弟の裁判が行われたのは午後だったのですが、同じ日の同じ法廷にて、共犯3人のうちの2人の裁判(審理)も午前中に行われていました。

私は弁護士の先生から時間を聞き、その二人の裁判を傍聴してきました。

じつは、事件の主犯となっている男性とは以前弟に紹介され会ったことがありました。
1年前の弟の誕生日に近い日、私はちょうど住んでいた福岡から東京に用事で来ていました。弟に誕生日のプレゼントを渡しに弟の住む町へ行きました。
『ねーちゃんに、紹介したい人がいるんだ』
といって紹介してもらったのが、主犯のT君と後輩二人。一人はホスト風で整った顔立ちの24才、もう一人はまだ幼顔がのこる20才くらいの男性。この二人も事件に大きくか変わっているのだが、ここで説明すると長くなるので、またの機会に。


今回の事件の共犯者のうち私が会ったことがあるのが主犯のT君。あとの二人は名前も聞いたことがなく、でも二人ともまだ20代前半で弟より全然若い。そのうちの一人はたぶん弟と同じようにあとから加わったメンバーでもう一人は以前からT君と詐欺をしていたようだ。


先に共犯N君の裁判。傍聴に来ていたのは私の他に、とてもきれいな若い女性が斜め前の席に着席していた。きっと彼女なんだろうなぁ、、、と思いながら目が合いお互い軽く会釈をした。

共犯K君の裁判にも背の高いスレンダーな女性と小学生なるかならないかくらいの女の子。K君のお子さんのようだ。K君が法廷に表れ自分の娘に気がつくと小さく手を振り、微笑みを向けていた。


二人の裁判も内容は、ほぼ全員が同じ供述をしているようだった。
罪状認否と次回裁判の予定を立てる。


傍聴に来ていた彼らの関係者を見たときに、とても悲しく寂しい気持ちになった。
私の弟と同じように、あたりまえだけどそれぞれの人生の物語がそこにあって、彼らはこれから何年も刑務所に服役しなければならなくて、彼女や奥さんや子供たちもまた、彼らと同じように悲しくて寂しく、つらい日々を過ごすことになるのだろう。きっと本人以上にやるせない気持ちを抱いているに違いないと思う。


弟が面会で言った言葉が頭をよぎる。

『こんなことになるなんて、、、』


彼らのうち、一体何人?だれが?こうなることを予想していただろうか。それとも、みんなこんなことになるなんて思っていなかったのか。
今が人生の分かれ道?
すでに岐路は過ぎ去ってしまった?


長い間、身柄を拘束され初めて面会ができたのは逮捕されて4ヶ月がだったころだった。それぞれどんな思いで4ヶ月を過ごしたのだろう。


人生の分かれ道は、きっと毎日毎回あるのだと、裁判が終わった帰りの車の中でそう思った。
毎日が、自分がどう生きるか、私たちは選択している。

弟は私に言った。
『ねぇちゃん。後悔ばかりだよ。振りかえって考えるとチャンスはいくらでもあったんだ。なんで、あのときもっと仕事きつかったけど頑張ってたら、、、ねぇちゃんがずっと福岡に来いっていってくれてたのにあのとき言ってれば、、、』
共犯の人たちと友達になったとき、、、
詐欺の話を耳にしたとき、、、
その話が自分に来たとき、、、
なんで?なんで?なんで、おれはそれを選択してしまったのか?
どんなになにかのせいにしても、自分で責任をとるしかなく、誰のせいでもないことは自分が一番わかってて、だからこそ苦しい。

毎日、毎回、一瞬いっしゅんが人生の選択とその連続の先に今がある。

もう、選択の余地は残されていない彼らのこれからの人生はいったいどうなっていくのだろうか、、、


なんとも言えない気持ちが私を襲っていた、、、