このシリーズは、もう二度と山に登れなくなった筆者が、昔よく行った山と、コースについての思い出話です。何しろ運転すらできなくので、昔行った山々も列車・バスから遠望するだけになりました。

 本当に残念で仕方ないのですが、これから山歩きでも始めてみようかなと思う方々の、何かの足しにはなるかもしれないと思って書いてみます。とはいっても、登った印象で書いていますので、詳しいコースについては、「ガイドブック」をご確認ください。また最近聞いたのですが「YAMAP」というアプリはすごいらしいですね。地図、コンパス不要、他の人の登山記録も読めるってにゃあ便利な時代になったものです。さて、まずは一番よく登った「九重」からスタートしましょう!

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 私が初めて山を体感して、「山好き」のきっかけになったのは九重です。
 今から40年前の岩田屋百貨店時代、隣の会計課にいた古賀原氏(以下K氏という)が企画した「九重山登りツアー」(牧ノ戸峠から久住山へ)でした。当時は経理部内にも若い男女も多く、彼はそのまとめ役でした。K氏との出会いがなかったならば、山にはまることはなかったと思います。
 

 ゲストハウスのある牧ノ戸峠(1330m)に車を止め、メンバー8名?いざ出発。最初は沓掛山(1503m)への急で長いコンクリ道、15分ぐらいの登りでした。バテル人も出るなか、K氏は落ちていた枝を杖代わりに持たせて、何とか全員を登らせました。

 

(牧ノ戸峠にて、当時の経理部メンバー)
 山頂からの眺望は思いのほかGOOD!全員が歓声を上げます。
 ここから小さな起伏を越えて40分ぐらい進むと、扇が鼻(1698m)への分岐、そして高原の散歩道のような西千里ヶ浜に入ります。北側には崖のような星生﨑が、正面に円錐形の久住山がきれいに見えます。

 K氏は地図を取り出して、自らの経験を面白おかしく解説してくれました。沓掛の登りでバテたメンバーも平地で元気を取り戻します。岩の尾根を乗り越すと真下に避難小屋が見えました。ここで大休止の後再出発。もう目指す山頂は目の前です。

 北千里ヶ浜から上がってきた「九重分れ」を過ぎると、石ころだらけの道をだらだらと進みます。すぐそこに見えるのになかなか頂上に着きません。それでもなんとか40分余りで全員無事久住山頂(1787m)へ登頂しました。


 天候にも恵まれ、何といっても眺望がすばらしい。噴煙を上げる阿蘇の山々から、近くの空地、天狗ガ城、中岳。その向こうに三俣山、平治岳、大船山。初めて見る大展望に度肝を抜かれました。

 

(久住山頂にて:2014年)

 

 また当時の百貨店には平日に定休日があって、休日とは比較にならない人の少なさもよかったのでしょう。爽快感・達成感とともに、「これぐらいで頂上まで着けるんだ」という体力面でも自信になりました。これがはまる原因となります。


 K氏はその年の夏、「北アルプスへ行こう」と言い出し、昔の仲間も誘って、上高地まで車で行きました。当時はまだ中国地方の高速道路がつながっておらず、お盆の渋滞とも重なって丸一日(25時間)かかりました。その後もほぼ毎年、時期を変え、メンバーを変えつつ計6度も行くことになります。(別稿に一部記載しています)

 その後、知り合いになった山好きさんと福岡近郊の山をめぐる一方、自分でもガイドブックを購入していろんな山・ルートを探索して登るようになりました。


 山はそれぞれに特徴があり、標高だけではなく、ルート、歴史、植生、形状(傾斜、岩、草原等)、眺望、また季節によっても全く違う様相を見せてくれます。

 「きついのに何で山なんか行くん?」とよく聞かれますが、「行ってみらんと分からんめえが(行ってみないとわからないでしょう?)」ということにしています。連れて行ったあと、「二度と行かん」という方もいますが、逆に私のようにはまった人もいます。人それぞれでした。

 


※当時、いつも行動を共にしたガイドブック「マイカーで行く九州の山歩き」(葦書房、渡部智倶人著82’)です。もうボロボロですがこれだけは捨てられません!


(追伸)
このルートは、その後私自身が初心者を連れていくルートとして何度も使わせていただきました。また、さほど危険なところもなく、かといって積雪は甘くなく、アイゼン・ピッケルを必須とする冬山の初心者向け練習場所としてもお勧めします。
 それと、「九重山」と「久住山」の違いですが、九重山は九重山群の総称として、久住山は単独の山を指すと決められているそうです。

 

(続く)