今日もお気に入りの本棚から


浅田次郎大先生の

『椿姫』です。


当然と言えば当然なのですが、浅田先生の本は全て気に入り本棚に入っています。

読む前でも無条件に入ります。

そのくらい大好きなわけです。

『姫椿』は短編集で、表題作他7編が収録されています。

『姫椿』は倒産寸前の会社の社長が、偶然に昔通っていた銭湯にたどり着き、そこでの出会いによって過去の記憶を手繰り、人生を考えるという物語です。

が、そんなことはすっかり忘れていました。

なぜなら、わたしのお気に入りは別の一編、獬(シエ)』だからです。

『獬(シエ)』は、時々思い出したように読みます。

泣くために・・・。

主人公の鈴子はある黄昏時、ペットショップで獬という動物を譲り受ける。

10日前に中国人らしい男が伝説の動物だといって預けていったのだが、引き取りにこないというのだ。

獬を引き取った鈴子は、毎晩自分の悲しい人生を問わず語りに語り続けた。

二人の生活は穏やかに過ぎていくのだが、やがて別れの日がやってきた。

「スーちゃん」

獬が言う。

「ぼくはスーちゃんが好きだ。五千年も生きて、数えきれない人と会ってきたけど、スーちゃんが一番好きだ。

なぜだか、わかるかな。それはね・・・」(文春文庫 浅田次郎著『姫椿』より)

・・・書き写してるだけでこみあげてくるものがあります。

わたしはこの部分、実は朗読します。

一人で・・・泣きながら・・・

ここからラストまでわずか3ページです。

これを読むだけで涙がだらだら流れます。何度読んでも。

人間は泣くことで癒されたりします。

落ち込んだときとか、何もしたくなくなったとき、この文章を読んでとりあえず泣きます。

泣けるとわかっているのでやっぱりこの部分を選びます。

朗読し終わると、なぜかすっきりしてます。

なんかすごいです。

なのでこの本、特に巻頭のこの短編はわたしにとって特別なものと言えるかもしれません。

もちろん、浅田先生の本はたいていが特別なのですが・・・

もはや信者です。(^▽^;)

余談ですが、以前東京の八重洲ブックセンターでのサイン会で握手していただいたことがあります。

感動でした。やわらかい手でしたよ。

サインをもらってからも本棚の影からこっそりそのお姿をのぞいてました。

うっかり目が合ってしまいました。視線を感じたのかもしれません。

かなり怪しいぱんだだと思われたかもしれません。

でもストーカーなわけじゃないです。念のため。


浅田 次郎
姫椿 (文春文庫)