい。それが大前提だよ。一人娘の花嫁姿を他人だけが見て祝うなんて、そんな悲しい事できるわけがない。今の二人は、特殊任務にヨンが付いている。という事を前提に色々なものを伏せさせていただくことをご了承していただいている。それは今後も変わらない。何度もこちらにお呼びすることも、長期滞在していただくことも、リスクを考えると難しい。なので、顔合わせは式の前日。そして式に出ていただき、翌日は解散。ウンスにはもっと長く一緒に過ごさせてあげたいのだが、これが限界だ。許して欲しい」

 

深く頭を下げるミンスにウンスは慌てて近寄り頭を上げさせる。

 

「許すなんて・・・・まさか、なた両親に会えるなんて・・・夢みたいです。時々電話では話すことは出来ましたけど、居場所を知らせるわけにもいかなくて会えませんでした。このまま生涯会えないと、覚悟してましたから・・・・・本当に、本当にいいのですか?」

 

「ああ、かまわんよ。こちらこそ、ウンスには酷なことを強いているのは自覚しているのだ。申し訳ないと心から思って居る。なのに、君は何の不服も口にせず、良く耐えてくれていると感謝もしておるのじゃ。その罪滅ぼしというには小さいかもしれないが、今できる最大限の事なんじゃよ。そうは言っても我らが相手にしているのは未知のもの。もし、式の前にそれが起こってしまっても・・・・それは許して欲しい。すまぬ」

 

「長老様まで・・・・大丈夫です。その時はヨンについていきますから。ただ、もしそうなったときは、どうぞ私の両親の事もお願いできますか?」

 

ウンスの言葉にミンスが受け継ぐ。

 

「ウンス、その為にもウンスのご両親をお迎えしようと思ったんだよ。今回、私たち夫婦はヨンの親という事でご挨拶するつもりだ。これから先の事はまだ誰にも予想が付かない。だが、二人がこの地を離れる日が来たのなら、その時にウンスのご両親と私たちは、互いに心を支え合える間柄になっておきたいと思ってるんだよ。私たちは生まれながらの伝承に基づき、長い時間をかけて心の整理を付けてきた。だが、ウンスのご両親は違う。何一つ本当の事は知らされずに突然その時を迎えることになるんだよ。作られた状況を押し付けられ無理にでも受け入れなくてはならない。頭で納得させることと、現実に抱く気持ちは違うものなんだ。ウンスにしたって、同じ気持ちを抱くことになるかもしれない。その時はヨン、君がウンスを支えるんだ。私たちは、ウンスのご両親の心の支えとなれるようになりたい。勿論、この長老会を始めとする崔一族で守るよ」

 

ウンスは皆の深い愛情に胸が熱くなり膝から崩れ落ち涙を流した。

 

「ありがとうございます・・・・・本当にありがとう・・・・・これからも・・・どうぞ・・よろしくお願いいたします」

 

ヨンはウンスの肩を抱きながら、深く頭を下げた。

 

「皆様のご厚情を深謝いたします。チェヨン、何にも代えましてもウンスの事をお守りするとをここに誓います。また、あの地に戻りました暁には、全力で崔一族を持って見守る所存です」

 

長老も、ミンスもその妻も、みんな温かい笑顔で二人を囲んだ。

 

「さあ、二人とも顔を上げて。我らは大きな一つの運命共同体だ。大きな節目となる大切なその日は、また新たな絆を深める日ともなろう。是非とも成功させて、最高の1日としよう」

 

何とか婚儀に向けて動き出した模様。

どうぞ、迂達赤レディースの皆様のご参列をお待ちしております♬(笑)

メンバー一丸となり、急ピッチで進行中。何せ、お祭り気質の人たちですから。

どんなお式になるのか、少し心配?

 

先日、恒例の蛍鑑賞会に行ってきました。

年にその時だけ、自然公園の門が夜に開門となります。

今年も沢山の蛍に出会えましたよ。

初夏の始まり。

一時の幸せを感じた時間となりました。