私の情けない言動で、今朝も妻を怒らせてしまった
私が犯したあの事件が発覚してから1ヶ月が経つのに
妻のかけてくれる言葉、時には厳しく、時には暖かい言葉
私が犯した罪を反省し、前を向いて進むしかないはずなのに
何て情けない、何て恥ずかしい男なんだ、俺の一物はどこにあるんだ
情けなくて、情けなくて、情けなくて
 
何故、そうなんだろう
会社の役職、世間体、プライド、こんなものは必要ない
そんなこと言ってられないはずなのに心の中をドンドン占領してくる
自分では考えてもみなかった、昇進できなかったことへの
ねたみ、そらみ、うらみの心にまみれ
底知れない欲に犯され、欲にまみれ悪魔の囁きに引き込まれ、飲み込まれ
全財産を失い、途轍もない借金をしてしまった自分
 
妻は健康のために酒を飲まない
一諸に仏教を学ぶことだけを条件に許してくれたのに
今日も言ってしまった
 
妻は、あなたがそんなんだったら、変われないんだったら
私が正気でいられなくなるから、一人で生きていくと言った
何度、同じことを言わせるの、次言ったら、緑の紙書いてもらうからね
 
生まれ変わりたい、時間を巻き戻してほしい
詐欺に引っ掛かかる前に戻りたい、そんな気持ちが心の中を占領してくる
ダメだ、そんなことでは妻に捨てられてしまう
何も知らない息子を裏切ってしまう
私の母、妻の両親を裏切ってしまう
 
今のこの気持ちを自力で解決することは到底不可能だ
妻と約束した仏教に頼るしかない
阿弥陀様のお力に頼るしかない、すがるしかない
 
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏
ずっと唱え続けている、ずっと唱え続けている、唱え続けている
 
妻が学んでいる仏教の教えの後生の一大事に比べれば
今起きていることはどんなことも小事
どんなにつらいことでも、乗り越えられないことはないそうだ
 
妻は私のウソに気付き、私が騙されていることを悟った3時間後
平静の面持ちで私の前に現れた
何故、そんなことができたんだろう
 
それに比べ私は、1ヶ月が過ぎた今でも
会社で楽しそうに話をしている人達を見ると落ち込む
こんなこと、決して会社にバレル訳にはいかない
 
気持ちを振り絞って、前を向こうとする
人と話している時は割と普通でいられるが
ちょっと時間が空いたりすると
真っ暗な闇が私の心を支配してくる
負けたくない
仕事だけは、しっかりしなければいけない
妻と子供の生活を守るために
給料をもらっていかねばならない
借金を返していかねばならない
全部、自分が犯した罪なのだから
 
詐欺師達に乗せられて行っていた愚かな行為が
どんどんフラッシュバックされてくる
悪魔の囁きに浸っていた時は
全く今の現状、こうなることが分かっていなかった
リスクがあるはずなのに、真剣に考えようとしなかった
 
仕事でも部下の人事評価、自分の人事評価
将来を考えて、もっと上げてあげれば良かったはずなのに
今までどおりの評価を繰り返していた
自分の評価もそうだ
何て愚かなことをしてしまったんだろう
何て取り返しのつかないことをしてしまったんだろう
そういった気持ちがドンドン入り込んできて胸が苦しい
ハァッと思う気持ちが、これからどうしようという気持ちが
胸を締め付けてくる
 
気を取り直して、前を向いて進むことしか道は無いのに
こんな気持ちから解消されたい、どうすればいいんだ
 
仏教の教えでは何といっているんだろう
私よりも、もっと悪いことした人はたくさんいるはずなのに
何で私に降りかかってきたんだ
 
仏教本の中に書かれている、悪いことばかり読みたくなる
一通り読んでみたが見つからない
私より悪い極悪人はいない
私は善人だと思っていた、顔も姿も心根も善人だと思っていた
鏡を見てみる、これが極悪人の顔だ、極悪人の顔なんだ
 
仏教の本に書かれていたことは
すべては自因自我、すべて自業自得なのだ
 
些細なことだと思って妻にウソ付いていたこと
妻や息子の話を真剣に聞いてあげなかったこと
部下の話を聞いてるようで、話半分しか聞いてなかったこと
こんなことが積もりに積もって溢れ出した結果
こんなことになってしまった
 
仏教の本の中にもそう書かれていた
全くもってそのとおりだと思えた、すべて私の悪業のせいなんだ
自分でけつをふくしかない、そうするしかない
そう分っていても
苦しい、苦しい、苦しい
助けて、助けて、助けて
 
誰に救いを求めるのか、誰も助けてくれない
ハハッ、何てバカなやつ、自分でやったことなんだろう
誰も助けてくれない、そんなの分かりきってる
助けてほしい、助けてください、助けてください
 
妻に泣き事は言えない、言えないはずなのに言ってしまい
あんた、何も変わってないじゃない
何も行動していないじゃない、そんなんだったら終わりだよ
妻の言葉から、仏教にすがるしかないことに気付かされる
 
家が浄土真宗だというだけで、仏教のことなど全く気にしない
実家に帰ったら、仏壇に線香をあげて、親父、爺ちゃん、婆ちゃんに
帰ったよと挨拶するだけ、お盆の墓参りするだけ
誰かの葬式で合掌して、安らかに眠ってくださいとお祈りするだけだった
 
こんな私が、絶望のどん底に叩き落とされ、仏教に頼ろうとしている
阿弥陀様に助けを求めている
阿弥陀様、阿弥陀様
私をお助けください、私と家族をお助けください
 
何て都合がいいんだろう、仏教をそしる気持ちなど一つもないが
阿弥陀様、阿弥陀様、仏様に頼ろうとしている
何て都合がいいんだろう
 
妻に強制的に、仏教をやれと言われてから知ったこと
人は皆極悪人であり、1日に何億回も悪いことを積み重ねているから
必ず地獄に落ちるんだそうである
私だけではないらしい
地獄に落ちないためには、仏教を聞き、阿弥陀仏を信じ
念仏を唱え、仏法を聞き続けなければならない
仏法を聞き続け、念仏を唱え続けた結果、
生きたまま阿弥陀仏に救われるのだそうである
考えもしなかったことだ
でも、今の自分は仏教にすがるしかない
阿弥陀様に頼るしかない、念仏を唱えるしかない
 
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏