「 こんばんは 」
この時間帯、この状況で
話しかけてくる男性なんて どうも怪しいんですが
( 今思えば )
当時は 職場の上司に
「 病院から一歩でても あなたたちは 病院の顔。
いつも どこからか 見られていると 思って
きちんと していてください。 」
朝昼晩、とさんざん 言われていました。
とくれば、おのずと この 紳士への対応もきまるわけで
「 こ、こんばんは 」
「 あそこ、の職員さん・・・? 」
暗闇に 病棟の窓が 四角く浮かび上がる方を
指差して、 紳士は 聞いてきた。
「 は、はい。そうです 」
あたりは ほとんど街灯がないので
住宅の明かりだけで 紳士を確認。
黒いキャスケット帽
足元は、ローファーに黒の靴下。
胸元まで ボタンをとめた
黒い スプリングコートのようなものを
羽織っている。
( えらく ひらひらした コートだなあ )
あんまり、みたことない、 男性のAラインのコート。
どうも、紳士の口ぶりでは 私を看護婦さんと誤解しているよう。
「 この時間に、帰りだと 準夜あけの日勤? 」
「 僕も 何年か前に お世話になったんですよ。 」
「 3階東病棟の Sさん お元気かなあ。あと、外来のIさんとか。 」
職員さんの名前がぞろぞろ出てくるので
新米入社の私より はるかに 病院事情に詳しそう。
( 患者さんなら、へんな人じゃないよね )
↑ 今なら こんな考え ありえませんが
当時私は 医療従事者として 患者様とドクターの
パイプ役になるべく 精進し始めた頃。
変な人なわけ、ないじゃんか ε-(´∀`*)ホッ
安心しきって ぺらぺら会話する 私。
Aさんの 右手が 胸元とおへその辺りを
行ったりきたり している様子を
何の不思議もなく 見つめながら・・・・・。
またまた、 つづく。