小説「海へ」1-2-H
前回までのあらすじ:
主人公は年金制度の手続きに不満を感じて少女漫画を買いに行くが、電車を乗り間違えてしまう。
そこで、128番目に読んだUBという作者の『たいむぶれっど』という漫画に心を奪われるが、前半で終わっていたため嘆息する。
そこに茶色の紙封筒を持った少女が電車に乗り込み、主人公に話しかけてくる。少女は出版社に行く途中だが、場所が分からず、主人公に尋ねることもできないため、座席に寝転んでしまう。
主人公は、少女の言動が、さっき読んだ漫画『たいむぶれっど』の作中人物の言葉と似ていることに気づく。
主人公は少女の要求に従うと自身の物語が消滅してしまうため、要求を拒否する。
少女は主人公が何物でもない存在であることを認め、関係がないことを示唆し、次の駅で電車を降りるように告げる。
主人公は少女の言葉尻につけられる「わかったかしら」という言葉にうんざりし、沈黙を要求されていると感じ、これ以上話しかけられないように、少女の原稿を見せてもらうことを要求する。
第一部
第2章「そして天才は発見されるべくして発見される」(8)
すると、少女はしばらくぽかんとした顔をして、まるで毒気を抜かれたみたいだった。
そして、ややしばらくしてからこう言った。
「いいわ。見せても。わたしは今とても眠たいのだから、原稿を見せても見せなくても、そのことに変わりはないわ」
というわけで、ぼくは少女のその原稿を見ることができたのだった。
はたして、それは、『たいむぶれっど』後半であり、作者名はやはり〈UB〉であった。
* * *
(続く)
はたして、それは、『たいむぶれっど』後半であり、作者名はやはり〈UB〉であった。
(イラストはBingAI生成によります)