「海へ」(第68回) | 読むこと考えることその他

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小説「海へ」1-4-E

 

前回までのあらすじ:

電車の中で漫画「たいむぶれっど」と出会った主人公は、偶々電車に居合わせた作者の少女の才能に惹かれる。
だが、少女は出版社に原稿を届けに行くことを決意し、主人公は少女を引き止めようとするも、本心が言えず、奇妙な議論となる。
主人公は原稿の残りを読み始め、一方、少女は、長い独伯で、漫画家になることを決意し、それが「たいむぶれっど」の誕生へと繋がったと言う。
少女の独白は、産気づいた猫や噴水の交叉思考など、不思議な方向へ展開する。

 

第一部

第4章「電話機たちの沈黙、そして喪失」(5)

 

……

現にこの国の女の子の約半数が少女まんが家志望で、そのために生活のほとんどを割(さ)いて応募原稿執筆のために使っていることは、あなたも知っているでしょう。

そしてまた、残り半数の女の子たちも潜在的にはまんが家志望の女の子たちであることも間違いないわ。

事実、たった二週間前まで、わたしもまたその残り半数の女の子たちのうちの一人だったのだから。

ところで、その少女まんが家志望の女の子たちの数に比べて、出版社の数はあまりにも限られすぎているわ。

現にいまここに散らばっている二十二冊の少女まんが誌、それがこの国内で発行されている全ての少女まんが誌のわけなのよね。

……

 

(続く)

 

気付いたら少女漫画家に

(イラストはCiCiAI生成によります)

 

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海へ「目次」

 

「海へ」第1回