ユ・ウンス。俺の大切な人。

この地に飛び込んだ目的であったその人は、見つけるよりも早く出会った。

直ぐにでも戻るつもりだった道は閉ざされ、己の足元が崩れそうになる度に、この方は俺を支え、時に叱りながら導いてくれた。

敬う気持ちは少しづつ形を変え、愛おしく思う大切な方となった・・・・

 

互いの気持ちを確かめ合い、今や心のみならず愛を交換することの出来る間柄となったのだが、その一歩先に進むことが出来ないでいる。否、今まではそれを「してはならない」と言い聞かせていたのかもしれない。

 

愛する人と出会う事など、己の生涯ではないと思っていた。俺は王の盾であり剣であったから。

王以外の誰か別の存在を守るという事など考えたことなど無かったら。

しかし、使命感ではなく己自身の心から守りたいと思う人に出会えた。それがウンスであり、その気持ちを「愛」と呼ぶ事を知った。

 

愛とは媚薬である。

甘く温かく幸せに包まれるが、時に剣で胸を抉られるような痛みを与える。

一度知ってしまったら最後、もうその相手を手放すことなどできなくなる。手を放してしまったら、きっと俺は生きてはいけなくなるだろう。

 

側に居られるだけでいい。

思いを知ってもらえただけでいい。

同じ気持ちになって欲しい。

触れ合いたい・・・

相手を求める思いは際限なく広がり、その先に見えたのは婚姻。そして家族を作る事。

広がるその未来への道筋を、いつもなら真直ぐに迷うことなく突き進むのが俺の信条であるはずなのに、今になっても戸惑い立ち止まっている。

 

そんな俺の迷いなど、いとも簡単に見透かすように放たれたミンス氏の奥方の言葉が、何度も脳裏を反復していた。

 

「あなたとヨンは合わせ鏡。抗ってもなるようにしかならないの。心のままに・・・・」

 

ああ、そうだった・・・・

俺たちの進むこの先の道は確約が無い。それでも日一日と時間だけは確実に進んでいるのだ。

己の価値観だけで立ち止まっていていいはずもない。二人の事だ。ウンスの気持ちは今どこに・・・・・・

 

秋から冬にかけて、恋人たちが盛り上がると言われる行事が多かった。

ハロウィンにクリスマス。そして初雪・・・・・

相手に思いを告げたり、愛を確かめ合ったり、もう一歩先に進んだり。それぞれがそれらの節目としてその日を大切に過ごしていた。

ウンスとはもう、思いは通じあっているので・・・・愛は確かめ・・・あった。

勿論、その日はいつも以上に盛り上がったのだが、今思えば・・・・

 

小さなウンスの仕草に違和感を感じたことはなかったか?

俺はそれを気が付かぬフリをしていただけなのか?

 

小さな女の子の両手には父と母。

大きなクリスマスツリーを見上げて目をキラキラと輝かせはしゃいでいるている姿を見てあの人は

「ふふふ、可愛いね。今晩はきっとサンタさんのプレゼントを夢に見ながら寝るのね」

と目を細めて見つめていた。

その時はただ単に、微笑ましい家族の姿を見ての感想を言っただけだと思っていた。だがそれがもし、己の姿と重ねていたとしたら?

 

店のショーウィンドウに飾られた真っ白な衣。目を奪われる様に立ち止まったウンス。

意味が分からずウンスに問うた。

「美しい衣ですね。ウンスはこのような衣がお好きなのですか?」

「う~~ん、どうかな。私には少し可愛すぎるかも?これは私よりもっと初々しい年齢の子じゃないと・・・ふふふ、でもやっぱり憧れるわね・・・・・」

うっとりするような、でもどこか寂し気に見つめるその姿に、何故あの時気が付かなかったのか。

後に気になって調べて初めて知った。

あの衣は、婚儀の時に女性が纏う大切なものだという事に。

 

久しぶりに外食でもしようと出かけた小洒落たビストロ。

店は落ち着いた雰囲気でありながらクリスマスの装飾が美しく施され、客もどこか特別な雰囲気で座る人たちが目に着いた。

「あ・・・ヨン見て。ガッツリは駄目よ?さりげなく・・・・」

ウンスが差す方向に視線を向けると、蠟燭を灯したケーキを挟んだ男女がどこか緊張した面持ちで見つめ合っている。

「あれが如何しましたか?少々、緊張しているようですが?」

「きっとこれから、プロポーズすると思うのよね・・・・・あ、ほらっ・・・・・」

男が女に小さな四角い箱を手渡す。女はそれを受け取り・・・・・

小さく聞こえた「はい・・・よろしくお願いします」

どこからともなく、その言葉と同時に周りから拍手が沸き起こる。男は照れた顔を隠すこともなく立ち上がり、拍手を送る客に向かって小さく何度も頭をさげていた。

「あれは何ですか?」

「プロポーズ・・・・男性が女性に婚姻を申し込んで受け入れてもらえたのよ。ああ、良かったわ~~」

と、知らぬ他人の婚姻に涙ぐんで拍手を送っているウンスを不思議に思いながら見ていた。

 

婚姻は、何も特別な時にする必要はないが、その行事に力をもらい背を押されながら思いを遂げる者は少なくはないのだろう。

婚約の先に待っている結婚。そして子供・・・・・

女性が描く適齢期が幾つなのかは知らないが、ウンスは充分魅力的な年齢であり、それを願ってもおかしくはない。否、相手が居れば自然と考える頃合いなのだろう。

俺が・・・それをウンスの頭から離させている・・・・・

 

そう思うと、申し訳なさが湧き上がる。

俺はこの地で一歩、今この時期に進んでも許されるのだろうかとまだ戸惑う。

その一方で、今まで夢見ることを叶えてあげたいと。二人で幸せになりたいという思いが膨れ上がる・・・・


 

今年も最後の1日となりました。

今年もお付き合いいただき、本当にありがとうござました。

ガタのきた体に鞭を入れながら?(笑)こうして皆様と会話することが出来ることを本当に幸せに思います。

 

どうか、来年も皆様に幸せな1年が訪れますように。

そしてまた、ここに遊びにいらしてくださいね。

 

今年もお世話になりました。

素敵な新年をお迎えくださいね(⋈◍>◡<◍)。✧♡

 

ままちゃん