韓国・ソウル視察 報告
昨年の暮れに やっと時間が取れたので、韓国ソウルに視察に行って
きました。 視察旅行について報告します。
韓国・ソウル英語村
視察旅行 報告書
◎ 視察の日程・行程
12月27日(火曜日)
10時半にセントレアを飛び立ち、ソウル仁川空港到着は12時半。
空港では通訳兼ガイドの 金ミンヘさんが 出迎えてくれた。 直ちにホテ
ルに向かうと、市内で夫と数学塾を営むクォン・ヤンユンさんがロビーで
待っててくれた。 ホテルのラウンジで、韓国の教育状況について、6人
で2時間ほど話し合い、クォンさんだけは授業があるからと帰っていかれ
た。 その後 金さんの案内で ホテル近辺の東大門、明洞を散策して、
夕食をともにしてから、彼女は帰っていった。
12月28日(水曜日)
朝9時半にYBM.Comの李ミヒ女史が、ホテルまで迎えに来てくれ
た。 YBMという会社は、韓国では最大手の社員6000名の教育産業
である。 いくつもの企業に分かれているが、.comは、衛星放送授業
などネット配信などを手がける会社であり、今回 我々が訪問した『スユ
英語村』はその系列会社にあたる。 他には教科書を編纂している出版
部門、日本語・中国語・英語を指導する塾・セミナー部門や、TOEICを運
営している会社、外国人学校や全寮制国際学校を経営している。
.Comでは、YBMの鄭社長、.Comの姜社長はじめ呉代表理事、金次
長、日本人通訳ら7人で我々の応対をして頂けた。
.Comでは、韓国の英語教育の現状について、日本との比較を交えな
がら分かり易く説明して頂き、説明・質疑応答が予定の倍の2時間に及
び、英語教育のみならず国民性・人生観まで討論された。
昼食のあと、今回の視察のメインであるソウルの中心部より車で40分
にある『スユ英語村』に向かった。 ソウル市が建設して、YBMが委託
管理を請け負い運営している。 2万坪の敷地に体験館を中心に126部
屋を有する宿舎、食堂、管理棟が並ぶ。宿舎は生徒450人、講師60人
を収容できる。村長は駐韓英国大使夫人。 体験館はは45ヶ所の内、
39ヶ所が室内で、屋外に6ヶ所有る。
建物の中に入ると、そこから英語の生活が始まる。 まず入国手続き。
警察署、消防署、交通手段の部屋、レストラン、調理場、美容院、洋品店、
飛行機の機内、美術室、天気予報の部屋、科学室、屋外プール、運動場、
スーパーなど日常生活そのものが、体験館にある。
お勧めは 夏・冬休みに開催される約5万円の9泊10日の留学である
が 2400円の日帰り留学もある。 学校団体で行う2泊3日、4泊5日の
プログラムや 週末1泊2日のコースもある。 講師は60名の内 35名が
ネィティブで残りは韓国人である。
入国手続きが済むと、簡単なテストがあり、会話能力に合わせ、グルー
プ分けが行われる。 10名から20名のグループに分かれ、担当講師と生
活を共にする。 部屋は6人部屋。 各部屋にシャワーブース、トイレが設
置されている。 もちろん生活指導の管理から 健康医療などの安全管理
も行き届いている。 学習効果の程は、滞在期間によって異なるが 入村
時の得点より10点から20点は上がるそうである。 ただ効果を期待し過
ぎると、これを機に英語に親しむという趣旨が歪められるとも感じた。
その日は約300名の小学生が英語を学んでいた。 学んでいたという表
現は正しくないかも知れない。 日常体験の中で自然に英語を使おう・慣
れ親しもうという趣旨で作られた英語村だから、「自然に英語を使ってい
た」というべきだろう。
◎ 英語村の経営について
先ほども延べたように、YBMがソウル市から委託を受け 運営されてい
るが、家賃は払わない。 ソウル市から年間約1億2000万円の補助を
受け、運営しているが、仮に赤字が出た場合には、全額 YBMが負担し
黒字の場合は、市とYBMが3;2に折半だそうだ。 2万坪の土地に建設
された英語村の市の初期投資は約30億円との事である。
ソウル市から北西に車で約1時間半行ったところに、韓国最大のパジェ
英語村がある。 そこは京畿道が経営する公営英語村である。 ただ ここ
も最近 民間委託について検討を始めたらしい。
12月29日(木曜日)
午前中は、通訳の金さんを交えて、昨日までの視察の復習をした。
午後は、初日にお会いしたクォンが経営するKY数学塾を訪問した。 日本
では、小学生は児童、中学・高校生は生徒、大学は学生と呼称が変わり、
小学校で学ぶのは算数、中学校以上は数学と変わるが、韓国では 小学
生でも学生であり、数学を学ぶのである。 数学塾と聞いていたので、中
学生・高校生の通う塾だと思っていたら、小学生が中心の数学塾であっ
た。 韓国では数学塾、国語塾、英語塾、科学塾と言ったふうに単科塾
が多いそうだ。
クォンさんの夫であるキム・キュウカンさんより算数指導法について話
を伺い、その後、今日のメインである「小学生との対話」の時間である。
小学校5年生になる4人の子どもたちが私たちと話をするために、わざ
わざ授業開始の1時間前に登塾してくれた。 子どもたちの夢や、通塾
しているおけいこ事の数とか、日数を聞いたり、日常の様子について質
門すると、元気に素直に答えてくれた。
◎ 韓国の子どもたち
超学歴社会の中で生きている韓国の子どもたちがどんな考え方、夢を
もって生きているのだろう? そして日本の子どもたちとの違いは?
市庁舎のすぐ前の天然スケートリンクで無邪気に大声を出しながら遊ん
でいる子どもたち。 スユ英語村でもたくさんの子どもたちに出会った。 ま
たインタビューを快く引き受けわざわざそのために来てくれたKY数学塾の
4人の子どもたち。 日本の子どもたちと殆ど変わらない素直な明るい子ど
も達であった。 親・先祖を敬う儒教の教えが浸透した社会風土のせいか
学校でもイジメはあまり聞かないという。 親が必死になって 教育費を借
りてでも塾の費用を払っている家庭もあると聞いたが、子どもたちは屈託
なく伸び伸びしている。 我々がインタビューした4人の小学5年生。 将来
の夢は、獣医、サッカー選手、料理人と様々だが、英語村で見た掲示板
に書かれた夢は、科学者が圧倒的に多かった。 家庭学習時間も、1・2
時間から3・4時間と多いなあと感じた。 英語はいつから勉強しているの
?という質問には、5歳から、小1から、小3からという答えが返ってきた。
その他、色々質問したが、「名古屋、知ってる?」には全員がノー。 これ
には ややショック。名古屋の知名度を上げなきゃと痛感。
その数学塾を出て、一旦ホテルに戻り、荷物を受け取り、仁川空港に
向かい帰路に着いた。
2泊3日の行程はあっという間に終わり、実り多い視察になった。 ここ
で得たものを、名古屋の教育行政に生かすことが出来たらと、4人でしっ
かりとスクラムを組んで、提案を試みたい。
◎ なぜソウル視察を
トーフルの国別平均点比較を見るとびっくりします。171か国中150位。
アジア25か国中20位。日本の英語能力ってこんなに低いの? 調べて
みるとこれにはからくりがありました。 日本では受験意識の低い高校生
達が学校単位で強制的に受けさせられていたため、平均点がぐっと下が
ってしまっていたのです。
最近の英語能力の判定は、世界的にトーイックが使われます。 そこで
990点満点のトーイックの国別平均点を調べて見ると、トップは ドイツの
775点。 お隣の韓国は645点、日本は65点低い580点。 ちなみに
中国は450点でした。
私は以前から、自分も含めて日本人学生の英語コミュニケーション能力
の低さに疑問を抱いていました。 お隣の韓国では、1988年のソウルオ
リンピックを境に国家の方針として英語教育に力を注いできました。 1997
年からは、小学校3年生から英語の授業を正規科目として実施し始めまし
た。 英語村が国の方針により 35ヶ所で実施されています。
最近では、英語による教育を行う小中高校を12校、990億円の予算が
当てられ実施されそうです。 これは小学生を1年間擬似留学させるもの
で、日本の小学校5年・6年生に週1時間ずつの「英語に親しむ時間」に
約6億円当てるものとは、力の入れようが全く異なります。
◎ 韓国の英語事情
韓国では何故、国を挙げて英語熱が高いのか? 国家経済において、
対外貿易依存度が85%以上の韓国は、国際競争に遅れをとらないため
には海外進出が必須である。 因みに日本は、内需が大きく対外貿易へ
の依存度が20%程度である。 また 1990年代後半のIMF危機により
就職難の深刻化に伴い、各企業がトーイック〇〇点以上というあしきり点
を定めたり、司法試験や公務員試験のような公的な試験でも、英語力が
求められるようになった。
わが国でも、ユニクロや楽天の「英語公用語化」宣言もあるが、韓国ほ
どではない。 とは言え、企業のグローバル化は今に始まったことではな
くて、英語力が今まで以上に問われる時代がもう始まっている。
◎ まとめ
今回の視察の目的は、「名古屋の子どもたちの英語教育について考え
る」ことであった。 日本全体の英語教育の問題点を浮き彫りにしつつ、
英語力の重要性、英語指導法について学んできた。
スユ英語村を見て素直に「名古屋にもこんな英語村があったらいいのに
なぁ」と羨ましかった。 子どもたちが体験擬似留学をすることによって、英
語に親しみ、興味を持ち、英語学習の励みになるきっかけを作ってあげる
事は大人の使命じゃないかと考えさせられた。
子どもたちが職業体験できるテーマパーク「キッザニア」が東京と神戸に
あり、なかなか予約が取れないほど人気がある。 名古屋ではそのキッザ
ニアと英語体験とをドッキングさせて「『名古屋英語村』をオープンさせては
どうですか?」と提案したい。
名古屋市内の子どもたちが『名古屋英語村』を活用して英語力を高める
事はもちろんのこと、他都市の修学旅行生も受け入れ、名古屋は子育て
だけではなく、人材育成・教育にも全力で取り組んでいるんだと、全国に
アッピールするべきだと思います。