読んでいるあいだだけ憩ってほしい。
この言葉に惹かれて読んだ本。
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物の記憶を読み取る能力を持つさやか。
義父、義母、娘と穏やかに暮らす日々に一通の手紙が届く。
「お庭に入らせて少しだけ土を掘らせていただけないでしょうか?」
その手紙の送り主はさやかにとって特別なひとだった。
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特別な何かが起きるわけじゃない。
穏やかな日常を描いた作品。
読んでいるあいだだけでも憩ってほしいというのがわかった。みんな失ったものや傷ついたこといろいろあるなかで今を生きている。
日常に起きる奇跡だからこそ、それぞれの境遇に合わせた希望がもてる。
大切な人の死。昔の失恋。故郷の記憶。愛すること。いろんなものがつまっている。
タイトルのサーカスナイトは七尾旅人さんの歌の引用みたい。
キラキラした世界に酔ってしまいそうな曲。
だめだとわかっていることをやってしまう人の気持ちがわからない娘みちる。
みちるにむけた母さやかの言葉。
「そういうことがわかるようでいてほしい。
自分は違うって思わないでほしい。
周りのせいにするのはいちばんいけないけど、自分だけは大丈夫っていうのも、きっと違うんだ。」