「海へ」(第77回) | 読むこと考えることその他

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小説「海へ」1-4-N

 

前回までのあらすじ:

電車の中で少女漫画「たいむぶれっど」を読んでいた主人公は、同じ電車で作者である少女と出会う。
少女は漫画家になる夢を持ち、延々と独白し始める。
一方、主人公は少女の漫画の終わり方に疑問を持ち、少女の言葉に疑問を呈する。
少女のモチベーションは、実は仮想都市の存在であった。
主人公は混乱し、マンドリルとマンドリンなど、あり得ないものを比喩に用いる。

 

第一部

第4章「電話機たちの沈黙、そして喪失」(14)

 

座席に腰掛けたまま、ぼくは言った。

 

「そう、そのマンドリルを持ったマンドリンのことです。

あれでは、何のことか全くわからない。

というより、今までの話が全てぶちこわしだ。

ぼくは、あの最終ページはないほうがいいと思いますよ」

 

あっそういうことなの、という顔を少女はした。

ようやく、ことの次第が呑みこめてきたようだ。

 

「ああ、そのことなのね。

それを言うなら、マンダリンの中の不思議な厚生課職員ね。

いえ、ちがったかしら。まあ、どうでもいいわ。

重要なのは、とにかく、天国普遍非実在論なの。

天国っていうのは、つまりどこにでもあって、どこにでもないものなのよ。

結局、わたしは、あの最終ページを描くためにあのように長々と込みいった物語を仕上げたわけ。

あの物語の中で一番重要なのは、あの最終ページなのだから。

あなたにはそのことがわからなかったのかしら」

 

(続く)

 

マンダリンの中の不思議な厚生課職員

(イラストはCiCiAI生成によります)

 

 

海へ「目次」

 

「海へ」第1回