「海へ」(第4回) | 読むこと考えることその他

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小説「海へ」1-1-D

 

前回までのあらすじ:

物語は、主人公が五月の晴れた日に市庁舎から帰る途中、電車を乗り間違えることから始まる。
主人公は、政府が宣伝している特殊な年金制度の受給資格を得るため市庁舎を訪れたが、その理由は、その年金のCMを熱心なファンである女性アイドルが行っていたからだった。
主人公は、女性アイドルと同じ血液型と干支動物を持ち、さらに占星術の計算で似た星回りだったことから、彼女をファンになってしまったのであった。
しかし、主人公は、力学系モデルの研究という趣味の中で、占星術の計算が何となく使えそうだと感じ、ゴミ箱で拾った芸能年鑑に載っている多くの芸能人の星回りをサンプルとして計算したのであった。

 

一.ある五月の晴れた日にぼくの旅ははじまる

 

そして、あとでわかったことなのであるが、そのCPUチップス自体にバグがあって、フロート演算を行っていると、小数点がいつの間にか三十四桁ずれてしまう現象があった。(これを〝プランク・オーバー・シフト〟という。)

というわけで、結局その女性アイドルとぼくとは縁もゆかりもない関係であり、またその力学系のモデルとしての占星術計算は全く使い物にならず、近代賛美歌集各篇冒頭三文字のヘブライ語訳アナグラムがその占星術計算の本質であったようである。

またそのスポットCMのアイドルは実は髪型だけがよく似た別の女の子であり、実際のところそのテレビ局に所属した女子アナであって、齢も十歳以上違っていたということが後でわかったのであった。

そういうわけで、今年も休暇見舞葉書は出せずじまいであった。

そして、これらのことと、ぼくが電車を乗り間違えたこととは、何か繋がりがあるかといえば、そういうわけでは全くない。

 

     *    *    *

 

(続く)

 

〝プランク・オーバー・シフト〟

(イラストはCiCiAI生成によります)

 

 

海へ「目次」

 

「海へ」第1回