小説「海へ」1-3-H
前回までのあらすじ:
主人公は電車で出会った漫画「たいむぶれっど」に魅了され、作者の少女から後半の原稿を見せられる。
少女の漫画の価値に気づいた主人公は作品の世界に引き込まれていく。
主人公は、数年後少女が一流の漫画家になることを夢想する。
少女の作品の中では、大学教授がトラックにはねられたりなど、様々なことが起こり、ゴキブリ退治の新しい方法を発見したトラック運転手へのインタビューが為されている。
トラック運転手は、自身の体験について語り始めるが、なぜか主人公の体験に似ている。
第一部
第3章「天才との会話、及び非線型理論の概要」(8)
ぼくの場合、この …… の部分は、こう置き換えられる。
―― ……つまりは、あの日あの電車の中で出会った一作の少女まんが、作者はねえ、ほらあの何といいましたっけ、ええと、あっそうそう、いまではもうとても偉くなられましたあの〈ゆうびい〉さんですね。
その〈ゆうびい〉さんの『たいむぶれっど』につきると思います。
なぜかというとですねえ、そのう、わたしがその作品を読んでいるときに、たまたまその作者であるところの〈ゆうびい〉さんが電車の中に入ってこられてですねえ、それでそのう、まあどうなったかといいますと、ええと、ええと、何だっけなあ、ええと……。
うん、何だ、何だ……。
* * *
(続く)
いまではもうとても偉くなられましたあの〈ゆうびい〉さん
(イラストはCiCiAI生成によります)