詐欺だと分かってからの2週間、

私は何が起こったのか理解できず茫然自失、

事件が起きたことを信じられず、眠れず、

胸が張り裂けそうな夜が続きました。

眠ることはできても、2時間もしたら

手足の指先や胃腸、時には頭までが熱くなって、眠れなくなりました。

なぜ、どうして、こんなことになってしまったんだ、

どこで、何が狂って、どうなってしまったんだ。

 

妻に相談もせず、家族のため、親戚みんなのためだと思って

私がやっていたことは、実は単純な振り込め詐欺だったことを、

頭が、脳が、受け入れようとしてくれません。

苦しくて、苦しくて、苦しくて、死んでしまいたたいと、

何度も、何度も、何度も考えました。

 

しかし、私が死んでも家が残るだけで借金は無くなりません。

妻や息子や家族に迷惑かけるだけ、全ては私の自業自得、

自分でそのツケを払っていくしかない、そう分かっていても

私の脳は他の何かに責任を押し付けようと考えるばかり、

一向に前に向かって進むことができません。

 

警察に被害届を出しに行きましたが、犯人が特定できない限り

被害届は出さない、捜査が困難なので真剣に対応してもらえない

警察の対応はその程度なんだということが分かりました。

妻は、行ったって時間の無駄よ、全てお見通しでした。

そんな、取り返せもしないお金のことを今更、反省してどうなるって言うの?

そんなことより、どうやったら、この先暮らしていけるのか?

どうやったらお金を生み出していけるのか? 考えるしかないじゃない

ウジウジ暗い私を見るのが一番ストレスだわ、それが妻の口グセになりました。

 

もっともな話です。

こんな、とんでもないアホで、とてつもないバカで、呆然自失な私を

支えてくれたのは、妻と妻が学んでいる仏教でした。

 

仏教の本を読むと、私が行った間違いが何故起こったのか?

その真理が、目の前にある本の中に全て書かれていました。

何故、もっと早く読まなかったんだろう

もっと早く読んでいれば、こんなことにはならなかったのに、

私は過去ばかり振り返り、一歩も前に進むことができません。

 

こんな私を見た妻は、あなたはこんなことが無かったら、絶対に読まなかったよ。

仏教、フーンって感じだったじゃない、絶対に聞かなかったよ

私が何を言っても、いつも話半分、人の話なんて何も聞いていないじゃない。

 

確かに、妻の言うとおりでした。

一生懸命仕事しているからいいんだ、と思い込んでいる自分、

家族のことを大切にしているようで、家族のことに全く関心が無い自分、

そんな自分が、この詐欺事件をきっかけに明らかになり、

家族の夢や希望、将来を奪い去った大悪人で極悪人の自分がそこにいました。

 

妻は、ずっと前からこう思っていたそうです。

夫婦間にトラブルは無く優しいけど、私の話なんか何も聞いてくれない。

私のことなんか全く関心がない、そんな寂しさをずっと持っていたそうです。

子供のこと、育て方、彼女の胃腸から来た精神不安の病気のことなど

それらが募って、何度も別れようと思っていたそうでした。

 

そんな彼女の気持ちを一つも理解できていない、仕事して家に帰ってきて

掃除や洗濯、庭仕事など、家のことはしっかり手伝っている

子供の面倒もしっかり見ている、彼女や子供の生活も問題ないと思い込み、

彼女や子供の話を真面目に聞かない自分だったことに気付かされました。

 

何てひどい罪を犯してしまったんだ、何度反省しても、何度反省しても

消えたお金は決して返ってきません。

こんな、とんでもない大悪人の私に文句を言いたくてしょうが無いはずなのに

妻は自分が文句や悪いこと言ってしまうと、仏教でいう「悪い種まき」になるので

それが嫌だからといって、こんな私でも、必死に支えようとしてくれました。

 

「悪い種まき」とは、仏教では「悪因悪果」というそうです。

日頃から悪い言動や悪い行いをしていると、それが全て自分に返ってくる

というものです。生まれる前の過去に行ったこと、今生きてる現在、

そこで行ってきた悪い行い、悪い種をまくと、それは必ず芽を出し

自分の身に降りかかってくるそうです。

心で思っていることが自分の運命を決めてしまうのだそうです。

自分は他の人に比べ、周りの方から話かけ易いみたいで、いろんな人から

いろいろ相談を受けるし、信用もあると思い込んでいました。

 

でも、肝心要な家族の話を全然まともに聞いていなかったのです。

仕事も一生懸命しているつもりでしたが、そこでも、部下の話をしっかり

聞いてあげなかったり、ながらで適当にやっていたり、家庭に限らず

仕事でも、悪い種まきをし続けた自分がいたのでした。

それらの悪い種がいっきに芽吹き、今回の詐欺事件を変だと思いながら

強欲を抑制できず、詐欺師のさくら達に踊らされ、カモにされ

どん底のどん底まで、つき進んでしまうことになったのでした。