管見談 第二 士人 その16

 福嶋多仲が城代を勤めた時、二の丸内の空き地に漆の木を植えるようにと多
仲にお尋ねがあった。このとき城内の空き地は万が一の時に軍兵を入れる場所
なので成り立たないと言って断った。多仲がお役御免になると、すぐに植え立
が実施された。御林方というものは国中の林を取り量る役として林もそれぞれ
にわけがあって、あるいは備えのためまたは水を養うためなどに昔からの習慣
を守ってきたが、今は上からの指図でどこでも伐ることになったとのこと。す
べて役目に古いしきたりや決まりがあり、昔の人は厳しくそれを守り権力も恐
れず、言うべきことを言い、成すべきことを成して固く役儀を勤めた。凡そ昔
の士はこのように忠実で律儀であることで、頼もしいことである。