「にちにちへいあん」と読みます。
『日日平安』
山本 周五郎 著
映画『椿三十郎』の原作だそうです。
残念ながら映画は見ていませんが、こういうお話だったのですねー。
ぱんだのイメージでは「椿三十郎」はもっとお気楽なアウトサイダーでしたが、ちょっと違ったみたいです。
実はぱんだ、時代劇もけっこう好きで、その中でも特に『水戸黄門』と『三匹が斬る』が大好きなんです
『三匹が斬る』は浪人物で、高橋秀樹さん演じる「殿様」と役所広司さんの「千石」、春風亭小朝さんの「タコ」の三人が正義のため(?)に闘うと言う単純なストーリー。
特に役所さんの「千石」はこの手のストーリーに登場する浪人の典型みたいな感じ(^o^)
「椿三十郎」もそんなキャラクターなのかなぁ?
って漠然と思ってました。
映画は知りませんが、この原作のほうはそんなお気楽なだけのストーリーではありませんでした。
最初こそ主人公が他人の同情を引いて空腹を満たそうと切腹するふりをしたりしますし、事件を解決するあたりは時代劇っぽいのですが、それだけでは終わりませんでした。
さすがは山本周五郎、っていう感じです。
山本周五郎は1903年生まれ。
1967年に63歳の若さで亡くなっています。
「山本周五郎」はペンネームで、小学校卒業後に徒弟として住み込んでいた東京木挽町の山本周五郎商店の社長の名前らしいです。
きっといい人だったんでしょうねぇ、山本周五郎さん。
ペンネームとして使われるくらいですから・・・
で、作家の山本周五郎さん。
ぱんだは以前『青べか物語』を読んだことがあります。
浦安を舞台にした話しでしたが、当時の風景とか庶民の仕事風景とか妙に記憶に残っています。
読みやすい文章でした。
『日日平安』は短編集なのですが、他の作品もわかりやすく読みやすいです。
情景が浮かんできます。
『日日平安』の主人公の名は「菅田平野」といいます。
どこかの藩に仕官することを望んでいますが、現在は食べるにも事欠く貧乏浪人です。
ある日「菅田平野」はチャンスをつかみます。
藩内の不正をよしとしない若者たちが、城代を監禁している黒藤源太夫を討つべく決起しようとしているところに出くわしました。この状況をうまく解決できれば仕官がかなうかもしれない。と菅田は思い、若侍一党に助力を申し出ます。
そしてその企ては成功するのですが・・・
仕官が叶いそうになったとき菅田が取った行動とは?
そしてそのとき、菅田の機知で助け出された陸田城代はどうしたか?
ラストシーンはそぼふる雨の中で感動的に展開します。
映画のほうはどうだったのでしょうか?
解説によると、原作からは大いに逸脱しているということですが・・・
ただものではない「椿三十郎」
でも「菅田平野」は・・・
姿は平の・・・と解説者は表現しています。
たまたま浪人になってしまった普通の侍。
たまたま会社が潰れて職をなくした普通の人間が、職を求めて知恵を絞る。
ただ、その心の中には侍としての良心があり、恥を知る心があったということ。
椿三十郎なら事が成ったとき、豪快に笑って去っていくのかもしれない。
けれど菅田平野は、己の成したことへの結果とそれによって引き起こされた自分自身の感情にとまどい、打ちのめされるのですね。
そして・・・
ともかく、『椿三十郎』の原作と聞いて読むとイメージが違うかもしれません。
(映画見てないのでなんともいえませんが・・・)
でも、いいです。
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