早春 早春や左の耳に海ありて 川上弘美 「左の耳に海ありて 」とは何だろうと立ち止まる。聴覚の片側と視覚が遮断さ れているのか。連句的な観点から見ると、発句として一句を自立させるべき「切 れ字」と次句を誘導すべき「て止め」が共存している句型も、読者を不思議な世 界に誘い込むように感じられる。そして、あると言っているものは「海」なのだ。 「早春」とは、何かがなくて何かがある切ない季節なのかも知れない。