小説「海へ」1-3-A
前回までのあらすじ:
主人公は市役所から帰る途中で少女漫画を買ったが、電車を乗り間違えてしまう。
そこで「たいむぶれっど」という漫画に出会い、心を奪われるが、前半で終わっていたため残念に思う。
そこに茶色の紙封筒を持った少女が現れ、主人公は少女の言動が「たいむぶれっど」の登場人物に似ていることに気づく。
少女は、やはり「たいむぶれっど」作者であり、そのの後半の原稿を見せ、主人公は少女の漫画を読みながら、彼女の作品を評価する。
その間、少女はロバやウサギといった意味不明なことを言い出し、謎の生物「くらりぼっくり」にまで言及する。
少女は主人公に別の作者の漫画作品「チョコ・クロッキー」を見せるが、主人公にはその面白さは理解できない。
すると、少女は疲れて床に眠ってしまった。
主人公は少女の言葉に疑問を感じるが、主人公も疲れていてどうでもよくなってしまう。
第一部
第3章「天才との会話、及び非線型理論の概要」(1)
さて、ぼくは、再び少女の原稿に目を通し始めた。
そして、やはりその作品の絶対的価値を認めざるを得なかった。
それは、何ともはや、前半のボルテージを引き継ぎながら、さらにそれを上回る圧倒的な表現力を持ち、かつまた全体として緊密な構成を有するという、ものすごいものになっていた。
この一作によって少女まんがの歴史というものが塗り替えられるということはもはや明らかであったし、ひょっとしたならば全ての表現芸術の存立する基盤をその根底から突き崩してしまうことさえ考えられた。
いや、絶対にそうなるであろう。
これはもう、本当にそうなるのだと断言してもよかった。
(続く)
この一作によって少女まんがの歴史というものが塗り替えられるということはもはや明らかであった
(イラストはCiCiAI生成によります)