1410 【子規】明治27年 四童 Mail URL 2003/12/06 16:22
虚子選を読んでいる訳ですが、先に小室善弘編を読んで取り上げた重複句も
「既出」と記載することにより、虚子選明治二十七年の印象を伝えたいと思いま
す。そうしないと歯抜けで散漫になってしまうので。
明治二十七年は、前年までに比して削ぎ落とされた写生の句が増えている感が
あります。「行く人の」「天地を」など滑稽の句もあるにはあるのですが。
○日のあたる石にさはればつめたさよ
既出。
○行く人の霞になつてしまひけり
既出。
○板塀や梅の根岸の幾曲り
○根岸にて梅なき宿と尋ね来よ
梅の盛りの根岸の雰囲気を伝えます。
○其まゝに花を見た目を瞑がれぬ
既出。
○絶えず人いこふ夏野の石一つ
既出。
○人も無し牡丹活けたる大坐敷
○昼中の堂静かなり蓮の花
花との配合により静寂の空気感を表現しているようです。
○何笑ふ声ぞ夜長の台所
視覚の遮られた世界での写生なのでしょう。
○鶺鴒や水痩せて石あらはるゝ
既出。
○赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり
既出。
○堀割を四角に返す蜻蛉哉
人間の生活と自然の何気ない共存が伝わります。まったくただの何でもない景
色に感興を見出すさまが感じられます。
○我が袖に来てはね返る螽かな
既出。
○鳥啼いて赤き木の実をこぼしけり
鳥ってそういうものなのかなあ。一般的にそうなのかどうかは定かでありませ
んが、とにかく子規がその一瞬を見、即吟したのでしょう。
○徴発の馬つゞきけり年の市
既出。
○天地を我が産み顔の海鼠かな
「混沌をかりに名づけて海鼠かな」というのもありましたが、どうも発想が
「混沌」とか「天地」とかに向かってしまうようで、ほほえましいです。
1409 【子規】明治26年 四童 Mail URL 2003/12/06 14:47
天気さん、百花さん、子規の鑑賞、ありがとうございます。私も続けます。
先に書いたように子規が「写生的の妙味」がわかったのが明治二十七年である
として、その前年には句作の上でもう少しのびのびといろいろなことをやってい
るようです。
○初日さす硯の海に波もなし
物書きの新年を迎えての気分が伝わってきます。硯の句では他に「硯賛」の詞
書にて「すゞしさや雲沸き起る海三寸」も。
○炬燵なき蒲団や足ののべ心
うっとしい炬燵を塞いだ気分が伝わってきます。
○雀より鶯多き根岸哉
そういえば鶯谷という駅もあの辺にありますよね。
○白魚や椀の中にも角田川
先に「凩や海を流るゝ隅田川」を挙げましたが、この角田川も怪句です。とれ
たての白魚を食する喜びを詠んだのではありましょうが、写生とは随分違います。
○岡あれば宮宮あれば梅の花
リフレインの技法に走った句も子規には珍しいような。他に「青梅や黄梅やう
つる軒らんぷ」も。
○草臥れてよし足引の山桜
十七音しかない中で枕詞を使うのも珍しいような。
○十三の年より咲て姥桜
こういう馬鹿馬鹿しい句、好きです。
○風吹て山吹蝶をはね返し
はね返すのが他ならぬ「山吹」であるのも、言葉遊びに興じている感があって
よいです。
○短夜の雲をさまらずあたゝらね
安達太良山は那須火山帯に属する標高1700mの休火山(嗚呼森澄雄的書き
出し)。「雲をさまらず」が旅の昂揚した気分を感じさせます。
○博奕うつ間のほの暗き暑かな
私は博徒ではないので実際のところは分かりませんが、お天道様の当たるとこ
ろで大っぴらにやるものではないと思いますので、この「ほの暗き暑かな」がよ
いです。
○盗人(ぬすつと)もはいる此家のすゞしさよ
これも馬鹿馬鹿しいシリーズですが、こういう滑稽がある時期から激減するの
です。
○涼しさのこゝを扇のかなめかな
位置や気分を定めるシリーズとでもいうべきものです。
○すゞしさの隣をとへば正一位
「王子松宇亭」の詞書。インターネットで検索すると同じ詞書の子規の句で
「春の夜の稲荷に隣るともしかな」がヒットし「正一位」の正体がお稲荷様であ
ることが現代人の私にも分かり、ようやくすずしそうな気がしてきます。同時代
の座に連なっていた人なら「そりゃそうだ」と爆笑したのでしょう、きっと…。
○幟たてゝ嵐のほしき日なりけり
幟→風の発想では、同じ子規の明治二十七年の句に「大風の俄かに起る幟かな」
があり、そちらの方が面白いと思います。後者は、もともと風が吹いているとこ
ろに幟を立てて初めて風を意識したであろう感興が感じられるので。
○妻よりは妾の多し門涼み
「根岸」の詞書。何気なく撮ったスナップ写真が後世の人にその時代の雰囲気
を濃厚に伝えるような、そんな感じがあります。
○門番の窓にわき出る蚊遣哉
子規以外の人が当時このようなものを句の対象にしようとしたのだろうか。
○雲の峰ならんで低し海のはて
子規には珍しいと思われる大景です。
○静かさは砂吹きあぐる泉哉
ああ、これは静かで不思議です。
○火取虫書読む人の罪深し
飛んで火に入る夏の虫、という奴ですね。余談ながら我々の世代は「飛んで
火に入る夏の虫」というフレーズ、どこで覚えたのだろう。
○我書て紙魚くふ程に成にけり
ああ、物書きの感慨なのでしょう。
○くひながら夏桃売のいそぎけり
売り物を食っているのでしょうかねえ。これは楽しい。
○ほろ←く→と谷にこぼるゝいちご哉
手をこぼれたる
後年客観写生の人たちによって量産されるような句だと思います。
○瓜ぬすむあやしや御身誰やらん
これ絶対虚子の「先生が瓜盗人でおはせしか」と同じ吟行の作だろうと思って
調べたのですが、虚子のは明治二十九年でした。
○妹に軍書読まする夜長哉
句として面白いのではなく、やっていることが面白いのだと思うのですが、お
構いなしに収録しているようです。
○立琴にから鳴絶えぬ野分哉
これはよい句だと思います。明治二十七年の句で「箒さはる琴のそら音や冬籠
り」がありますが、「野分」の句の凄まじさの方が格段によいです。
○白萩のしきりに露をこぼしけり
これも後年客観写生の人たちによって量産されるような句だと思います。
○縁日へ押し出す菊の車かな
縁日に並べられた菊ではなく、今まさに準備のために押し出しているさまを捉
えている点で、印象的です。
○犬吠て里遠からず冬木立
理屈といえば理屈ですが、ある種の冬木立の雰囲気を絶妙に捉えていると思い
ます。
(続く)
1408 守さん、ども 四童 Mail URL 2003/12/06 10:30
「莫迦正直な笛太鼓」というフレーズ、すごくよいのですが、如何せん「嘘つ
き」の後では付き過ぎの感が否めません。
「莫迦正直な笛太鼓」は本連句中の別の場所で使うことにして、ここではもう
一句考えて頂けませんか。
1407 全長句連句26 Mori Mail URL 2003/12/06 09:24
鶏頭花夜の一部が乾きけり 朝比古
過剰なる輪郭揺るる秋思かな 四童
金色のパゴタ聳へて月天心 振り子
姫椿支那の茶碗にほくろあり 守
春蘭や雲涌き初むる地の湿り 百花
うららかに馬に見られし頭頂かな 子
ウ 嘴をすぼめ巣箱に入りにけり 古
初夏の夢わさわさと乗車口 守
丸ビルに事務所を構へ雲の峰 童
秋鯵のぜいごのことに光りをり 花
秋澄むや母へにくまれ口ひとつ 古
隠し子に鵙鳴く空の匂ひかな 子
冬満月おひつじ座からおうし座へ 花
真向ひに金木犀茶の如きひと 守
朧夜の真珠のいびつ愛でてをり 古
見習が歯石を削る鳥曇 童
花茣蓙に兄弟子もなほ身の太く 守
かさぶたの膝こつくりと遠列車 子
ナオ 筑波嶺や雲ひとつなき夕茜 花
昨日から二人で暮らす学生寮 童
奥付に元号三つ明易し 古
明治通りを昭和の妖怪火の如く 守
皇紀二千六百年の碑農学校 花
流暢なフランドンなる豚の舌 子
嘘つきと新蕎麦啜る麓かな 童
薬掘る莫迦正直な笛太鼓 守
お捌きを
1406 全長句連句25 四童 Mail URL 2003/12/06 01:34
鶏頭花夜の一部が乾きけり 朝比古
過剰なる輪郭揺るる秋思かな 四童
金色のパゴタ聳へて月天心 振り子
姫椿支那の茶碗にほくろあり 守
春蘭や雲涌き初むる地の湿り 百花
うららかに馬に見られし頭頂かな 子
ウ 嘴をすぼめ巣箱に入りにけり 古
初夏の夢わさわさと乗車口 守
丸ビルに事務所を構へ雲の峰 童
秋鯵のぜいごのことに光りをり 花
秋澄むや母へにくまれ口ひとつ 古
隠し子に鵙鳴く空の匂ひかな 子
冬満月おひつじ座からおうし座へ 花
真向ひに金木犀茶の如きひと 守
朧夜の真珠のいびつ愛でてをり 古
見習が歯石を削る鳥曇 童
花茣蓙に兄弟子もなほ身の太く 守
かさぶたの膝こつくりと遠列車 子
ナオ 筑波嶺や雲ひとつなき夕茜 花
昨日から二人で暮らす学生寮 童
奥付に元号三つ明易し 古
明治通りを昭和の妖怪火の如く 守
皇紀二千六百年の碑農学校 花
流暢なフランドンなる豚の舌 子
嘘つきと新蕎麦啜る麓かな 童
秋の句で続けて下さい。ええと、では守さん。