法鼓が鳴り響き、それを合図に神妙な面持ちで堂内に一団が入ってゆく。それぞれ着座すると、ある者は静かに目を閉じ、またある者は入り口をしきりに気にしながらソワソワと小さく腰を浮かす。隣同士、耳打ちしながら微笑む人もどこか落ち着きが無い。

そんな彼らも、華籠を持った修法者の入場に姿勢を正し顔を引き締める。

 

修法者が本尊前で散華しながら華厳荘厳文を唱えると、堂内に蓮華がふわりと舞い上がった。その花弁が静かに床に広がる頃、やっと本日の主役の二人が入ってくる。

その姿を目にした者たちは、それぞれの万感胸に迫る思いを抱きながら瞬きも忘れ見つめていた。

 

 

あのプロポーズの日、ヨンの計画を事前に知っていた仲間たちは、この成功に大いに盛り上がり、飲めや歌えやの大宴会となった。

 

「いや~良かった、良かった。本当に良かったです!」

 

泣きながらヨンに絡んでいるのはチュンソクさん。いつもは冷静沈着とか、生真面目という言葉がぴったりの彼なのに、顔をグジュグジュに崩しながら泣き笑いしている彼にウンスも釣られて泣き笑い。

 

「副長、泣き上戸だったんですね。知りませんでしたよ」

 

「いや~いつもはこれ程酔うこともなかったしな。よほど嬉しかったんだろうよ」

 

「ですよね~♪俺らも嬉しいっす。さあ、飲もう!」

 

宴も少し落ちつきを取り戻したころ、誰ともなく話は『婚礼をどうするか』という流れになった。

 

「え?結婚式はしないわよ?」

 

「えええええ!うそでしょ?ウンスさん、何故?どうして!絶対に花嫁姿、綺麗なのに。それに女性の憧れじゃないんですか?」

 

そこにいた全ての人が、信じられないという顔でウンスを見た。

横にいたヨンも、驚いたようにウンスの顔を見る。

 

「だって、そんなことしている場合じゃないじゃない。何時天門が開いちゃうか分からないし・・・・簡単に言うけど、お式って結構準備が大変なのよ?」

 

「ああ・・・」

 

「・・・っでも!」

 

咄嗟に出たであろう言葉も文章にはならず、戸惑いの感嘆符が空を舞った。

確かにウンスの言葉は至極御もっともなことである。とはいえ、どこかスッキリとしないおももちのまま次の言葉を突くことも出来ず開きかけた口を皆閉じた。

 

「ん?なんじゃ?この沈黙は。めでたい日に、随分と重い空気が流れているようだが・・・・」

 

そんな空気を動かすようにかけられた声に、一同の視線がそこに集まった。

 

「ウンス、ヨン、先ほどは失礼したね。外せぬ用を優先してしまった。伝言を見てね、君たちを待つのももどかしくてこちらから出向いてしまったよ。まずはおめでとう。心からの祝福をしよう」

 

声の主は長老であり、彼もまたヨンのプロポーズ大作戦に一枚かんでいた一人で、この瞬間を心待ちにしていたのだ。

 

祝の言葉に二人は深く頭を下げる。そんな彼らを見ながら、長老はとても嬉しそうな顔をしてまた言葉を繋いだ。

 

「それでじゃ、今しがは「式は挙げない」と聞こえたのだが?ウンス、何故だ?したらよかろうに。面倒だ、嫌だというものを無理にすることはないが、もしその理由がこの特殊な状況のせいで「諦める」というならば話は別じゃ。一生に一度の節目。特に女子にとっては特別な日じゃろう?ウンス、そなたの花嫁姿はきっと美しいだろう。そしてその姿を見せたいと思うのはヨンだけか?御両親にお見せしなくても良いのか?勿論、通常の物に比べたら時間をかけてというわけにはいかないかもしれぬ。だが、例え簡素であっても心を込めてここに居る皆で祝福することは可能ではないだろうか。初めから諦めてしまうなんて、二人らしくもない。出来ることを精いっぱい。それが君たちの信条であろう?」

 

「長老様・・・・」

 

ウンスの目が一気に潤み始め、ヨンが優しく肩を抱いた。その様子を見ていた周りの仲間たちが、ツンツンと互いの腰を突き目くばせをする。

 

「・・・てことは長老。結婚式をする方向で行くんですよね?それでいいんですよね?」

 

「ヨンさん、ウンスさん、やろう!やりましょう」

 

一旦落ち込みかけた部屋の中に、再び歓声が起こる。見えない紙吹雪が舞うようにそこに光が満ち溢れた・・・・・

 


 

ウンス、ヨンのプロポーズは嬉しかったけど、結婚式は諦めてたのね~~~

でも、長老の鶴の一声でめでたく決まったようで(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

この流れでいくと、ウンスのご両親も上京してきそうですよ。

幸せな1日の為に、みんなで力を合わせて頑張りましょう~~~~

 

 

本日は芒種。稲などの芒(のぎ)のある穀物の植え付けの季節・・・・・

こちらは毎年、GWを境に田植えは行われ、今はすっかり根付いた青葉が、風に気持ちよく揺れています。

蛍も鑑賞会が開かれたり、来週は蓮祭り。

少しづつ夏を思わせる行事が目白押し。

今年の暑い夏。どうっやって凌ぎましょうかね?