社長をやっていると、いろんな人と会う機会があるのでいろんな情報が来る。ネットワークが一番多いかな。その他いろんな会に誘われる。時間がとられるのが嫌なんでほとんど断っていた。

  その中で、「これはよかったな」と思うのが「倫理法人会」である。「倫理法人会」は全国に600余りの拠点があり、会員数7万人ぐらいの、心の経営を目指す経営者対象の勉強会である。

世間では、「宗教ではないか」とか「怪しい」とかいう向きもあるし、実際私も初めはそう思った。しかし、今は社長職を降りてフリーとなり、また会の中である程度の役職までやった私が、入会した当時の話をしてみたい。

 

 倫理法人会に入ったきっかけは、私の店の取引先、リサイクルショップで出るゴミを片付けてもらっていたIさんからであった。もう10年前になる。

 いつものように店に来ていた彼が、突然「経営者の勉強会に来ませんか?」とか言う。

私、「Iさん、何言っとるんですか、今は店つぶしたばかりで、そんな精神的余裕はないですよ!」

 当時の私は、1号店の成功に酔い、調子に乗って出した2号店をわずか1年半で閉店、3千万の損失を出して経営的に非常に苦しい時期であった。

 

 その後も、彼は何度か話を持ってきたが、全部断ってきた。8月末、余りに彼が言うもんですから、「わかりましたよ。あんたがそこまで言うなら一度行きますよ。いつどこでやってるんですか?」

彼「○○駅前のホテル△です。6時からです」私、「Iさん!6時なんて営業中じゃないですか。そんな時間行けませんよ。」彼「いや、朝の6時です」私「えっつ!そんな時間無理ですよ、大体小売業は朝が遅いので、そんな時間には起きれませんよ」と断ります。しかし、彼はまた来て言います。「わかりましたよ。あんたがそこまで言うなら、一度お付合いしましょう」と目覚まし時計とセットして、まるで山行きの時のように早起きして会場に向かった。

 

 入口では、きちんとスーツを着た方々が、「おはようございます」ときちんとあいさつされる。「ほっ!まじめにやっとう会やん」。受付で何やら本を渡される。眠たいので本は開かず、彼の横の席に座る。

 

 開始時間の6時、ベルが鳴って、いきなり歌を歌い出した。「なんじゃこら!」「宗教やんか!Iさん勘弁してや!」と逃げ出したくなったが、席が3人掛けの真ん中だった私は動きが取れなかった。

次は入口で渡された本を開けという、読み合わせみたいのが始まった。「あーあ!」と思った瞬間、そこに書かれている一文に目が行った。

「運命自招」(運命は自ら招き境遇は自ら作る)

後、周りはその続きを読んでいたが、私はその文が気になって考えた。「そうか、今のクソドツボ状態は、俺のせいなんか?」

 

 実はその時は、借金返済に追われる日々で、自らも報酬がもらえない。ちょうど大学進学した長女の学費が払えない(実は赤字穴埋めに使っていた)。カミさんからも「あんたが、いらんこと2号店作らんやったら、こげんなことにならんやったんに!」と言われ続け、「うるさい、仕方ないやん」と離婚寸前状態!

 

 しかし私自身は「えっくそ!賭けに負けた!」ぐらいでまるで他人事。そして「こんな物件、紹介した本部が悪い」「オープンした時期が付いてなかった(ちょうどリーマンだった)」、「担当者がバカタレやけんたい」、「従業員が問題ばっかし起こすからや」「競争相手が次々に店作るんで、それに対抗しよっただけやん」とすべて人のせいにしていた。家族・従業員に対してひどいことをしているにもかかわらず、超わがままな私はなんて思わなかった。

 

 「そうやな」確かに、俺が一番悪いかも。この大失敗は自分のせいや、こんな状況を招いたのは自分やんと初めて思った。

1時間きっかりで会合(モーニングセミナー)が終わり、食事会に誘われた。そこで「Iさん、この会の言いようことはいいね!」とその場で入会申込書を書いた。

 

 実は閉店前後は、色々と変な悪いことが続いていた。一つは通勤途中で、運転していた軽トラがスリップして横転した。二つ目は1号店に泥棒が何度も入って、3百万ぐらいの被害を受けた。3つ目は電話投資詐欺にあって給与資金の1.2百万をとられた。店は潰すし、何でこんなことが続くんやろうと思っていた。

 

 Iさん「会員になったから、倫理指導が受けられますよ。」「何ですかそりゃ?」「悩み事相談室みたいなものです」「タダなら是非」で先生に話を聞いてもらった。

私は、経営相談みたいなものかと思ったので、財務諸表とか資金繰表とか持って行ったんだが、全然違った。

 いきなり「あなた、お墓参りしてます?」「えっつ!いや盆と彼岸ぐらいです」「それじゃいけません。月に1度行ってください。家に仏壇ありますよね?毎日拝んでますか?」「いや、したことないです。」「お母さんが入院しているそうですが、お見舞い行ってますか?」「いいえ月1回ぐらいです。」「それではダメです。親祖先を大事にしない人に成功者はいませんよ」

「そうなんですか」目からうろこでした。

 

 それ以降、モーニングセミナーにはほとんど参加して、いろいろ勉強した。

「大失敗」の原因は、わがまますぎる私の人間としての未熟さにあったことが分かってきた。渡された本(万人幸福の栞)は、これに書いていることを理解して実際やっていくと、会社も家族関係も不思議とよくなっていった。ある意味倫理法人会に出合わなかったら、会社はもう早くに潰れていただろう。

「うそでしょ!」「騙されてますよ」と思われるかもしれませんが、この本を読んでみて、書いてあることを実際にやってみてください。何かしらいい結果が出ます。

 

 今は病気のせいで足の感覚が鈍く、運転がかなわないので、早朝のモーニングセミナーに出ていけませんが、この会は本当に入ってよかったと思っています。この病気自体も私の人生に意味あるものだろうと思うし、単に病気になったんではきっとない。今は息子がそこで役員として頑張っているみたいです。

 また私は行ったことがないが、社長以外の一般の方を対象とした「家庭倫理の会」というのもあるそうです。