さて、今回は日本アルプスで最も難しいと言われているコースに無謀にも?挑戦した記録です。それではどーぞ!

 

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【 予定ルート 】

上高地-西穂山荘(泊)-独標-西穂高岳-間ノ岳-天狗のコル-ジャンダルム-馬の背- 奥穂高岳-穂高岳山荘(泊)-涸沢岳-北穂高岳-北穂高小屋-大キレット-南岳-大喰岳-槍岳山荘(泊)-槍ヶ岳-槍沢-横尾山荘-上高地

  

 いつもの岩田屋山好きグループで夏のハイシーズンに決行した。

 今回は、北アルプスのさまざまなルートの中でも、特に危険な部類に入るので、荷物を少なくするため小屋泊まりとした。山では早発ち、早着きが大原則。高山になると午後からガス()が出やすくなるし、にわか雨も多いのでこの原則は守るべき。

 

焼岳の姿を拝みながら、田代橋、穂高橋を渡って西穂山荘へのルートに取りつく。単調な登りから急登を経て稜線へ、稜線を右に行くとすぐ西穂山荘だ。明日の朝食用のおにぎりを用意してもらい、西穂山荘を夜明け前に出発。ガス()がひどい。

西穂独標で夜が明け、朝食をすます。西穂高岳を過ぎると道が急に悪くなった。ルートがはっきりせず、○印と踏み跡を探しながら進む。浮石が多くて、足元も安定しない。靴で砕石を抑えるように歩を進める。落石を起こすと、下にいる登山者に当たって事故になる。小さな落石が、下に行くにつれて大きくなる時もある。注意!注意だ。もし落石を起こしたときは、大きな声で「落!」または「落石!」と叫ぶ。何度か叫んだ。

 

 P1P2P3と呼ばれる岩峰の上り下りを繰り返す。クサリ場も多い。P3に上ると目の前に間ノ岳の崩壊壁がそびえたつ。ほんとルートはあるんかいと思われるほどの厳しさ。三点支持(両手両足のうち3点を確保したうえで、1点だけを動かして岩場を上り下りする技術)を守って、ゆっくりと登る。あれっと思ったところが間ノ岳頂上だった。

 

 降りて間天のコル、登って天狗の頭を超え、また降りて天狗のコルで大休止。コルから畳岩の頭、さらにコブ尾根の頭まで登ると、ガスの切れ間から目の前にジャンダルムの岩峰がそびえる。巻道もあるが、せっかくなんで登ってみた。 だいたいなら奥穂が目の前に見えるはずだが…。

 

 降りるあたりから、だんだん天候が悪くなってきた。その時「おーい、足場どこ?」とサブリーダーの声が。振り返ると足が宙に浮いている、足場を見失ったらしい。「左」「左」とアドバイスして事なきを得た。しとしとと霧雨が落ちてきた。ガスも濃くなってきた。

 

 続いてロバの耳、一瞬ガスが晴れたとき、後方の岩峰からザザーと落石の音がした。女性単独行の登山者が道を誤ろうとしていた。「そっちやない、もっと右右」と声をかけた。次は馬の背、岩もしっかりしていて幅1メートル以上あるので、歩いても行けるのだが、雨で滑るのが怖いのかみんな這っていた。登りつめると奥穂山頂だ。晴れてると大展望なのだが全くガスの中。早々に出発して、穂高岳山荘に宿をとる。

 

 みなで高価なビールを飲んだ。サブリーダーの靴底がはがれかけていて、これ以上進むのは危険とリーダーが判断、今回も途中断念、涸沢へ降りることを決めた。しばらくすると、声をかけた女性単独行の登山者が小屋に到着した。話を聞くと神戸から来た山用品の店「好日山荘」の従業員だそうだ。どおりで一人で行こうとするんやなと思った。

 

 翌日もガスの中だった。好日山荘の彼女は槍を目指して我々より早くに出発した。我々は下山だ。ザイテングラートの急な尾根を下る。途中から晴れてきた。涸沢カールは北アルプス有数のテント場で、色々なカラーのテントが花開いていた。テントを横目に見ながら横尾谷を下山した。

 

 今回は天気に恵まれず、だれも写真を撮っていなかった。しかし写真がなくても記憶に残るので、私は気にしない。現に相当な時間がたってもよく覚えてるものだ。