君と僕が初めて出会ったのは
まだ君が生まれたばかりの頃
君が眠る側に
そっと置かれたぬいぐるみ
それが僕だった
名前をつけてくれたのも
君だったね
僕をどこかに置いて
置場所を忘れちゃったとき
君は大きな声で
僕の名前を呼びながら泣いてた
泣かないで僕はここにいるよ
でも声が出せないんだ
ようやく僕を見つけて
君は僕を抱きしめる
でも僕は君の涙を
拭ってあげることも出来ない
何で僕は
君と同じ人間じゃないんだろ
こんなにも
君のことが大好きなのに
僕は君のために
泣くことすら出来ないんだ
僕は人間になれないのかな
僕は君と同じ人間になりたい
君と同じこころを持つ
人間になりたいんだ
こころがないから
声を出せない
こころがないから
泣くことも出来ない
どうして僕には
こころがないんだろう
誰か僕にこころをくれませんか
僕に人間と同じような
こころをくれませんか
そんな願いすら
僕は声に出すことが出来ない
しばらくして
君は僕と遊ぶことも減った
でも僕は部屋の隅っこで
君の成長を見守っていたんだ
大人になってからも
泣き虫な君は
たまに落ち込んだとき
僕を抱きしめる
大丈夫だよ
僕は側にいるよ
声に出せない言葉と一緒に
僕は君に抱かれてた
そんな君も結婚して
ママになったある日
君は僕に語りかける
幼い頃から
ずっと一緒にいた思い出
嬉しかったこと悲しかったこと
その全てが懐かしい
突然君は泣き始めた
どうしたの何かあったの
君は僕に一言
いつも見守ってくれていて
ありがとう
そう言って僕を抱きしめる
ああ
伝わってたんだ
でもなんでだろう
僕にはこころがないから
声を出せなかったのに
声に出せなくても
伝わることってあるのかな
もしかして僕にも
こころがあったのかな
そんなことを考えてたら
僕の体に君の涙が零れ落ちた
そうか君がこころを
分けてくれてたんだ
君が僕にこころをくれたんだね
相変わらず僕は君の涙を
拭うことも出来ないけど
なぜだか胸のあたりが暖かいんだ
しばらく僕を抱きしめていた
君が歩きだす
あれれ
何処に行くのと思っていたら
君の子供が寝ている側に
僕はそっと置かれる
君は微笑みながら
これからは
この子の側にいてあげてね
僕にそうお願いした
うん
わかったよ
今度は僕が
こころを分けてあげる番なんだね
すやすや眠るその子を見ながら
僕は誓ったんだ
大丈夫だよ
僕がずっと側にいてあげる
君のママと
ずっと一緒だったようにね